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3.訓練とは厳しいもの sideスヴェイン
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sideスヴェイン
「さすがですわ! 私が、ずっと見ていたことにお気づきになって?」
「ずっと見ていたのか? はは。声をかけるとよかったのに」
気を遣ったのか? 悪いことをした。
「……ずっとだと? いつからだ? 俺らに対して気配を消してたってことか……すげえな」
団長が横で苦笑いしながら腕を組む。
「ああ、レティはすごいんだ」
「恥ずかしいですわ……」
レティは恥じらいを見せながら、顔を伏せて小さく笑う。
『……褒めるところでも、照れるところでもないだろう』
団長が半目でぼそっとつぶやく。俺はその声に気づいて顔を向けたが、団長はすぐに視線をそらした。
「ご歓談中でしたので、声をおかけするタイミングを伺っておりましたが、許可なく見ていられるのは……嫌ですわよね? 申し訳ありません……」
レティの声は少し悲しそうに響いた。俺は軽く肩をすくめて言った。
「全く、問題ない。レティになら、どれだけ見られても構わない」
その言葉に、レティの瞳がぱっと輝く。まるで輝く宝石のように、彼女の表情が一瞬で美しく色を変えた。
「まあ! 嬉しいです」
その喜びを隠すことなく、レティは嬉しそうに顔を輝かせている。
ああ、なんて可愛いのだろう。思わず口元が緩むが、次の瞬間、彼女の表情がわずかに曇った。
「……でも、ちょっとお待ちください。私にならどれだけ見られても構わない……ということは、私以外に見られて困っている……? 私以外に見ているのは……どなたですの?」
その一言に、心臓がわずかに跳ね上がる。
「違う違う! ちょっと殺気を感じたから、誰かほかにもいるのかと思っただけだ。レティしかいないし、ああ、きっと気のせいだな」
レティに誤解されてはたまらない。必死に言い訳をする。
『……いや、レティシア嬢が出した殺気だろう……しまった!! さっき肩を組んだのを見られたか……俺に向けての殺気か!?』
団長が小声でぶつぶつ呟いている。
「なぜ団長はレティがいるときだけ、小声になるんだ? 俺たちに遠慮せず普通に話していいぞ?」
団長は無言で、わずかに口元に苦笑を浮かべた。その表情に、なんとも言えない複雑な感情が見え隠れする。
「ええ、団長様、遠慮なくどうぞ。それより、お話……聞こえてしまいましたわ。部下の方々は、訓練をしないのですか?」
「しないというより急に腹が痛くなったり、急用ができたりするみたいなんだ。ははは」
ごまかそうと思ったが、少しだけ苦笑をしてしまった。
「まあ、そんなことが?」
レティは不思議そうに軽く首をかしげた。
「隊長からの訓練なんてご褒美のようなものですのに」
その言葉に、俺は少し驚きながらも、レティの優しい気持ちを感じ取る。
「ご褒美か……いや、むしろ訓練が厳しいのかもしれない。王族を守る近衛の力量を上げたいという俺の思いが重いのかもしれないな……」
俺は照れ隠しに頭をかいた。
レティが俺の言葉をどう受け取ったのか、少し不安になる。
「訓練とは厳しいものですわ。いつか、スヴェイン様の思いが伝わる日が来ますわ。ええ、本当に。いつかではなく、明日にでも……」
彼女の瞳が遠くを見つめるように、少し憂いを帯びた表情になった。
「……スヴェイン様。私、用事を思い出しましたわ。名残惜しいですが、失礼させていただきます。お仕事頑張ってくださいね」
レティは、俺たちに挨拶すると足早に立ち去ろうと背を向けた。
もう行ってしまうのか?
