その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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ソレーユ視点

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「随分とよく眠っている。」

すぅすぅと穏やかな寝息と共に布団が僅かに上下する。

さらりと質の良い髪を撫でるように梳き、少し血色の悪い頰を撫で、首筋、鎖骨をなぞり、点滴の刺された傷だらけの腕を撫で、手を握る。

ここまで触られても指の一つすらピクリとも動かないその姿はまるで人形のようだ。


「本当に兄上は可愛いらしい人だ。容姿も境遇も本当に…。」

そっとソレーユは眠り続けるトリスタンの額に口付けを落とし、名残惜しそうに手を離して、部屋を出る。しかし、扉を閉める前に鬼のような形相を浮かべた女が医者を連れ、入れ違う形で部屋に入っていった。

「ああッ!! なんて事っ。もう一週間目覚めてないって本当だったのね。そんな…。そんな…。」

部屋から遠ざかっていくソレーユの耳に届くのは目覚めなくなってしまった息子を心配する母親の声ではなく、ヒステリーを起こした女の金切り声。
物が壊れるような音も聞こえる。

「本当に兄上は可哀想で可愛らしい。」

兄を想い、胸に手を当てると兄がずっと纏っていた魔力がソレーユの中で脈打ち身体の中に溢れていく。

それは兄の命の一部であり、今は自身の身体の一部。
そして恋焦がれる彼と自身を繋ぎ続ける楔だ。

目を瞑ればあの白く光る細い糸が見える。
糸は途中で千切れているものの千切れた糸を辿れば何時だって彼に会える。


暗闇の中。
苦しそうに身体を丸めて、物欲しそうに千切れた糸を見つめる夜空色の瞳。
本能を抑え込もうとキツく結ばれた口は熟れた桃の色に彩られ、シミひとつない白い肌はきめ細かい。

本能と理性の狭間で揺れる彼はとても愚かしくも美しい。
会えば会う程、その哀れな程の強情さと芯のある美しさに心揺さぶられ、早く手に入れたいという焦燥が身を焦がす。

だが、彼は本当に強情だ。
魔力の供給を絶たれて日に日に命の灯火が小さくなっているというのに決してこの糸を、この手を取ろうとしない。


ー だが、それもそろそろ終わりか。

もう彼の限界はすぐそこ。
本当は本能に負けて、意地も誇りも全て捨ててソレーユ自身を欲する様が見たかった。
そうすれば心すらも縛り付けられる。
この主従の繋がりだけでなく、もっとより深い楔で何処かに逃げよう等思う隙すらない程に…。

ー まぁ、人生って上手くいかないものだから。

ソレーユはひとり苦笑を浮かべる。
上手くいかなかったのは残念だが、それよりも勝るのは早く会いたいという想い。


さて、迎えに行くかと白く光る糸に集中する。
しかし糸を辿った先に居たのは愛しい彼ではなかった。
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