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本編

友兄と……

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「嫌になるなんて考えられないな。…嬉しいよ、理玖」

 目を細めた友兄。
 嬉しい……って、言った?

 友兄の手が俺の首筋を撫でる。
 擽ったくて、ゾクゾクして、恥ずかしくなってくる。

 友兄の目はずっと俺を見てる。
 首筋を這っていた手が、時々シャツの襟ぐりの中に入る。
 それからピタリと首筋で止まった手。
 親指が、俺の口の下あたりをくいっと下に押し下げてきた。
 それでほんの少し開いた俺の唇。
 口角が少し上がった友兄の顔が、ゆっくりと降りてきて、ふに…って唇が触れ合った瞬間、耐えきれなくて思い切り目を閉じた。

「…ぅ」

 心臓がうるさすぎて、鼻での呼吸が凄く荒くなりそう。……キスの最中に鼻息荒くなるって、どうなのこれ。こんなん友兄に知られたら、俺恥ずかしさでどうにかなる。絶対どうにかなる。
 そんな俺の現状を知ってか知らずか、友兄は俺の息が苦しくなる手前で唇を一旦離してくれた。はふ…って息をついたら、今度は触れるだけじゃなくて舌も入ってくる。

「ん……ぅ、っ、は、ぁ」

 隙間から息をするたびに、恥ずかしい声が漏れる。
 気持ちいい。
 心臓は相変わらずうるさくて、でもあまり気にならなくなってきて。
 くちゅくちゅって絡む音を聞いている間に、腰がなんだか重たくなってきて。

「ん…っ」

 喉の奥に溜まった唾液を飲み込んだら、絡んでた舌が離れていって、唇も離れた。
 離れた唇を追うように目を開けたら、俺と友兄の間が唾液の糸で繋がっていて、それを見ただけで一際強く心臓が音を立てた。
 …友兄の唇が濡れてる。
 ぷつりとその糸が途切れたとき、友兄は自分の唇を舐めた。俺はその仕草から目を離せない。
 濡れた唇と赤い舌。
 俺の中で暴れてた気持ちのいい舌。
 ずっと見ていたら、また、友兄の顔が近づいてきて、唇が触れる。
 今度は目を閉じなかった。
 目を合わせながら、舌を絡めないキスをする。
 キスは温かくて気持ちがいい。
 自分に重なるコンラッドの体温も重みも、全部心地いい。
 抱かれる……っていうのがまだわからない。意味はわかるけど、具体的に何をするのかわからない。
 でも友兄はわかっているのかな。俺の知らないこと、全部。
 颯は、友兄が全部してくれるみたいなこと、言ってたけど。

「理玖……」

 耳元の声にまたしても心臓が跳ねあがった。俺の心臓、限界を試されてる。
 緊張してるのに体には力が入らない。身を投げ出してる……って、感じ。
 どうしよう、このまま、する、のかな。

「友に………」

 緊張がピークに達した時、鼻をいきなりぎゅむっと掴まれた。



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