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目が覚めたら
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しばらく頭を撫でてると奈月くんの目が開いた。
「気がついたかい?」
そう声をかけたけど、自分がどこにいるのかわからないようで目を左右に動かして不安そうな、泣きそうな顔に変わった。
「大丈夫だよ。ここは病院で安全だし、奈月くんの母親はいないから、もう少し寝ていいよ」
そう言うとふぅーと息を吐いた。胸の辺りをトントンと叩いてやるとまたすぐに目を閉じた。
「樹、これからどうする?」
卓也が小声で聞いてきた。
「母さんに連絡するよ。退院したら実家に連れて行こうと思う」
「実家にか?」
「あぁ…実家ならお手伝いさんもいるし、犬も猫もいる心の癒しになるんじゃないかと思うから」
「まぁ実家ならお前も変なことはしないと思うし…」
「変なことって…」
「何があるかわかんないからな。それよりあの母親は大丈夫なのか?」
「また何かやらかしそうだからな。八巻先生に連絡を取ってみるよ」
「わかった。でも八巻先生は忙しいんじゃないか?狭山に連絡とってみたほうが早いかな?」
「狭山?何で?」
「お前知らないの?八巻先生のパートナーは狭山だぞ」
「えっ?嘘だろ?」
「嘘じゃない。だって俺2人がいるところ偶然見ちゃって…それで聞いたんだよ」
「まじか…」
「案外、同性パートナーなんて多いのかもしれないな」
「そうなんだ。知らなかったよ」
「まぁお前はこの子と一緒に少し休め。社長の葬儀とかで大変だっただろう。八巻先生と狭山には俺から連絡しておくから」
「ありがとうな卓也」
「気にすんな」
そう言って病室から出てった。
穏やかに寝ている奈月くんを見ながら、今まで辛いことも苦しいことも何もかも1人で我慢してきたのかと思うと、もっと早く出会えていたらと思った。奈月くんを手放したくない。俺の手で幸せにしてあげたいという気持ちが沸々と湧いてきた。
モモ以外にそんな感情を持ったことは正直なかった。
それが愛なのか…と言われればそうなのかもしれないが、その時の俺はモモにかける愛情と同じだと思っていた。
目が覚めたら、僕の手を握りながら寝ている人がいた。この人、誰だろう?それよりも僕はどうしちゃったんだっけ?確か火葬場に行って、終わって帰ろうとしたところから記憶があまりない。
ここは病院だよね?そう思ってたら、看護師さんがやってきた。
「おはよう。山田さん調子はどう?って的場さん寝てるね。酸素マスク外そうか」そう言ってマスクを取ってもらうと顔周りがスッキリした。
「的場さん?」
「そう。昨日、的場さんが山田さんを連れてきたんだけど、覚えてないか…」
「はい」
「体温と血圧測らせてね。後で先生も来るから」
看護師さんと話してたら的場さんが起きた。
「すみません。寝てましたね」
「的場さんもお疲れでしたね。隣のベット、使ってくれてよかったのに」
「奈月くん、気分はどう?大丈夫?」
「はい…でも少し頭が痛くて」
「昨日、手術したのよ。頭に血が溜まってたからね。でももう大丈夫だから、ゆっくりしててね。じゃあ的場さん何かあったらナースコール押してくださいね」
そう言って看護師さんは部屋を出て行った。
「起きたら知らない人がいてびっくりしたよね。私は的場樹です。昨日、火葬場で会ったんだけど覚えてるかな?」
「山田奈月です。昨日のことは、何となくしか覚えてなくて…」
「いいよ。無理しなくても。それより奈月くんに大事な話があるんだけど聞いてくれるかな?」
「大事な話…」
何か言われるのかわからなくて両手をギュッと握ったら、怖い話じゃないからと大きな手で撫でてくれた。
的場さんからは、僕のこれからについての提案をされた。
1つは入院してしっかりと身体を回復させること。どうも僕はご飯をあまり食べていなかったせいか細すぎるらしい。なので、しっかりご飯を食べられるようになること。2つ目は身体が回復したら退院するけど、退院したら的場さんのお家で暮らすことを提案された。
「わが家には犬が3匹、猫が3匹いるんだ、動物は平気?苦手かな?」
「ペット飼ったことないけど、犬も猫も好きです。どんな種類ですか?」
「犬も猫も保護施設から引き取ったんだけど、8歳のボーダーコリーと柴犬、7歳のトイプードル。6歳の黒猫の兄弟と2歳の茶トラ」
「わぁ~そんなにいっぱいいいですね。でも知らない人がきたらびっくりしちゃいますか?」
「いや、人に慣れてるから、きっと奈月くんにもすぐに慣れるよ」
「僕、お散歩に連れてってあげたいです。僕の家は飼えなかったから、お散歩してる人が羨ましかったんです」
「そうか、きっと喜ぶよ。じゃあご飯をいっぱい食べて散歩に行ける体力つけなきゃな」
「はい」
そうは言ったものの、少し話をしてるだけでも疲れて辛くなってきた。少し寝てもいいかな?でもそんなことして怒られたらどうしよう…僕はだんだん不安になってきた。言いたい…けど言えない…しだいに目に膜が張ってきた。泣いちゃいけない。泣いたらもっと怒られるかもしれない。あの人とは違くて、優しそうな目をしてるけど…
