【完結】もちろん、私が解決いたします

楽歩

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4.どこか祈るような目 sideスヴェイン

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 sideスヴェイン

 冷たい朝の空気には、微かに春の気配が混じっていた。

 訓練場の隅では、雪解けの水が小さな流れを作り、地面には新芽が顔を覗かせている。だが、朝の冷たさはまだ冬の名残を色濃く残していて、吐く息が白くなるほどだった。

 俺は隊員たちを前に立ち、朝会を進めていた。

 彼らの背後には、遠くの木がまだつぼみを閉じたまま風に揺れている。春の訪れを告げるには少し早い景色の中、隊員たちは普段よりも緊張感を漂わせていた。

 いつもなら、だらけた姿勢や、遠くをぼんやりと見つめる目が目立つのに、今日は全員が背筋を伸ばし、真剣な眼差しを俺に向けている。


 その視線に気づき、心の中で小さく笑みがこぼれた。



「……以上が、今日の訓練内容だ。わかったな?」

「「「はい、隊長!」」」



 返事は揃い、いつになく力強い。


 その響きが春の冷たい空気を切り裂くようで、思わず胸が熱くなる。こんなに真剣な彼らを前にするのは初めてだ!


 俺は思わずその反応に微笑んだ。ああ、これが本来の騎士の姿だ。訓練の重要性がようやく伝わったのだろう。少し前までの無関心が嘘のようだ。


 朝会が終わると、隊員たちは一斉に俺のもとへ駆け寄ってきた。




「隊長! ぜひ私に訓練をつけてください!」

「いや、俺にお願いします!」

「隊長、どうかご指導を!」



 口々に訴える彼らの姿に、俺は目を見開く。これほどの反応は予想していなかった。



「お、おお……やる気だな。そうか! やっと、訓練の大事さが分かったか。そうかそうか。はは」



 自然と笑みがこぼれる。彼らの意識が変わったのは喜ばしいことだ。


 その時、列の後ろから震えるような声が聞こえてきた。

『……家……潰さ……です……』

「ん?」


 俺は、その声がした方へ視線を移した。



「どうした? 今何か言ったか?」


 隊員の一人が慌てて、何か言ったであろう男を肘でつつく。



「お、お前余計なことを……!」

「い、いえ! 何でもありません、隊長!」



 その男は顔を青ざめさせながらも、必死に取り繕う。


「顔色が悪いぞ。体調が悪いのなら無理をしなくとも……」


「いえ! 武者震いです。顔色は、いつも悪いのです。はい! お気になさらず」



 俺は首をかしげたが、深く追及することはやめた。何か気にはなったが、本人がそう言うなら、今はそのままでいいだろう。



「そうか? 具合が悪くなったらすぐに言うんだぞ」


 震えが全く止まる気配がないが、本当に大丈夫か?


「……それにしても、こんなにすぐ俺の思いが伝わるなんて驚きだな。レティの言った通りだ。この喜びを次に会ったら伝えてあげないとな」


 独り言のように、そう呟いた途端、隊員たちは一斉に頷いた。



「ぜ、是非とも! なるべく早くお伝えください!」

「ええ、隊長! すぐにお願いします!」



 皆の声が揃ったが、その顔にはどこか必死さが見えた。なぜ震えている? 


 ああ、感激でだな! レティはよく差し入れを持ってくるからな。頑張っていることを知ってほしいのだろう。いいぞ、愛らしいレティにお前たちの頑張りはきちんと伝えよう。





「おお、必ず伝える。はは、レティは人気者だな」



 俺は、レティに彼らの頑張りを伝えたらどんなに喜んでくれるだろうと、温かい気持ちになった。



 隊員たちは笑顔を浮かべながらも、なぜかどこか祈るような目で俺を見ていた。






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