「ああ。レティ、今日は会えて嬉しかったよ」
声をかけるとレティは、顔を真っ赤にして振り返った。
「っ! もちろん私もですわ!!!」
後ろ姿が少し揺れるたびに、俺の心は温かくなる。
『……なぜ、スヴェインはスルーした。”聞こえてしまいましたわ”ってなんだ? あんな遠くから……耳どうなってるんだ』
引きつった顔で何かを言っている団長のことは、もう気にしないことにした。
レティと過ごした時間は、一瞬のように感じたが、彼女に励まされ、心が軽くなった気がした。
「さすがですわ! 私が、ずっと見ていたことにお気づきになって?」
「ずっと見ていたのか? はは。声をかけるとよかったのに」
気を遣ったのか? 悪いことをした。
「……ずっとだと? いつからだ? 俺らに対して気配を消してたってことか……すげえな」
団長が横で苦笑いしながら腕を組む。
「ああ、レティはすごいんだ」
「恥ずかしいですわ……」
レティは恥じらいを見せながら、顔を伏せて小さく笑う。
『……褒めるところでも、照れるところでもないだろう』
団長が半目でぼそっとつぶやく。俺はその声に気づいて顔を向けたが、団長はすぐに視線をそらした。
「ご歓談中でしたので、声をおかけするタイミングを伺っておりましたが、許可なく見ていられるのは……嫌ですわよね? 申し訳ありません……」
レティの声は少し悲しそうに響いた。俺は軽く肩をすくめて言った。
「全く、問題ない。レティになら、どれだけ見られても構わない」
その言葉に、レティの瞳がぱっと輝く。まるで輝く宝石のように、彼女の表情が一瞬で美しく色を変えた。
「まあ! 嬉しいです」
その喜びを隠すことなく、レティは嬉しそうに顔を輝かせている。
ああ、なんて可愛いのだろう。思わず口元が緩むが、次の瞬間、彼女の表情がわずかに曇った。
「……でも、ちょっとお待ちください。私にならどれだけ見られても構わない……ということは、私以外に見られて困っている……? 私以外に見ているのは……どなたですの?」
その一言に、心臓がわずかに跳ね上がる。
「違う違う! ちょっと殺気を感じたから、誰かほかにもいるのかと思っただけだ。レティしかいないし、ああ、きっと気のせいだな」
レティに誤解されてはたまらない。必死に言い訳をする。
『……いや、レティシア嬢が出した殺気だろう……しまった!! さっき肩を組んだのを見られたか……俺に向けての殺気か!?』
団長が小声でぶつぶつ呟いている。
「なぜ団長はレティがいるときだけ、小声になるんだ? 俺たちに遠慮せず普通に話していいぞ?」
団長は無言で、わずかに口元に苦笑を浮かべた。その表情に、なんとも言えない複雑な感情が見え隠れする。
「ええ、団長様、遠慮なくどうぞ。それより、お話……聞こえてしまいましたわ。部下の方々は、訓練をしないのですか?」
「しないというより急に腹が痛くなったり、急用ができたりするみたいなんだ。ははは」
ごまかそうと思ったが、少しだけ苦笑をしてしまった。
「まあ、そんなことが?」
レティは不思議そうに軽く首をかしげた。
「隊長からの訓練なんてご褒美のようなものですのに」
その言葉に、俺は少し驚きながらも、レティの優しい気持ちを感じ取る。
「ご褒美か……いや、むしろ訓練が厳しいのかもしれない。王族を守る近衛の力量を上げたいという俺の思いが重いのかもしれないな……」
俺は照れ隠しに頭をかいた。
レティが俺の言葉をどう受け取ったのか、少し不安になる。
「訓練とは厳しいものですわ。いつか、スヴェイン様の思いが伝わる日が来ますわ。ええ、本当に。いつかではなく、明日にでも……」
彼女の瞳が遠くを見つめるように、少し憂いを帯びた表情になった。
「……スヴェイン様。私、用事を思い出しましたわ。名残惜しいですが、失礼させていただきます。お仕事頑張ってくださいね」
レティは、俺たちに挨拶すると足早に立ち去ろうと背を向けた。
もう行ってしまうのか?
「ああ。レティ、今日は会えて嬉しかったよ」
声をかけるとレティは、顔を真っ赤にして振り返った。
「っ! もちろん私もですわ!!!」
後ろ姿が少し揺れるたびに、俺の心は温かくなる。
『……なぜ、スヴェインはスルーした。”聞こえてしまいましたわ”ってなんだ? あんな遠くから……耳どうなってるんだ』
引きつった顔で何かを言っている団長のことは、もう気にしないことにした。
レティと過ごした時間は、一瞬のように感じたが、彼女に励まされ、心が軽くなった気がした。
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