その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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心躍る

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痛い。苦しい。辛い。寒い。

命が擦り減っていく感覚に耐えながらゾンビ(仮)達の攻撃を交わし、狼野郎を沈める為の好機を待つ。

急に迎えた限界に舌打ちしながら狼野郎の拳を捌いた時、ふと空が眩く光った。


それは降り注ぐ光の雨。

パチパチと音を立てながら落ちてくるそれは俺の居る場所を避けて、ゾンビ(仮)達だけに降り注ぐ。

光の雨に当たった奴は身体を痙攣させて後退り、煩かった外野の攻撃が止む。

何事かと振り向くとそこには光を帯びた弓を勇ましく引く、ラヨネの姿があった。


矢が空を裂き、敵を射る。
先程のように全体に降り注ぐような量ではないものの確かにそれはあの光の雨と同じように力強く放たれてる。

「力を貸してくれるなら最後まで貸してよ!! 何で途中で放り出したの!? 」

手伝ってくれたのはありがたかったけどねっ!! と、何かに軽くキレながらもその顔は吹っ切れたような自信に満ちたいい表情になっていた。

その姿に目を丸くして驚き、フッと思わず笑みを溢す。
この短時間でラヨネの中で何があったのかは知らないが、他人の物差しで自身を卑下して泣くだけの少年はそこにはもういない。

それが嬉しくて、でも何故か少し寂しくて。


ー 全く、親の境地かよ…。

そんな複雑な親心にむず痒さを感じて、ポリポリと頭を掻く。
今は自身のやるべき事はラヨネの成長に想いを馳せる事じゃない。

折角、ラヨネが男を見せたんだからこっちが男を見せる番だろう。


フッと軽く息を吐き、狼野郎を見据えると狼野郎の怒りと歓喜に染まっていた面に焦燥感の色が浮かぶ。

「なんでだ。なんでだ。なんでだよッ!! 半獣人の癖に。草食階級の癖に。何でッ。何で!! 」

まだ勝負はこれからだというのに劣等感と嫉妬丸出しの卑屈な表情がラヨネを睨む。

「お前は俺より下なんだよッ。そうじゃねぇといけない。そう決まってる。肉食階級が上で獣人より半獣人が劣ってんだ。そうじゃなけりゃあ、いけない!! 」

ギリギリと歯軋りをして「そうだろ。お袋っ!! 」と空に向かって吠える。
その姿に心底嫌気がさして、溜息をつくと狼野郎が目を血ばしらせて拳を振るう。

「そうやって。そうやってお前も俺を馬鹿にするのか!! 」

「別に馬鹿にしちゃあいねーよ。」

「煩い。煩い。煩い!! 」

拳を捌き、本当に馬鹿馬鹿しいともう一度溜息をつく。

獣人達のくだらない思想には本当に嫌気がさす。

弱い。劣っていると決めつけて、虐げて、ふんぞりかえる肉食の獣人達。
そして、自身は弱いのだと劣っているのだと疑いもしない草食の獣人に、半獣人達。

その全てが馬鹿馬鹿しい。
結局はコイツもラヨネと同じその思想に囚われて、自分を見失ってるだけなんだろうな。


捌いた狼野郎の拳を掴み、そのままこちらに引き寄せる。ニヤッと歓喜の表情を浮かべる感情がフッと浮上して噛みつこうとしたが、アッパーを顎に喰らわし、吹っ飛ばす。

「別にラヨネは劣っちゃいねぇよ。半獣人だろうが、草食の獣人だろうが、テメェを貫ける奴が強ぇんだよ。」

吹き飛ばされた狼野郎はすぐに宙でくるりと態勢を整えて着地すると、怒りのままに走ってくる。その握られた拳はやっと目の前の俺に向いているように見えた。

拳を交わそうとすれば、その拳は囮で途中でくるりと回転し、裏拳がガラ空きだった脇に放たれる。脇を咄嗟にガードして蹴りを入れると蹴りを皮一枚で交わしてまた拳を繰り出してくる。

ー やっぱ、喧嘩はこうじゃないとな。


ここ最近、ここまで心躍る喧嘩はなかった。どちらが勝つか分からない程の接戦。絶対にお前だけには負けたくないと、勝利への渇望を感じされる拳。

嬉しさと楽しさににやけそうになる顔を引き締めるがつい表情が緩んでしまう。
その俺の顔を見て、狼野郎が眉間に皺を寄せて唸るように叫んだ。

「何がおかしい? そんなに俺が滑稽か!! お前も俺を見下してんのかッ。」

「別に見下してなんかねぇよ。…ただお前みたいに強い奴と本気の喧嘩出来て血が滾ってるだけだ。」

「強…い? 」

その言葉に狼野郎の顔から怒りがフッと何処かへ行き、戸惑いが広がる。その瞬間、身体から少し力が抜け、腹の当たりがガラ空きになった。

「お前の人を見下すような生き様は好きにはなれねぇが、お前との本気の喧嘩は楽しかった。」

最後の力をありったけ込めて狼野郎の腹に拳を放つ。

拳はスカッとする程、防がれる事なく綺麗に入り、うめき声とともに狼野郎は白目を剥き、地面に倒れた。
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