ブラックな職場で働いていた聖女は超高待遇を提示してきた隣国に引き抜かれます

京月

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第七話

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「あぶな!!なにするのよ!」


 石を投げてきたのは孤児院の子供達だった。子供たちはまた石を投げる準備をしている。


「まっ待って!なんでこんなことするの?」


「うるさーい!悪い奴の言葉になんかに耳を貸さないぞ!」


「私たちは悪い奴なんかじゃないよ」


「そんな嘘ついてもダメだぞ。またシスターをいじめに来たんだろ!シスターをいじめる奴はこうしてやる!」


 そう言って子供たちがまた石を投げようとすると女性が怒鳴りながらこちらに向かってきた。


「コラーーー!何やってるの子供達!人に石を投げちゃダメでしょ!!」


「でもこいつらは悪い奴なんだ。だから…」


「たとえ悪い人でも石を投げてはいけません!!」


 シスターは問答無用で子供たちに拳骨をおとす。うわぁ嫌な音がした…あれは絶対痛い…


「この子たちが大変失礼しました!ほらあなた達も謝りなさい」


「「「「ごめんなさい」」」」


「これからはこんなことしちゃダメだよ」


「「「はーい」」」


 子供たちと私たちと一緒に来たスタッフさんたちが孤児院の庭で遊んでいる間私とカナさんとシスターの三人で話をする。


「シスター、子供たちの言っていた悪い奴って一体誰なんですか?」


「…この孤児院は見ての通り経営難に陥っています。そのためいろんなところからお金を借りているのですが返済のめどが立たず取り立てが激しくなりまして、子供たちは取り立てに来る人を悪い奴と言っているんですよ」


 なるほどね、確かにそれは警戒するわ。私は一人納得しているがカナさんは眉間にしわを寄せている。


「それはおかしいです。この国では孤児院に少しは活動資金を送っています。なのに借りなければいけないほどお金が不足しているはおかしいです。少し調査してみましょう」


 カナさんはそう言うとすぐに動き出した。こうなったカナさんの行動力は凄まじいので数日もすればなにか掴むだろう。それから三日私は子供たちと遊びながら過ごした。いつものお祈りは映像魔法さえ使えればどこでも行えるので孤児院の使われていない部屋で行った。リモートお祈りだ。


「お待たせしました!!」


 四日目の朝カナさんは大量の資料を持ってきた。こんなのどこから…聞くだけ無駄か、多分私には理解できないことだから。カナさんによるとこの村の管理を預かっている貴族が資金を横領したらしい。このことをすぐに王国に報告したらその貴族が貴族の称号を剥奪された。この王国は規則にはかなり厳しいらしい。


 子供達とシスターにある程度の食料と日用品を送り私たちは王都に帰った。別れが寂しくて泣きそうになってしまった。また会えるといいな。
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