その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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忍び寄る悪夢

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『愛す事も愛される事もお前は不器用過ぎる。』

誰も信用出来なくてただ自身を守る為だけに敵意をむき出しにする幼い日の俺を伸し、そう《あの人》は苦笑した。

『愛し方も愛され方も知らない獣よ。人になりたくば愛を知れ。』

《あの人》は幼き日の俺を獣と称した。
きっとまだ愛というものを分かっていない今の俺とあっても《あの人》はまた俺を獣と称すのだろう。







「おいっ、モモ!!モモッ。お前と話がしたい。出て来てくれッ。」

張り上げた声が前よりも静かになった森に響く。
時折、魔物達がそんな俺の声に茂みから顔を出すが、すぐさま顔を引っ込めて逃げていく。
その姿は皆、怯え切ってきて、静か過ぎる森と相まって違和感を隠しきれない。

ー 俺が居ない間に何かあったのか?

あんなにも好意的で賑やかだった魔物達。
オーなんちゃらとかいう森の中でもかなり強い鬼の魔物ですらも集落の中で身を潜めて何かから自身達を守っていた。

何かここの魔物達が恐れるような存在がこの森の中にいる。何か恐ろしいものが。

ー …モモッ!!

胸騒ぎがして、必死にモモを探す。
オークの集落から少し離れた所にあるモモの寝ぐら。オークの集落。

怯える魔物達にモモの居場所を聞いてみても怯えているだけで何も教えてくれない。居場所を知っていそうなモモの種族仲間であるオーク達はその名を出すだけで逃げていってしまった。

やがて日が暮れて夕闇が辺りを支配し始めた頃。
どうしても諦めきれずに俺がモモに落とされたあの崖に行った。

すると夕日に赤く照らされた一匹のオークが俺が落ちた場所に立っていた。

「モモ?」

やっと見つけた事にホッとしてその名を呼ぶ。
しかし、モモは反応せず、恐る恐る近付く。

「……何故。主は貴方を選ぶのでしょう。吾の方が優れているというのに。」

ブツブツとモモは何かを呟いている。
その顔は嫉妬に塗れた歪んだ顔でモモなのにとてもモモとは思えない。

「ふふっ…、皮がお気に入りなのでしょうか?吾も貴方の皮を被れば主は愛してくださるのでしょうか?」

グルンッと急にこちらに向いた顔。そこには三日月方に歪んだ恐ろしい笑みと狂気を孕んだ瞳が浮かんでいた。

その姿にその喋り方にふと思い出したのはゾンビ(仮)達を操っていた時の狼野郎。あの時に狼野郎を唆していた人格。

やはり、モモじゃないと掴もうと伸ばされた手をかわし、後ろに飛び退く。すると瞬く間に距離を詰めて、俺を噛もうとモモのなりをした何かが牙を剥く。

「…ねぇ。俺は彼を連れてこいと言ったんだけど?」

噛もうと牙を剥いたまま、突如響いた声にモモのなりをした何かは固まった。
固まったまま赫い目だけを動かして声の主をその目は追い掛ける。

「何故、彼を突き落とした?明らかにアレは命令違反だった。」

「……アレは吾の意志ではございません。この野蛮なオークが邪魔をしたのです。」

「でもその野蛮なオークが邪魔をしなかったらお前は彼を噛んで取り込んでいたんでしょ?……今もそう。俺は彼を連れてこいと言ったのに。」

「操ってしまった方が容易だと考えた結果です。」

「……ふぅん。じゃあ、さっさとその口を閉じて彼から離れてよ。」

モモのなりした何かは涎を垂らしながら未練たらたら口を閉め、俺から距離をとって跪いた。声の主がソッと俺の両肩に手を置き、フッと耳元で笑った。

「迎えに来たよ。随分と長い旅だったね。」

その声と触れた手にぞわりっと寒気が走る。
チュッとリップ音を立てて首筋に落とされた口付けが俺をあの悪夢へと誘う。
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