乾き

ちろる

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 一息に突き刺す。

 それをわかっているだけ目の前の男は俺にとって優秀な人間だと言える。

 ダラダラ時間を掛けて含ませてくるような奴はイライラして仕方がない、一息に突き刺し、一息に内臓を押し上げ、一息に身体を揺さぶり、一息に昇り詰める。

 俺が求めているのはそんな荒々しい行為だ。

 一息に突き立てられた肉塊が、粘着質な音を立てながら体内を出入りする至福に俺は酔いしれ、溺れ、堕とされ、絡め取られる。

 互いの荒い呼気。
 互いの湿った身体。

 それらを共有することで身体は煮えたぎるように温度を上げ、肉とひだこすれ合う度に口からは悦びの声が漏れ、その声が挑発しているらしいコイツの動きが大胆になる。

(ハンパねぇ)

 身体はガクガクと揺れ、肌がぶつかるパンパンという乾いた音に混じって、二人を繋ぐ隘路あいろからはぐちゅぐちゅと相反する濡れた音が反響する。

 五感が犯されている。

 淫猥な音を聞き入れる聴覚が、唇を塞がれる味覚が、目の前の男の背を掻き抱く触覚が、俺が首もとに放った白濁が醸す嗅覚が、男の悩ましげに眉宇びうを寄せる顔を映す視覚が。

 何もかもを支配されながら、二人で高みへの階段を急ぎ足で駆け抜ける圧倒的な快楽に飲み込まれる、呼吸すら奪われる。

 このまま永遠の夢に囚われていたい。
 このまま永遠の淫夢に。

 やがて、互いの身体は終点を迎える。

 何度味わっても、この瞬間は頭の中が狂いそうになる。

 狂いそうな劣情。
 狂いそうな切なさ。

 終わりなんかこなけりゃいい。

 やがて身体の奥を熱い飛沫で濡らされる感覚に呼応するように、俺のたぎった熱が放たれ、胸に倒れ込んでくる男を受け止める。

「愛してる」

 そんな言葉は別に求めてはいないが、あったらあったで悪くないと思うから、何だかんだ俺は目の前の男を気に入っているようだ。

「愛してんなら休んでる暇ねぇから、さっさとおっ勃てろ」

 二度でも三度でも四度でも、それともカウントなんか必要ねぇか。

 乾きを潤せ。

 早く。

 END
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