その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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忘れたくなかった

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吸い寄せられるように思わず重ねた唇。
自身でもその行動に驚き、慌てて唇を離して、顔を背けた。

顔は火がついたように熱く、破裂しそうなほど忙しなく心臓が鼓動を刻み、情けなく動揺した。

ー な、な、何やってんだ。俺!?

自身から口付けた羞恥心に暫し震えながらも相手の反応が気になり、覚悟を決めてチラリと見やる。


ハラリっと一粒の雫が紫色の瞳から溢れる。
その涙にギョッとして自身が恥ずかしかったのも忘れてワタワタする。

「夢…みたいだ。」

ハラハラと涙を流しながら幸福にその表情が染まる。
優しい笑みを浮かべるその姿に見惚れて、頰に触れるとその手に手が重なり、息が掛かる程距離が近付く。

「もう一度…。もう一度貴方からください。」

「ふざけ…んな。」

「もう一度だけ…。」

耳元で囁かれただけでゾクゾクと身体が震える。

あれは無意識でやっただけなので、意識してなんてどんな苦行だ。
恥ずかし過ぎて居た堪れないのにあまりに嬉しそうな顔をして、懇願してくるからタチが悪い。

ー なんで…こんなに…。

コイツが喜ぶととても嬉しくて。こんなにも愛しいと思うのだろう。
お前にとって俺はなんだ?俺にとってお前はなんだったんだろう…。

ー ああ、くそッ!!

わしわしと頭を掻き、覚悟を決めてもう一度唇に触れた。
なんかここでひよったら負けな気がする。

「もう終わりだ。」と真っ赤に染まった顔を逸らせば、首筋に優しく口付けが降り。抗議に口を開けば何度も角度を変えて深く唇が重なる。

「んっ…。ふぁ…んんっ。ん…。」

口の中を掻き混ぜられ、気持ちよくて力が抜ける。
甘い魔力が全身を駆け巡り、探していた何かが満たされたような幸福感が胸に広がる。

「コタ。舌を絡めて。私と同じように。」

「はぁはぁ…。ん。んっ…。んっ。」

「んっ。上手ですよ。ふっ…。蕩けてしまいそうだ。」

口付けだけで身体中が熱くなり、俺という存在が蕩けて溶けてしまいそうで、少し怖い。それでも幸せで愛しくてしょうがなくて夢中で舌を絡めた。

時折、視界に映るソイツはとても幸せそうで、ずっと苦しそうな顔をしてたからそれがとても嬉しくて。久々に身体中に触れる傷だらけの手にもっと触れて欲しくて。

大切だったのに誰だか分からないのが悔しくて。


ー 名前が呼びたい…。

最初はただテキトーに付けた名前だった。
ただ名前が無いと呼び辛くて付けただけの名前。
それなのにこんなにもその名を呼びたくてしょうがない。

「……ッ。……ッ!!」

「コタ?何故、泣いてるんですか?…嫌でしたか?」

「…違う。俺は…、俺はッ。」

忘れたくなかった。
絶対に忘れたくなんてなかった。
悔しい。悔しいッ。


男が簡単に涙なんて見せたく無い。
なのに涙は止まらなくて、またその顔が悲しみに曇るのが嫌で、また自ら口付けをした。



「《離れろ》。」

頭に命令が響き、ずっと欲していた体温が遠ざかり、赫い刃が月明かりを受け怪しく光った。
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