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本編

友兄があっさりと外泊許可を取った…!

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「おはよう、理玖」

 いつものキスが頬におりてくる。

「うん、おはよう」

 俺もいつものようにキスを返す。離れ際、ぐいっと腰を引き寄せられて、頬じゃなくて唇にキスをされた。

「っ」

 心臓が、やばい。

「やっぱりここにキスをする方がいいね」
「こんなとこで…っ」
「俺にとっては時間も場所も関係ないんだけど」

 俺にとっては関係あるよ!
 こんな玄関先で、まだドアも閉めてない状況で、いつ何時母さんが顔を出すかもしれなくて。

「……嬉しいけど……困る」

 俯き加減でなんとかそれだけを言ったら、くすっと笑われて顎をひょいっと取られた。

「もう一度していい?」
「だから……っ!!!」

 人の話しを聞けえぇ!!
 友兄の唇が近付いてきて触れそうになった、そのとき。

「理玖、通せんぼしてないで友君を中に連れてきてね」

 …ってのんびりした声が聞こえてきた。
 その声にびっくりして振りむこうとした俺だけれど、ぐいっと顎を取られたまましっかり重なった唇に阻まれた。

「っ、と……っ」

 抗議も何もかも吸い取られる。
 唇を割って侵入してきた舌に目を硬く閉じた。震える手を友兄の背中にまわす。
 …友兄の匂いだ。
 そんなに長い間会わなかったわけじゃない。だけど……、この匂いは気分が落ち着く。鼓動は、早くなりっぱなしだけど。

「ん……」

 最後にチュって軽い音を立てて唇が離れた。

「も…信じられない…」

 くたりと友兄の胸に額をあてたら、髪を弄られながらまた笑われた。

「さ、行こうか」

 こんなことしておいて涼しげに言う友兄は……ほんと、侮れん。






「こんなに早くどうしたの?」
「今日のことがどうしても気になって、一人でいると落ち着かなくて」
「あら、友君でもやっぱりお見合いは気になるのね」
「まあ」

 …って食卓にお皿を並べながら母さんと友兄は話しているけど…、盗み見た友兄の笑顔が嘘くさい。
 じとーっと顔を見ていたら、友兄は俺にちらりと視線を流してクスッと笑った。
 ああ、ほら。やっぱりそんな殊勝な人じゃない。

「母さん、大柴さんとの昼食が終わり次第、理玖を連れて出かけてもいいかな」

 オオシバさん…と言うのが、今日の相手なんだ。知らなかった。

「いいわよ。どこに行くの?」
「そうだなぁ…。天気がいいならのんびりドライブでもしようかと」
「あら、デートみたいね」

 って、さらっと言った母さんの言葉で、飲んでいたお茶にむせた。

「ちょっと理玖…大丈夫?」
「だい……じょ、ぶ…」

 大丈夫じゃない。
 かなり苦しい。
 友兄は笑いながら俺の背中をさすってくれた。

「ああ、それで、出先か俺の部屋に泊まろうかと。…急に予定が変更になってしまって、理玖がここのところ拗ねているから」
「だ、誰が……っ」
「月曜の朝、俺が学校に送るので」
「仕方がないわね。でも、ちゃんとお勉強しなきゃだめよ?」
「それはもちろん」

 …なんというか…。
 あっさりと月曜までの外泊許可を取ってしまう友兄は、すごいと思う。
 月曜まで……ずっと、一緒にいられる。

「父さんはまだ?」
「みたいね。そろそろ起こさないと駄目かしら」
「まだ時間はあるし、大丈夫かな。時間まで理玖の部屋で荷物の準備とか見ておくので」
「そうね。スーツは持ってきている?」
「ええ。――――理玖、行こうか」
「あ、うん」

 残っていたお茶を飲み干して、立ち上がった友兄に続いた。
 堂々と俺の部屋に行くことを宣言した友兄は…やっぱりすごい。

「理玖は制服だよね」
「そうだと思うけど」
「でも、出かけるまではまだ時間があるから、私服でいいとして…」

 あ、何かヨカラヌことを考えてる顔だ。

「俺が着替えを手伝ってあげるから」

 ってにこやかに言われても…!!

「遠慮します!!」

 友兄は動じた様子もなく、勝手に俺の部屋のドアを開けた。
 ほんとに油断できない。



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