その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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心の中に潜むもの

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「コタくん…。実は今仕事で行き詰まっていてねぇ。」

「そう…なのか。」

「そこで君に頼みたい事がある。」

あまりに声色も真剣でゴクリと息を呑む。
食事をどかし、設計図を広げると変態が商品名を指差した。そこには『魔物姦シリーズ:屈強なオークに処女を奪われて』と目に入れるのも忌々しい字面が並んでいた。

俺の膝に座っていたラヨネの変態を見る目が一層冷え冷えとしたものへと変わっていく。俺も俺で次の展開が読め、頭が痛くなった。

「君の舎弟のモモくんを是非とも僕に会わせて欲しいんだ。」

ダンッと食卓を叩き、「本物さえ、本物さえ見れれば脱せられる…。」と悔しそうな表情を浮かべる変態。チラリと変態の後ろにある窓を見るとモモが中の様子を窺っていて、どうやら話が聞こえたようで必死に首を横に振っている。

モモは何時も俺を変態の家まで迎えにくるが決して家の中に入る事はない。

俺には理解出来ない性癖を持つ(男の好み)モモと変態を極めたど変態。
二人は俺からすれば気が合いそうなのだが、モモが一方的に変態を拒絶して変態に一切近付こうとしない。…そもそもモモの種族自体がこの変態を避けているきらいがある。他の種族と違いお供物する時すら出来るだけ変態の家から距離を取っているからな…。

ー 何か…したんだろうな…。

具体的に何をしたかは分からないがこの変態がモモの種族に何かやらかした事だけは分かる。


「無理…だな。諦めろ。」

必死にモモが拒絶しているのでお断りを入れるとあからさまに窓の外のモモの表情に感謝の意が浮かぶ。そして変態は「やっぱり、ダメか。」とガックリと肩を落とした。…お前は本当に何をしたんだ。

ガッカリしているが、しかし変態の目には諦めの色はない。
設計図をしまうとドリルのような形をした忌々しい玩具達を部屋から持って来て、性懲りも無く知りたくもない忌々しい玩具の説明を嬉々としてその口から吐く。

「こうなればどんどん試して試行錯誤するしかないッ。これはね、オークのナニを模したディルドでねぇ。挿れて擦ると段々とディルドが膨張して中に仕込まれている白い粘質性のある媚薬が中に放たれる仕組みになってるんだよ。」

「聞いてねぇよ。」

「そこでコタくんの出番だよ!! コタくんがこのオーク型のディルドをそのお尻で試しっ……て、イッタい!? 」

予想通りの展開に拳を振り上げたはいいものの拳は振り下ろされる事なく、上がったまま。俺が殴るよりも先にラヨネが忌々しい玩具を持った変態の手に噛み付いていた。変態の手からは赤いものが噴いていた。

「その汚物よりも汚い手でコタに触らないでくれる? 今日の生ゴミと一緒に今直ぐ焼却されなよ。」

「お、汚物より汚い手!? うぅっ…。コタくんより物理攻撃が容赦がない上に言葉の刃がエゲツない切れ味。…もうヤダ。ミドリくん今直ぐ帰ってきて!! 僕の味方は君しかいない。」

「ミドリもお前の味方ではねぇよ。」

回復魔法でさっさと回復した手を庇いながらワッと泣き真似をする変態。
これに付き合うとかなり長くなる上に、付き合うと付き合うとで調子に乗るので基本無視だ。

とっとと食べ終わった朝食を片付けて俺はカチコミに行く。店の手伝いも基本午後なので午前は自由時間。構う時間が勿体ねぇ。

まだしつこく泣き真似をする変態を無視して部屋を出ようとすると、ニュッと変態の手が肩を掴んだ。

「コタくん。薬。」

なんだと振り向くと魔力増強剤と薬茶の入った竹の水筒を変態が手渡してきた。薬も薬茶ももう飲んだぞと返そうとするとより強く押し返してきた。

「朝だけじゃ君の身体はもう足りない。一日四回。咳き込んだり調子が悪いようならその都度。」

本当は大人しく寝てて欲しいんだけどねぇ、と苦い表情を浮かべて変態が溜息をついた。
その手渡された薬の量に自身の身体がどれ程弱っているか改めて実感する。

身体が何時も通り動けているのはこの薬のおかげ。この薬がなければきっと、俺はもうここにはいないのだろう。


『ひとりにしないデ。』

小さな緑色の手が弱々しく肩を掴む。
ポタポタと頰を濡らす涙。またひとりになってしまう絶望と恐怖。

孤独にしないと約束した。
帰ってくるまで待ってると約束した。

その約束を違える事はしたくない。
そう思っていても捨てられないプライドがある。だからこそ、この状況を自らの手で脱しなければいけない。己を通すなら最後まで諦めてはいけない。

だけど、どうにもならなかったら?


「コタ? 」

山吹色の瞳が心配そうにこちらを見上げる。小さな白い手が俺の服を縋るように掴んでいる。

「コタは病気なの? 」

ミドリ並みに小さいが姿形は全く違うのに、その目はあの時のミドリと同じだった。それが無性にやるせなくて、なんでこんなに世界は残酷なのだろうと唇を噛んだ。

ー お前もなくしてるのか…。

その幼い身体には受け止め切れない程の大切なものを沢山。


「ちょっと無茶が祟ってな。…まぁ、人より頑丈に出来てっから心配すんな。」

行くぞと頭を撫でると少し不安そうではあったが、頭を撫でた手をギュッと握り、ピッタリと付いてくる。

ー 弱気になってる時じゃねぇだろ。

少なくともまだその時までには猶予がある。
無くったって意地で持たせてやる。そのくらい根性持ってやるべきだ。約束したなら。苦しませたくないなら。


「モモッ。今日こそ白龍を引き摺り出すぞ。」

「ふぁ!? ちょっ、コタの旦那。部屋の中ば叫ばんで。ばれちゃう。」

「えっ!? 今、モモくんいるの!! …モモくん。モモくんッ。怖い事は何もしないからちょっと出ておいで!! 出てきたらお礼にこの可哀想なクラーケンウィンナーあげるから。」

「ひゃあぁあああッ!!? バレたッ!!! エルフの皮ば被った悪魔ぁぁああッ。」

「……マジでお前はモモ達に何をしたんだ。」

窓の外にいたモモが脱兎の如く、逃げていく。

少し気合を入れる為に意思表明をしたらとんでもない事になった。取り敢えず、水を得た魚のように逃げたモモを追いかけようとした変態は床に沈めたが。


「シンプルにきしょい。」

「うぅ…。シンプルが地味に一番心に堪える。酷い。……コタくん。コタくんッ!? お宅のお子さんの教育はどうなっているのっ。」

「寧ろ、お前がどんな教育を受けたのか。俺はお前の母親を問いただしてぇよ。」

「僕、エルフなのに…。」と、グスグスと地味に癪に触る泣き真似をする変態。そんな変態を誰も心配する事などなく、寧ろ侮蔑の目で置き去りにしたのだった。
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