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泣き疲れて
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「奈月くん、頭痛い?大丈夫かい?」
優しく言ってくれる声に涙が止まらなくなってしまった。
「辛かったり、苦しかったら言っていいんだよ。我慢しなくていいからね」
そう言って頭を撫でてくれた。そういえば頭を撫でられるなんていつぶりだろうか?そう思ってるうちに僕は泣きながら意識が遠のいた。「ごめん…なさい」かろうじて謝ったけど、その声が的場さんに届いたかどうかはわからなかった…
泣きながらそのまま眠ってしまった奈月くんを見て、自分は何かしてしまったんじゃないかと思ってしまった。涙の残る頬を撫でながら、奈月くんがなぜ急に泣き出してしまったのか…本当は知らない人の家には行きたくないけど断れなかったんじゃないか、やっぱり動物は苦手なのかもしれない。と思っていた。
「おはようって寝ちゃってるか」
しばらく経ってから相原先生がやってきた。
「どうした?」
「すみません。俺が早急に色々と奈月くんに話したせいで彼を泣かせてしまいました」
「泣き疲れて寝てしまったのかな?体力ないから…疲れちゃったのかもしれないな」
「俺…」
「大丈夫。俺から話するよ。何が嫌だったのか、まぁ…すんなり話してくれるかはわからないけど、何を話したか教えてくれるか?」
「はい」
俺は奈月くんに入院してしっかり身体を治すこと。退院したらわが家で生活しないかと伝えたこと。わが家には犬と猫がいるという話をしたことを伝えた。
「やっぱり、知らない家で生活なんて嫌なんでしょうか?それとも犬とか猫が苦手なんでしょうか?犬と散歩できるって楽しみにしてそうだったけど本当は無理だったけど言えなかったんですかね?」
「そんなに急かすな。きっと彼も色々と考える時間も休息をする時間も必要だからな」
しばらく奈月くんの様子を眺めていたら、ポケットに入れていたスマホから振動した。取り出して見てみると卓也からだった。
「電話か?向こうでならいいよ」
「すみません」
先生にお辞儀をして廊下に出た。
「もしもし、今大丈夫か?」
「あぁ…どうした?」
「八巻先生と連絡が取れて、先生、夕方からなら時間取ってくれるって、先生の事務所に行かないか?」
「ありがとう。行くよ」
「じゃあ15時頃に病院に迎えにいくよ。シャワー浴びたいだろうし、着替えたいだろ」
「助かる。そうしてくれ」
「じゃあ後で行くから。ちゃんと飯は食べろよ」
「わかった」
電話が終わり病室に戻ると奈月くんはベットに半身を起こしていた。
「奈月くん、大丈夫?」
そう声をかけたけど、僕の目を見ずに先生の方を不安そうに見ていた。嫌われた?そう思ったら
「奈月くん、さっき言ったこと言えるかい?言っても樹は怒ったりしないよ」
俺が怒る?そんなことすることないのに…そう思っていたら
「ごめんなさい」と可愛らしい声が聞こえてきた。声変わりはしている年齢だと思うのに、少し高めの声が聞こえた。
「奈月くんに謝ってもらうことなんかないよ。俺こそ、ごめんな。いろんなこと言って混乱させちゃったよな」
そう言うと首を横に振った。
「あの…僕…………です」
語尾がだんだんと小さくなって聞き取れなかった。
「ごめん聞こえなかったから、もう一回教えてくれる?」
すると少し涙目で先生に助けを求めるように見ていた。
「奈月くんは、犬や猫に会えるのを楽しみにしているよ。ただまだ体力がないんだろ。楽しい話だったけど疲れてしまったようだ。でもそれをお前に知られると怒られるんじゃないかと言葉にするのが不安になった。だから言えない代わりに涙が溢れてしまったんだよ。奈月くんはこれから言いたいことを言えるように訓練していこうな。誰も怒ったりしないから先生と約束だ」
そう言って相原先生は奈月くんの手をさすってあげていた。
そうか、そうだったんだ。もっと俺が気をつけてあげればよかったのに申し訳ないことをしてしまった。
「奈月くん、気づいてあげられなくてごめんな」
そう言うと首を横に振ってくれた。
「俺も怒ったりしないから、言いたいこと言ってくれると嬉しいんだけど」
「…わかりました」
そう小さい声で答えてくれた。
「そろそろご飯を持ってきてもらおうか。どのくらい食べられるかな?食欲はある?」
「あんまりお腹空いてません」
「そうか、でも犬の散歩は想像以上に体力がいるから少しでもいいから食べようか」
「先生、俺も売店で買ってくるので、ここで一緒に食べてもいいですか?」
「じゃあ俺の分も頼むわ。ここで3人で食べたらきっと美味しいだろうから」
「わかりました」
先生の分と自分の分のおにぎりを買って戻った。
奈月くんには消化の良さそうなお粥や野菜と鶏団子の炊き合わせ、お味噌汁にりんごと牛乳が並んでいた。
「奈月くん、無理して食べなくていい。少しずつでいいからね」
そう先生に言われてスプーンにお粥を乗せて小さな口を開いて食べた。
「美味しいです」
そう言って少しずつ食べてくれた。でもしばらくすると、その手が止まった。
「お腹いっぱいかい?」
「はい。もう満足です。でも残してごめんなさい」
そう言ったけど、大体4分の1ほどしか食べてない。
きっと胃が小さくなってるんだろう。あの母親が言ってたようにちゃんとご飯を食べてなかったんだろう。
