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大事な人
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キリキリと首が絞まる。
「吾の主人を返せッ!!血に染まり続け、命を刈り取り続けるその姿こそ、主人の本来のお姿。《マーリン》の子飼い如きがよくもぉおおっ!!」
今まで感じた事の無い程の憎悪。
首が絞まりもがく度に歓喜に顔を歪め、ドロリと纏わりつくような殺意をぶつける。
「憎い憎い憎い憎いぃいいーーッ。」
息が出来ず、段々と意識が遠くなっていく中。
最後の力を振り絞り、蹴りを喰らわせようとした。だが、その瞬間…。
「違うっ…。自分はただコタの旦那に憧れてっ…自分ばそうなりたくて…。」
憎悪の感情の隙間に見えた悲しみの感情。
その感情がポタポタと赫く染まった瞳から涙を降らす。
『自分ばたーんと任せてッ。』
涙が降る度に頭の中でこちらに無邪気に笑いかけるあの日の姿が蘇り、唇を噛んだ。
「モモ…。」
大事な舎弟。
本当は仲間の為に自分が傷付くのも厭わない優しいモモ。
「男が…簡単に泣く…んじゃねぇ…よ。」
蹴ろうと足から力が抜ける。
「お前の…所為じゃねぇだろ。」
お前が俺を傷付けるような奴じゃない事は分かってる。
だからその寄生虫に操られている姿が悔しくて、腹が立ってしょうがない。
それなのにコイツにひと泡も吹かせる事なく、意識が…遠のいて…。
「…その人に触れるな。」
誰かの声とともにバンッと何かがぶっ飛び、ぶつかる音がした。
急に酸欠だった肺に空気が送り込まれ、ゴホゴホっと苦しい咳を溢れる。
くらりと薄暗い景色の中、鮮やかな紫色の瞳が見え、温かな誰かの腕に包まれた。
ソイツの手の甲には太陽のような模様が点滅していた。
ぶわりと怒りを身に纏っているのに流れてくる甘い魔力はどこまで優しく身体に染み入る。
「今世の…魔王。」
「許さない。コタは絶対に奪わせない。…覚悟しろ。」
俺から離れて、激しい怒りのままにモモに殴り込もうとするソイツの腕をうまく動かない身体で捕まえた。
「モモは…操られてるだけなんだ。」
「ですが、アレは貴方をッ!!」
「頼む…から。」
眉を下げ、グッと唇を噛み、怒りを抑えると、ソイツはまだフラフラする俺の身体を壊れないように優しく抱き締めた。ソイツが誰だか分からないのにそうされると安心して身を任せる。
薄い緑色の肌をした精悍な身体つきの綺麗な男。
自身の肌に触れる手は傷だらけだが、触れられていると心地いい。
モモはいつの間にかに逃げてしまっていた。
それが気がかりで心配だった。「お願いです。無理をしないで。」とソイツに懇願されてしまえば俺は逆らえなかった。
ー なんでだろう。心がふわふわする。
胸がドキドキと高鳴り、体温が上昇する。
心配そうにこちらを見つめるその顔に触れると、胸の中から感情が溢れ出して…。
気付けばその唇に自身の唇を寄せていた。
「吾の主人を返せッ!!血に染まり続け、命を刈り取り続けるその姿こそ、主人の本来のお姿。《マーリン》の子飼い如きがよくもぉおおっ!!」
今まで感じた事の無い程の憎悪。
首が絞まりもがく度に歓喜に顔を歪め、ドロリと纏わりつくような殺意をぶつける。
「憎い憎い憎い憎いぃいいーーッ。」
息が出来ず、段々と意識が遠くなっていく中。
最後の力を振り絞り、蹴りを喰らわせようとした。だが、その瞬間…。
「違うっ…。自分はただコタの旦那に憧れてっ…自分ばそうなりたくて…。」
憎悪の感情の隙間に見えた悲しみの感情。
その感情がポタポタと赫く染まった瞳から涙を降らす。
『自分ばたーんと任せてッ。』
涙が降る度に頭の中でこちらに無邪気に笑いかけるあの日の姿が蘇り、唇を噛んだ。
「モモ…。」
大事な舎弟。
本当は仲間の為に自分が傷付くのも厭わない優しいモモ。
「男が…簡単に泣く…んじゃねぇ…よ。」
蹴ろうと足から力が抜ける。
「お前の…所為じゃねぇだろ。」
お前が俺を傷付けるような奴じゃない事は分かってる。
だからその寄生虫に操られている姿が悔しくて、腹が立ってしょうがない。
それなのにコイツにひと泡も吹かせる事なく、意識が…遠のいて…。
「…その人に触れるな。」
誰かの声とともにバンッと何かがぶっ飛び、ぶつかる音がした。
急に酸欠だった肺に空気が送り込まれ、ゴホゴホっと苦しい咳を溢れる。
くらりと薄暗い景色の中、鮮やかな紫色の瞳が見え、温かな誰かの腕に包まれた。
ソイツの手の甲には太陽のような模様が点滅していた。
ぶわりと怒りを身に纏っているのに流れてくる甘い魔力はどこまで優しく身体に染み入る。
「今世の…魔王。」
「許さない。コタは絶対に奪わせない。…覚悟しろ。」
俺から離れて、激しい怒りのままにモモに殴り込もうとするソイツの腕をうまく動かない身体で捕まえた。
「モモは…操られてるだけなんだ。」
「ですが、アレは貴方をッ!!」
「頼む…から。」
眉を下げ、グッと唇を噛み、怒りを抑えると、ソイツはまだフラフラする俺の身体を壊れないように優しく抱き締めた。ソイツが誰だか分からないのにそうされると安心して身を任せる。
薄い緑色の肌をした精悍な身体つきの綺麗な男。
自身の肌に触れる手は傷だらけだが、触れられていると心地いい。
モモはいつの間にかに逃げてしまっていた。
それが気がかりで心配だった。「お願いです。無理をしないで。」とソイツに懇願されてしまえば俺は逆らえなかった。
ー なんでだろう。心がふわふわする。
胸がドキドキと高鳴り、体温が上昇する。
心配そうにこちらを見つめるその顔に触れると、胸の中から感情が溢れ出して…。
気付けばその唇に自身の唇を寄せていた。
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