乾き

ちろる

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 前戯など、正直不要だ。

 ひとつの飢えた空洞に、ひとつの飢えた肉が収まり、互いを高め合うためだけに肌をぶつけあい、二つの身体で一つの快楽を追いかけ頂点を刻む。

(セックスなんて、そこだけで十分だよな。つーか、そのためだけの動物の本能だ)

 しかし、目の前の男は即物的ではないから困る。

 下衣の中で張り詰め、熱く育っている雄をわざわざ可愛がろうと律儀にも下着ごと身に纏うものを暴き、ふるりと震えながら顔を出した勃ち上がった花芯を手筒に収め、先端の小さな蜜口から滴る透明な雫を全体に塗り込める。

 わざと水音を誇張するように立てるのがコイツの癖なんだろうが、生憎そんなものに恥じらうような初心うぶな心は持ち合わせていない。

 ただ、淫蜜を天を仰ぐ情欲に纏わせ、こすり、いやに敏感に構造されている先端を輪にした指で上下されれば、生理現象で腹に、胸に、首元に、快楽のほとばしりは飛び散る。

 吐息が乱れる。
 腰が重だるい。

 そして、疼く。

 これから、欲望をくわえ込まされることを知っている節操のない淫孔は、すでにはくはくと息づき、快楽の業火でかれることを待っているのだ。

「なぁ、さっさと突っ込まねぇ?」

「慣らさなきゃ僕が痛い」

(うぜー)

 腹に飛んだ粘液をすくい上げた指が、容易く一本入り込んできて、すぐに快楽の着火剤をこすられれば、尾骨が引き攣れるようないなずまが背筋を駆け抜ける。

 だからそこをもっと熱くて硬くて太いもので擦り上げてくれねぇかなと思うが、コイツの指は執拗だ。

 ゆっくり蕩かすように胎内を掻き混ぜ、「二本目……」と耳孔に囁きながら指の数を増やし、火種をずりずりと煮えたぎらせていく。

 唇をついばまれて、「三本目」と囁かれたと同時、言葉通りに指が中に、不意打ちで放置されていたのにキュッと硬くしこっている胸の飾りに歯を立てられれば条件反射で弓なりに背がしなった。

「何本挿入いれれば満足だ?」

「もう我慢できないって顔してるから僕一本にしてあげようか」

 もう我慢できないのはキスしていた時点なんだが、コイツには何度言っても伝わらないからもう諦めた。

 目の前の男の下衣がくつろげられ、隆々と天を仰ぐ肉食の欲望を視界に宿しただけで、喉が勝手に唾を飲み込む。

 両脚を左右に大きく広げられる。

 体内を掻き乱され再び頭をもたげ、先の吐精の白色を纏わりつかせている己の情欲がふるふると頼りなげに揺れている。

(これを自分の中に突っ込めたらコイツいらねぇんじゃねぇか? いや、だったらオモチャ買えって話か)

 無機質な冷たい道具などはいらない、欲にまみれて熱く動悸を打つ確かな人間の熱を求めているのだ――身体は確かに。
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