吐かずにいればいいが…そう思いながらあまり無理させないようにしようと思いながら今日、八巻先生にどう伝えようと考えていた。
優しく言ってくれる声に涙が止まらなくなってしまった。
「辛かったり、苦しかったら言っていいんだよ。我慢しなくていいからね」
そう言って頭を撫でてくれた。そういえば頭を撫でられるなんていつぶりだろうか?そう思ってるうちに僕は泣きながら意識が遠のいた。「ごめん…なさい」かろうじて謝ったけど、その声が的場さんに届いたかどうかはわからなかった…
泣きながらそのまま眠ってしまった奈月くんを見て、自分は何かしてしまったんじゃないかと思ってしまった。涙の残る頬を撫でながら、奈月くんがなぜ急に泣き出してしまったのか…本当は知らない人の家には行きたくないけど断れなかったんじゃないか、やっぱり動物は苦手なのかもしれない。と思っていた。
「おはようって寝ちゃってるか」
しばらく経ってから相原先生がやってきた。
「どうした?」
「すみません。俺が早急に色々と奈月くんに話したせいで彼を泣かせてしまいました」
「泣き疲れて寝てしまったのかな?体力ないから…疲れちゃったのかもしれないな」
「俺…」
「大丈夫。俺から話するよ。何が嫌だったのか、まぁ…すんなり話してくれるかはわからないけど、何を話したか教えてくれるか?」
「はい」
俺は奈月くんに入院してしっかり身体を治すこと。退院したらわが家で生活しないかと伝えたこと。わが家には犬と猫がいるという話をしたことを伝えた。
「やっぱり、知らない家で生活なんて嫌なんでしょうか?それとも犬とか猫が苦手なんでしょうか?犬と散歩できるって楽しみにしてそうだったけど本当は無理だったけど言えなかったんですかね?」
「そんなに急かすな。きっと彼も色々と考える時間も休息をする時間も必要だからな」
しばらく奈月くんの様子を眺めていたら、ポケットに入れていたスマホから振動した。取り出して見てみると卓也からだった。
「電話か?向こうでならいいよ」
「すみません」
先生にお辞儀をして廊下に出た。
「もしもし、今大丈夫か?」
「あぁ…どうした?」
「八巻先生と連絡が取れて、先生、夕方からなら時間取ってくれるって、先生の事務所に行かないか?」
「ありがとう。行くよ」
「じゃあ15時頃に病院に迎えにいくよ。シャワー浴びたいだろうし、着替えたいだろ」
「助かる。そうしてくれ」
「じゃあ後で行くから。ちゃんと飯は食べろよ」
「わかった」
電話が終わり病室に戻ると奈月くんはベットに半身を起こしていた。
「奈月くん、大丈夫?」
そう声をかけたけど、僕の目を見ずに先生の方を不安そうに見ていた。嫌われた?そう思ったら
「奈月くん、さっき言ったこと言えるかい?言っても樹は怒ったりしないよ」
俺が怒る?そんなことすることないのに…そう思っていたら
「ごめんなさい」と可愛らしい声が聞こえてきた。声変わりはしている年齢だと思うのに、少し高めの声が聞こえた。
「奈月くんに謝ってもらうことなんかないよ。俺こそ、ごめんな。いろんなこと言って混乱させちゃったよな」
そう言うと首を横に振った。
「あの…僕…………です」
語尾がだんだんと小さくなって聞き取れなかった。
「ごめん聞こえなかったから、もう一回教えてくれる?」
すると少し涙目で先生に助けを求めるように見ていた。
「奈月くんは、犬や猫に会えるのを楽しみにしているよ。ただまだ体力がないんだろ。楽しい話だったけど疲れてしまったようだ。でもそれをお前に知られると怒られるんじゃないかと言葉にするのが不安になった。だから言えない代わりに涙が溢れてしまったんだよ。奈月くんはこれから言いたいことを言えるように訓練していこうな。誰も怒ったりしないから先生と約束だ」
そう言って相原先生は奈月くんの手をさすってあげていた。
そうか、そうだったんだ。もっと俺が気をつけてあげればよかったのに申し訳ないことをしてしまった。
「奈月くん、気づいてあげられなくてごめんな」
そう言うと首を横に振ってくれた。
「俺も怒ったりしないから、言いたいこと言ってくれると嬉しいんだけど」
「…わかりました」
そう小さい声で答えてくれた。
「そろそろご飯を持ってきてもらおうか。どのくらい食べられるかな?食欲はある?」
「あんまりお腹空いてません」
「そうか、でも犬の散歩は想像以上に体力がいるから少しでもいいから食べようか」
「先生、俺も売店で買ってくるので、ここで一緒に食べてもいいですか?」
「じゃあ俺の分も頼むわ。ここで3人で食べたらきっと美味しいだろうから」
「わかりました」
先生の分と自分の分のおにぎりを買って戻った。
奈月くんには消化の良さそうなお粥や野菜と鶏団子の炊き合わせ、お味噌汁にりんごと牛乳が並んでいた。
「奈月くん、無理して食べなくていい。少しずつでいいからね」
そう先生に言われてスプーンにお粥を乗せて小さな口を開いて食べた。
「美味しいです」
そう言って少しずつ食べてくれた。でもしばらくすると、その手が止まった。
「お腹いっぱいかい?」
「はい。もう満足です。でも残してごめんなさい」
そう言ったけど、大体4分の1ほどしか食べてない。
きっと胃が小さくなってるんだろう。あの母親が言ってたようにちゃんとご飯を食べてなかったんだろう。
吐かずにいればいいが…そう思いながらあまり無理させないようにしようと思いながら今日、八巻先生にどう伝えようと考えていた。
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