ブラックな職場で働いていた聖女は超高待遇を提示してきた隣国に引き抜かれます

京月

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第四話

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「皆さんこんにちは~聖女と語ろうホーサの部屋始まるよ~」


 映像魔法で映し出された画面には聖女の正式な衣装ケースを着たホーサが大きなソファーに座りこちらに向けて話しかけている。


 皆さんはここで疑問を持つだろう。何故こんなことになっているのかと。話は三週間前に遡る。


「ねえカナさん、私ってあんまり知名度ないよね?」

 
 私の家で紅茶を飲んでいたカナさんに疑問に思っていたことを聞く。


「どうなされたのですか聖女様、急にそんなことを聞くなんて何かございましたか?」


「前の国では私が道を歩くだけで皆私に気付いたんだけどこの国ではそれがないの」


「それは我が国があまり宗教に関心を持っていないからでしょう」

 
 確かにスカウトされたときそんなことを言っていた気がするがこれはまずい。


「知らないと思うから教えるけど聖女の五穀豊穣の加護って私のお祈りと信者の信仰心が必要なのよ」


 カナさんは持っていた紅茶のカップを床に落とす。後で掃除しないと。


「そ、それは本当ですか!?」


「ええ、本当よ」


「そんな…」


 カナさんは絶望した顔をしている。


「あっでも信仰心は代用可能よ」


「どういうことですか?」


「えっと説明するとね、まず五穀豊穣の加護は私の信仰している女神マリアの加護なの。私がお祈りすることで女神マリアに信者の信仰心による力が届けられてその見返りに加護が貰えるの。ここが肝心なところなんだけど信者の信仰心は言い換えれば女神マリアの知名度という事になるの。だからこの国の国民が女神マリアの事を知っていれば加護も貰えると思うわ」


「なるほど、そんな仕組みになっていたのですね。分かりました。そういうことなら私に考えがあります」


 そうして始まったのがこの聖女のお悩み相談番組『聖女と語ろうホーサの部屋』である。この番組では悩みを抱える者に私からありがたい言葉を授けるという趣旨で様々なゲストをお迎えしている。



「それでは今日のゲストはこの方、今この国の演劇で最も勢いのある若手役者ザルドさんです」


「どうも~初めまして!劇団トランプのザルドです。今日はよろしくお願いします」


「初めましてザルドさん、私あなたの劇生で見たことがあるのですが本当に感動しました」


「ありがとうございます、聖女様に見て頂けたなんて本当に嬉しいです!」



 こんな感じで番組が始まりゲストのお悩み相談をするという番組なのだがこれが意外と評判がいい。やはり気になる人の個人情報は価値がある者なのだな。


 番組終了の時には毎回女神マリアはあなたに祝福をというセリフを言うおかげで女神マリアの知名度は上がり五穀豊穣の加護もしっかりと与えられ、作物の育ちが良いらしい。カナさんはとても嬉しそうに話してくれた。


 私の知名度は国内に留まらず国外にまで知れ渡り、かつて働いていた国の元同僚の耳にも私の噂が届いた。



「ホーサが隣国にいるって本当なの!?」


「はいバーバア様、確かな情報です」


「よくやったわ神父。馬車を準備して!私はこれから隣国に向かいます」


「まさかバーバア様自ら行くのですか!?」


「もちろんです。どうせホーサのことです、私が少し説得すればすぐに戻ってくるわ」


「さすがですバーバア様」


「待ってなさいホーサ、すぐに迎えに行くから!」
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