その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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ソレーユ視点②

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暗闇の中で眩く光る金の髪。
鋭くこちらを見つめる翠の瞳。

糸をたどり、現れたその存在にソレーユは目を疑った。

自身と彼だけの繋がりであるこの場所に違う誰かがいる事にも確かに驚いたが、ソレーユが驚いたのは目の前に存在しない筈のものが映ったからだった。

ー 絶滅した筈だ。

目の前に現れた男は昔見た古い文献に残された女神を模したような挿絵のように美しく、その耳も古い文献通りに長く尖っていた。

それは千年も前の戦争で龍族とともに絶滅したとされる生き物。
伝説上の種族。

耳長族エルフ。…文献もアテにならないものだね。生き残りがいるとは。」

声を掛けるがエルフが答える事はなかった。エルフはじっとソレーユの胸の辺りを見ると、その若々しい顔に深いシワを刻む程、不快を表した。

「…本当なら君をこの場で処分したいんだけどねぇ。そこまでの干渉は僕等の誓いルールに反する。だから僕は僕が出来る範囲の仕事をさせてもらうよ。」


腰に佩いていた剣を抜くとその鋭い刃を千切れた糸を突き刺し。
その瞬間、ずっと感じていた彼との繋がりが靄がかかったように見えなくなった。

魔力を一時的に流して繋がりをたぐり寄せようとしたが、見えない壁に阻まれて行き場のなくなった魔力がただ帰ってくるだけだった。

「……何をした。」

エルフを問い詰めようと掴もうとしたが、掴む前にゆらりとその姿は霧散した。



…………。
………………。



「……レーユ。」

「ソ……ユ。」

「ソレーユ。」

名を呼ばれ、意識を現実に戻すと目の前にひとりの男が偉そうに玉座に座していた。
その男の表情は隠せない歓喜の色に仄かに染まっており、その隣では歓喜の涙を浮かべる女がソレーユを見守っていた。

「トリスタンはこの一ヶ月間、目覚める兆しがない。よって、ソレーユ。お前を王太子に任ずる。」

男の言葉に集まっていた身なりのいい者たちが一斉に祝福の拍手を送る。
皆、一堂にその顔には笑顔の仮面を被り、その下では陰謀を渦巻かせている。

他人事のようにソレーユはどうでも良さそうにその光景を眺め、後ろに控える戦士グレイブを一瞥した。

「で、森の捜索はどうなってるの? 彼は見つかった? 」

「い、いえ。上級冒険者も雇い、しらみ潰しに探していますが、何分あの森は大きく、上位の魔物も生息しておりますので……。」

「御託はいい。こんな所で暇潰してるくらいなら君も捜索に加わりなよ。」

「で、ですが…。私は臣下として…。そ、それに今は王の御前で…。」

「俺は『行け。』と言ったんだ。」

さっきを飛ばすと、ヒュッと息を詰まらせる音とともにグレイブが『火急の用事。』で王の御前から下がる。
王はグレイブに不快感を現したが、それすらも目に入らない程、グレイブは追い詰められていた。

場の空気はグレイブの王の御前での無礼な態度にピシリと凍り付いたが、そんな空気は一切感じ取っていない女が歓喜の涙を拭い、ポンッと手を打った。

「ねぇ、あなた。ソレーユは今世の勇者として今世に現れるとされる魔王との戦い、そして王太子の政務も果たさなければならないでしょ? いっぱい、がんばるのだから、いっぱいご褒美をあげた方がいいと思うの。」

そう女、いや第二妃が天使のような笑みでさも名案を言ったかのように笑い掛けると王の表情からは不快感が消え、「名案だ。」と第二妃を褒めた。

褒められた第二妃は子供のようにはしゃぎ、隣でずっと無表情で控えていた第一妃の手を取った。

「お姉様っ。こんな晴れの日にそんな暗い顔良くないわ。きっとトリスタンも自身のお母様が暗い顔してたら悲しむわ…。」

「………。」

「ほら、笑って。私、お姉様の笑った顔大好きよ? 」

自身の幸せはみんなの幸せ。
そう疑いもしない第二妃は悪気なく、第一妃に笑顔を強要する。

その姿にソレーユは我が母親ながらある意味感心する。ここまで他人の気持ちに無知になれる人間も珍しい。

よく言えば天真爛漫。
悪く言えば無神経。

その無知を無垢と捉え、その天使のような可愛らしい容姿から蝶よ花よと愛されてきた面白みのない人間。それがソレーユの母親に対する評価。

そしてその第二妃を盲目的に愛す父も総じて面白みがない。
多くの人間の幸せをまるで踊りでも踊っているかのような軽い足取りで踏みにじり、二人だけの幸せを甘受している姿は滑稽ではあるが。


「ならば、父上。母上。褒美としてお願いがございます。」

そういい息子を演じ、第二妃のような笑みを溢せば、この王は二つ返事でソレーユの全てを肯定する。
例え、愛する妻との間の愛すべき息子の心の中に宿すものが狂気だとしてもこの王は肯定する。もう一人の息子が目覚めない理由がソレーユが原因だとしても。

「お前が思うようにやりなさい。」

肯定こそが最大の愛。
そう信じてやまないこの男はソレーユを一度だって否定した事はない。






王の御前からやっと解放されると、ソレーユはまた魔力を流し、彼の居場所を探ろうとしたが、やはり魔力は途中で帰ってきてしまう。

その度に自身から彼を隠した忌々しいエルフの男の顔が鮮明に蘇り、ゆらりと殺意がソレーユから滲み出る。
侍女の一人が殺気に当てられて倒れたがソレーユの知った所ではない。

謁見用に新しく仕立てたマントを脱ぎ捨て、侍従に寄越せと言わんばかりに手を差し出す。隣にいた侍従は慌てて、ソレーユの剣を渡し、落ちたマントを拾った。

「俺も森に出る。」

それだけ告げると宝飾品も千切り、投げ捨て、歩き去っていった。
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