「奈月くんどうした?」
そう言われた時には、僕の目から涙がこぼれ落ちていた。
「気がついたかい?」
そう声をかけたけど、自分がどこにいるのかわからないようで目を左右に動かして不安そうな、泣きそうな顔に変わった。
「大丈夫だよ。ここは病院で安全だし、奈月くんの母親はいないから、もう少し寝ていいよ」
そう言うとふぅーと息を吐いた。胸の辺りをトントンと叩いてやるとまたすぐに目を閉じた。
「樹、これからどうする?」
卓也が小声で聞いてきた。
「母さんに連絡するよ。退院したら実家に連れて行こうと思う」
「実家にか?」
「あぁ…実家ならお手伝いさんもいるし、犬も猫もいる心の癒しになるんじゃないかと思うから」
「まぁ実家ならお前も変なことはしないと思うし…」
「変なことって…」
「何があるかわかんないからな。それよりあの母親は大丈夫なのか?」
「また何かやらかしそうだからな。八巻先生に連絡を取ってみるよ」
「わかった。でも八巻先生は忙しいんじゃないか?狭山に連絡とってみたほうが早いかな?」
「狭山?何で?」
「お前知らないの?八巻先生のパートナーは狭山だぞ」
「えっ?嘘だろ?」
「嘘じゃない。だって俺2人がいるところ偶然見ちゃって…それで聞いたんだよ」
「まじか…」
「案外、同性パートナーなんて多いのかもしれないな」
「そうなんだ。知らなかったよ」
「まぁお前はこの子と一緒に少し休め。社長の葬儀とかで大変だっただろう。八巻先生と狭山には俺から連絡しておくから」
「ありがとうな卓也」
「気にすんな」
そう言って病室から出てった。
穏やかに寝ている奈月くんを見ながら、今まで辛いことも苦しいことも何もかも1人で我慢してきたのかと思うと、もっと早く出会えていたらと思った。奈月くんを手放したくない。俺の手で幸せにしてあげたいという気持ちが沸々と湧いてきた。
モモ以外にそんな感情を持ったことは正直なかった。
それが愛なのか…と言われればそうなのかもしれないが、その時の俺はモモにかける愛情と同じだと思っていた。
目が覚めたら、僕の手を握りながら寝ている人がいた。この人、誰だろう?それよりも僕はどうしちゃったんだっけ?確か火葬場に行って、終わって帰ろうとしたところから記憶があまりない。
ここは病院だよね?そう思ってたら、看護師さんがやってきた。
「おはよう。山田さん調子はどう?って的場さん寝てるね。酸素マスク外そうか」そう言ってマスクを取ってもらうと顔周りがスッキリした。
「的場さん?」
「そう。昨日、的場さんが山田さんを連れてきたんだけど、覚えてないか…」
「はい」
「体温と血圧測らせてね。後で先生も来るから」
看護師さんと話してたら的場さんが起きた。
「すみません。寝てましたね」
「的場さんもお疲れでしたね。隣のベット、使ってくれてよかったのに」
「奈月くん、気分はどう?大丈夫?」
「はい…でも少し頭が痛くて」
「昨日、手術したのよ。頭に血が溜まってたからね。でももう大丈夫だから、ゆっくりしててね。じゃあ的場さん何かあったらナースコール押してくださいね」
そう言って看護師さんは部屋を出て行った。
「起きたら知らない人がいてびっくりしたよね。私は的場樹です。昨日、火葬場で会ったんだけど覚えてるかな?」
「山田奈月です。昨日のことは、何となくしか覚えてなくて…」
「いいよ。無理しなくても。それより奈月くんに大事な話があるんだけど聞いてくれるかな?」
「大事な話…」
何か言われるのかわからなくて両手をギュッと握ったら、怖い話じゃないからと大きな手で撫でてくれた。
的場さんからは、僕のこれからについての提案をされた。
1つは入院してしっかりと身体を回復させること。どうも僕はご飯をあまり食べていなかったせいか細すぎるらしい。なので、しっかりご飯を食べられるようになること。2つ目は身体が回復したら退院するけど、退院したら的場さんのお家で暮らすことを提案された。
「わが家には犬が3匹、猫が3匹いるんだ、動物は平気?苦手かな?」
「ペット飼ったことないけど、犬も猫も好きです。どんな種類ですか?」
「犬も猫も保護施設から引き取ったんだけど、8歳のボーダーコリーと柴犬、7歳のトイプードル。6歳の黒猫の兄弟と2歳の茶トラ」
「わぁ~そんなにいっぱいいいですね。でも知らない人がきたらびっくりしちゃいますか?」
「いや、人に慣れてるから、きっと奈月くんにもすぐに慣れるよ」
「僕、お散歩に連れてってあげたいです。僕の家は飼えなかったから、お散歩してる人が羨ましかったんです」
「そうか、きっと喜ぶよ。じゃあご飯をいっぱい食べて散歩に行ける体力つけなきゃな」
「はい」
そうは言ったものの、少し話をしてるだけでも疲れて辛くなってきた。少し寝てもいいかな?でもそんなことして怒られたらどうしよう…僕はだんだん不安になってきた。言いたい…けど言えない…しだいに目に膜が張ってきた。泣いちゃいけない。泣いたらもっと怒られるかもしれない。あの人とは違くて、優しそうな目をしてるけど…
「奈月くんどうした?」
そう言われた時には、僕の目から涙がこぼれ落ちていた。
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