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新婚旅行は海辺の街へ
29 ◆クリストフ
しおりを挟む理解したらしたで、頭を抱えたくなったのだが。
「どうあってもお前とは意見が合いそうにないな」
「そんなことはございませんよ、殿下。…最初は嫌がっていても、皆、私の手管に堕ちるのですから。そのしなやかな体を余すところなく舐め解し、未知の快楽に殿下を誘うことが私にはできますから。……ええ。本当に。抱きたくて仕方なかった。殿下、貴方は私の理想そのものですよ」
熱の籠った声で言い募るフランツ。
アキはその言葉を聞き、俺の胸元から顔をあげて目を見開いた。
「……くりすが、だかれるの……?」
「……絶対にないな」
「奥方様、ダルウェンは貴方に抱かれたかったんですよ?」
……また、頭を抱えたくなった。
想定外がすぎる。
「ふぇ?」
「そのために態々お二人には一旦離れていただいたのに……。ダルウェンは一体何をしてるんでしょうね」
「…………?」
フランツの言葉をアキは理解しようとしているらしかったが…、こてんと首を傾げたまま固まっていた。
「考えなくていい」
「くりす」
肩を抱いて額に唇を落とすと、アキは表情を緩めて俺に身体を預けてきた。
「……それは無理だろうな」
「奥方様とて男性ですよ?本来の欲求もあるでしょう」
「勃たなければ何もできんだろ。……全く。何か企んでいるとは思ったが、こんなことだったとはな……」
「企みとは酷いですね。別に殿下と奥方様を引き離そうだとか、奪い取ろうとか、そんなことを考えたわけではありませんよ?殿下が奥方様を深く愛していらっしゃるのはよくわかっております。けれど、体とは心とはまた別のものでしょう?殿下が隠された快楽に目覚め、奥方様が本来の快楽に目覚めたら、それはとても豊かな夫婦生活を送れると思いませんか」
……つまり、こいつは、俺に抱かれる歓びを教え、アキに抱く歓びを与え、アキが俺を抱くように仕向けたかったということか。
まあ、アキがどうしてもと望むのなら、アキに抱かれることも受け入れは、するのだが。
何度目かの溜息をついた。
相変わらず俺の肌に唇を寄せていたアキは、俺の溜息を聞いて顔を上げ、不安そうな目を俺に向けてきた。
顎の下をマシロにするようになでてやれば、目を細めて喜んでいる。
問題ないと感じたらしいアキは、体の位置をずらし、トラウザーズも緩め始めた。
「……その要望は今は全くないな」
「それは残念です……殿下。もし気が変わられましたら、いつでも私が抱いて差し上げますよ」
「必要ない」
即答し、俺の足の間で体を屈めるアキの頭を撫でた。
ちらりと俺を見上げたアキは、下履きもずらし既に滾っているペニスに舌を這わせる。
喉の奥まで突き入れ、苦しそうに、それでも嬉しそうにするアキを見たいと思うのは、媚薬のせいか、それとも俺の本心か。
「……媚薬を飲んで尚その自制心……、恐れ入ります、殿下」
俺がアキを乱暴に扱わないことに対する言葉なのか。
「薬には慣らされている」
……が、アキの媚態を前にいつまで自制心とやらは働くのだろうか。
フランツは俺の内心なぞ知るはずもなく、乾いた笑みを浮かべていた。
「それはそうですね。王族の方々が薬などで自我を失うわけにいきませんからね」
フランツは一人納得し頷いている。
この状況でも、アキは俺に奉仕し続けている。…これではどちらが媚薬を飲まされているのかわからないな。
「殿下」
フランツは不適な笑みを浮かべ、恭しく頭を垂れた。
「この部屋は人払いをかけております。落ち着かれるまでお使いください。私たちに対する処罰は謹んでお受け致します」
「処罰されるとわかっていての行動か」
「当然であります。処罰されようと、どうしても私は殿下を――――」
「……もういい。下がれ」
「はい」
処罰を受けることが確定しているというのに笑って頷く男。
明日にはここを発つというのに、頭の痛い案件だ。
フランツは何も言わず部屋を出た。
人の気配が遠ざかり、確かにこの部屋周囲には人払いがかけられているらしい。
いつものポーチは部屋に置いてきている。
当然、この客間には風呂場も水場もない。
「アキ」
「ん…っぅ?」
「部屋に戻ろうか」
「んん」
亀頭を口に含んでいたアキが、口を離した。
とろりとした目は、俺の真意を探るように細められている。
「ここじゃ満足にお前を愛せない」
唾液に濡れた唇を撫でると、アキは嬉しそうに唇をゆがめた。
「媚薬を飲まされて辛いんだ。…お前の体で慰めてくれるよな?」
「ん……ぅ」
コクコク頷くアキの瞳には、期待の色しか浮かんでいない。
…前回酒を飲んだときには、ほとんどその後のことを覚えてなかったが。
「一度飲んでくれ」
「ん」
今回はどうだろうな…と思いながら、アキの頭を撫でると、アキは躊躇いなく俺のペニスをその小さい口に咥えこんだ。
強い快感に頭の中がおかしくなりそうだった。
「んっ、んっ」
足の間でアキの頭が上下に揺れる。
気づけばその動きに合わせて腰を動かしていた。
「んぅ」
時折喉奥に届くのだろう。
苦しそうな声をだしながらも、口を離そうとしない。
「飲め」
頭を撫でて喉の奥にたたきつけるように欲を吐き出した。
アキは呻きながらも、零すことなくそれを飲み下していく。
俺に媚薬を盛ったこと。
アキに酒を飲ませたこと。
画策して俺達を襲おうといていたこと。
アキの転移を見られていること。
結果としては未遂だったこと。
考えなければならないことは目の前に山積している。
けれど、今は――――。
「アキ、部屋に戻ろう」
乱れた衣服を直し、薄く唇を開きハクハクと息をつくアキを抱き上げた。
たっぷりとアキの口内に出したにもかかわらず、ペニスは既に硬く滾っている。
閉じない唇に口付けを与えながら、廊下を進んだ。
途中すれ違った侍女たちは、驚きながらも礼を取り廊下の壁際に下がっていく。
あてがわれていた部屋に特に異常はなかった。
マシロは寝床の中で大人しく寝ているようだ。
部屋に入るなり、俺はアキの服をはぎ取った。けれど、破かないように、慎重に。あまりにも酷い状態にしては、メリダになにを言われることか。
ベッドに行くのもままならず、壁に手をつかせたアキを後ろから貫いた。
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