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 風呂から上がって寝室に入るとダブルのベッドの端に真夜まやがちょこんと腰掛けて座って待っていた。

「何だ、寝ていなかったのか?」

「うん……。宇大うたくんと一緒に寝たくて……」

(急にしおらしくなったのは何故だ……? 本当によくわからん奴だ)

「わかった。ほら、来い」

 布団に入って隣に来るよう促してやると真夜が横に寝そべって抱き着いてきて「ありがと」と言いながら俺の首筋にその小さな頭をうずめた。

 俺の使っているシャンプーの匂いがする何とも複雑な気分のまま、されるがまま身を預けていると長いこと静かになったので寝たか……と思い、俺はベッドから降りてリビングのソファに戻ろうとしたのだけれど――。

 半身を起こした瞬間、真夜がギュッと俺の手首を掴んだ。

「ねぇ……宇大くん」

「起きてたのか……」

「何で俺がこんなに男に飢えてるかわかる? 飢えなきゃいけないかわかる?」

 そんなものに理由があるのだろうか。
 ありあまる性欲によるものだと先刻さっき自分で宣言していたというのに、そんな寂し気な声で話さなきゃいけない理由でもあるのか?

「そんなこと俺にはわからんが……。若気の至りなんじゃないのか?」

「違うよ。満たされないんだ」

「満たされない?」

 一体何が満たされないと言うのだ?

 けれど真夜が突然見せたこともない悲壮感の漂う表情でかげりを帯びるので、コイツもこんな仄暗い一面を見せるのだな、と俺も真剣な眼差しで真夜の言葉の続きを待った。
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