魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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自由の国『リーデンベルグ』

41 討伐演習は安全安心が大事。

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 阿鼻叫喚な昼食時間が終わると、やっと一日目の実戦演習になった。
 ここでも基本は班行動だ。協力して魔物を倒すことを覚えましょー的な。協力し合うのは大事。
 なので、まずは班員同士で得意な魔法を確認し合う。……なんというか、前衛職がいなくて後衛職の魔法師だけっていう状況に、ほんとに大丈夫なの……ってツッコミ入れたくなるが。

 野営地は森の中の街道から少し外れた開けた場所で、演習は森の中に入って行われる。東西南北に一班ずつが向かう形で、前半、後半にわかれて、各班に教師と魔法騎士が一名ずつ引率する。で、残る教師と魔法騎士一名は、後半組の班の見守り兼指導兼護衛のために残っている。なるほど。それで五名ずつなのか。

「授業で何度も聞いているとは思いますが、本物の魔物を見て動揺しないように。常に冷静に、的確に。それが魔法師に必要とされているものです」
「はい」

 教師からの念押しの注意に、しっかりした返事があがる。
 魔物を前にして、驚かず怯えず冷静に……は、確かに必要だろうなぁ。あんまりにも動揺したら、味方に誤射することだってあるし、そもそも魔物にあたらにいことだってありそうだ。

「それでも毎年森は焼けるけどな」

 俺の隣でチェリオ君が苦笑してた。

「焼けるんだ…」

 あの火柱なら、確かに燃えるか。

「魔法騎士の方々もいるから、それほど大きな被害にはならないけどな」
「毎回丸焦げだと森じゃなくなるしね…」

 俺たち八班の火属性持ちは、最高学年の同級生の彼女だ。あの制御なら、多分うちの班は大丈夫。ちなみに、五学年の女子二人は、水と土属性だった。
 属性に若干偏りが出るのは仕方ない。どの程度使えるのか、俺にはさっぱりわからないが。

「キラーラビットくらいでしたら、丸焼きにできます」

 …と、同級生の彼女が自信満々におっしゃった…。

「実は食用としても重宝されていて、高い火力で外はパリ、中は肉汁たっぷりの……、あら、すみません。別に食べたいわけではないですから」

 笑顔で否定されても本音はもうわかりました。出てくるといいね、キラーラビット。うまく焼けたら夕飯の一品に加えられるのかな。
 ラビット系の魔物は群れで行動することが多い。俺の感覚だとうさぎ魔物といえば角持ちの一角兎とかしか思いつかないけど、魔物学の教科書の中には、冬期間に増えるスノーラビット(角・牙持ち、白毛皮、食用可)、夏期間に増えるキラーラビット(牙持ち、茶毛皮やや硬め、食用可)の説明が書かれていた。
 一匹ずつならそんなに脅威のない魔物。けど、基本が群れ単位なので、群れと遭遇すると脅威度が中程度にあがる。

「群れ丸ごと?」

 基本が群れる魔物だから、丸焼きも群れを丸ごと丸焼きにするのかと首を傾げたら、チェリオ君も同級の彼女も目を丸くして俺を見た。

「いや、アキラ、流石にそれはない」
「私も群れと対峙できるほどの力はないかと…」
「え。じゃあ、どうやって」

 群れから一匹を引き離しても、助けようと他の個体がむかってくるはず。だとしたら、結局は群れと対峙することになるのでは。

「基本的には魔法騎士の方が狩りやすいように魔物を一匹ずつ追い込んでくれるんだ。俺たちはその魔物を魔法で討伐する」
「あー」
「ここは穏やかな森だから、ただ闇雲に歩き回っても魔物に遭遇できない場合もある。だから、狩り慣れた騎士の方が、魔物を見つけ出して誘導してくれる」
「な、るほど…?」
「用意されたようなものですけど、それでも森からは魔物が少なくなるし、私達学院生が魔物に慣れるには丁度いいんです」
「…なるほど」

 西の森の魔物討伐の時と同じようなものだと考えていたんだけど、全然違った。索敵からの討伐、ではなくて、索敵は魔法騎士プロがして、安全に狩れる魔物を生徒が討伐する。
 魔物討伐と言ってもあくまでも授業の一環。安全安心は大事ってことだな。
 五学年の女子二人組みも、チェリオ君と同級の彼女の言葉をうんうんと頷きながら聞いてる。
 討伐演習は初めてだけど、多分、授業とかで心構えとか意義とかをちゃんと聞いてるんだろう。
 なるほどなぁ。
 最初から冒険者や騎士の動きを取れというのは難しいよなぁ。
 そんな感想を持ちながら俺もうんうんと頷いていたら、心なしかげっそりとした雰囲気の生徒たちが教師と魔法騎士に先導されながら戻ってきた。
 その中にやたらと目を輝かせている例の生徒会長さんもいたけど、あえて見ない。見えなかったことにする。

「ん、じゃあそろそろかな」

 チェリオ君が前半組が戻ってきた様子を見ながら、立ち上がった。
 タイミング的にはその通りらしく、他の後半組の班も立ち上がったり体を伸ばしたり、思い思いの準備を開始した。
 チェリオ君に倣って俺も立ち上がったときだ。

「五班から七班準備を。…八班は待機」
「え」

 俺たち最高学年の担任教師の言葉に他の班からも視線が向けられた。俺たち八班も、全員で変な顔をしてると思う。
 教師の人は眉間のシワをほぐしながら、引きつった笑みを見せた。

「八班は視察対象になるので、最後に出発する」

 視察対象って。
 それって。

「殿下方と、……豊穣の国の使者の方々も同行するが、平常心で向かうように」
「えー……」

 チェリオ君はちらりと俺を見る。
 ああ……、うん、ごめん。なんか、ほんとにごめん……。










*****
更新ゆっくりな上に感想返信も滞っててごめんなさい><
感染症後遺症でぐったりとして、暑さで職場で熱中症になって……。
この夏いいことがない……(´;ω;`)
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