魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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自由の国『リーデンベルグ』

32 帰国したらやりたいこと

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 学院の休養日は、日曜日とか祝日とか、そういうのとは全く関係ない。そういう概念がこの世界にはないから、仕方ないとは思う。
 暦はあるんだからさ。作ろうよ、曜日。ないからみんな働きすぎになるんだよ。

「毎日通学してさぁ…、休みも公務って、考えられなくない?リアさん……」
「あーはいはい。諦めましょうね~。通学と言ってもアキラさんの大好きな魔法学院なんだから、一つも苦なんてないでしょうに。毎日毎日馬車で往復に護衛付き。日本の通学と一緒にしちゃいけません。そもそもお相手が殿下ってことでお休みを希望されるのは無理です。諦めてください。それに、こんなに楽しいことばかりしてるお仕事なのに弱音吐かないでください。知ってます?本当なら週休二日あるのに、なんだかんだで休日出勤を余儀なくされて、趣味にかける時間も減らされて、朝六時に出勤して、帰宅時間が午前様ですよ?そんなよろよろな状態で六十日連勤ですよ?そりゃ死にますよね?過労で死にますよね?残業代だって満額支払われなくて、でも転職する気概もなくて、こき使われてお陀仏ですよ?わかります?わかりませんよね?わかってほしいとは思いませんけど、好きなことしてるんですから、少しくらい休みがないからといってぐだぐだ言うのはおやめなさい。ね?アキラさん」
「はぃっ」

 魔法研究所に行く支度を手伝ってくれていたリアさんが、ニコニコの笑顔の後ろに真っ黒い何かを背負っていた。

「お、俺が甘かったです、ごめんなさい…」
「わかればよろしいかと」

 真っ黒い何かを背負っていても、リアさんの手付きは優しくて仕事は完璧。
 銀色に染める必要がない今日は、黒髪のまま編み込まれたり結われたりと整えられてる。
 いつもなら色々言ってくるクリスも、リアさんの静かな剣幕に黙り込んでいるし、マシロはクリスの膝の上で耳と尻尾を隠せずにぷるぷるしてる。
 多分、リアさんが話したことの意味が分からなくても、この気迫に怯えて……驚いているのかな。

「りーあ、おこ?」
「いいえ。おこじゃないですよ。はぁ。マシロちゃん、耳も尻尾も可愛い!」

 俺の髪を整え終わったらしいリアさんが、今まで背負ってた真っ黒なものを全部取り去って、クリスの膝の上からマシロを抱き上げた。
 ……というか、『おこ』って。なにそれ可愛い。

「ふふ。ふさふさ気持ちいい」
「うひゃ」
「マシロちゃんも後でお着替えしましょうね」
「あぃ!」

 ……いいなぁ。俺も耳と尻尾つきのマシロをもふりたかった……。
 てかさ、前世のリアさん、酷い状況だったんだね……。
 リアさん、充分にお休みとってください……。





「セシリアは過酷な労働環境にいたのか?」

 研究所に向かう馬車の中、俺がクリスの膝の上で啄むようなキスを受けていたとき、クリスがそんなことを呟いた。

「うん……、そう、みたい。そういう会社……ん、仕事場所ばかりじゃないんだろうけど、ん、んん、父さんも母さんも、そんなふうに仕事してなかったと思うし、ん、ぁ」
「そうか…。トビアたちの休日もアキがいた世界を基準に決めたんだな」
「ん………んぅ、そう、だけど。ん、んん、だって、クリスたち、ぜんぜん、おやすみ、とらないから……ぁっ」

 啄んでるだけだったのに、いつの間にか舌が吸われてた。しかも上着の裾から手が忍び込んできて、素肌を辿られる。
 ……グレゴリオ殿下が別の馬車で良かった。

「休みとって良いのか」
「……っ、なんで、おれにきくの……」
「俺が休みを取ったら、お前は一日中ベッドの中だ。それでいいのか?」

 触れ合ってる唇が笑ったのがわかった。
 それ、クリスが休みを取ったら抱き潰されるってことですか。

「マシロのこと忘れないでよ…っ」
「忘れてないが?」
「ん…っ」
「帰国したらまとまった休みを取ろうか」
「ん、ぁっ」
「アキはどうしたい?」

 胸元を探られて、きゅむっと尖りをつままれた。

「ひん………っっ」

 だめ。
 これ以上は絶対だめ。
 やばい。
 だってこれから仕事なのに。
 今更遅いかもしれないけど、これ以上されたら俺の息子がやばいことになる…!

「~~~~っ、クリス!!」
「ん?」

 クリスの胸元に手をついて、思い切り腕を伸ばして体を引き離した。
 悔しいかな。
 クリスは余裕の笑みで俺を見てる。

「……ピクニック!!」
「は?」
「クリスと、マシロと、ピクニックに行く…!!」

 それが俺の、『帰国したらやりたいこと』なんだとわかったらしいクリスが、くくく…って笑い出した。
 俺はその間に乱れた服をいそいそとなおす。

「行こうか、ピクニック」

 ふん!っと椅子に座り直した俺のこめかみにキスをしながら、クリスはまだ笑ってた。









*****
「うう~……、おみみと、しっぽ、くりすぱぱ、おこ、なる」
「大丈夫大丈夫。デレっとした顔してたから、全然怒ってないですよ~あのお顔」
「ほんと?くりすぱぱ、おこしない?」
「はい。めっちゃデレデレ顔でした」
「めちぁ」
「ふふ」
「てれてれ?」
「そうね。てれてれ。アキラさんは、もう可愛くて仕方ない~!!ってお顔でしたよ」
「うきゃ!!」
「でも、お出かけのときにはお耳も尻尾も隠しましょうね」
「う!かくしゅ!!」
「お耳も尻尾もなくても、マシロちゃんはめっちゃ可愛い!」
「めちぁ、かぁい!」
「そうそう!」
「りーあも、めちぁかぁい!」
「あら、嬉しい!マシロちゃん!」
「きゃあっ」




マシロハアタラシイコトバヲオボエタ
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