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着物を着てみましょう①
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本格的にレッスンを続けるにあたって連絡先を交換した。
僕の方が年下なんだし玲と呼び捨てでいいですよ。と言ったのだが、じゃあ僕も樹で。とお互いが名前で呼び合うという結果で譲歩した。
忙しくなる日々に、樹とのやりとりは唯一の癒しだった。
「うぉーい川瀬!展示パネルの初稿上がってるから校正よろしく。」
「はーい。他にWチェックいります?」
「いや、一旦俺の方で見たしこれに関してはとりあえずは大丈夫。直し入りそうなら教えて。」
「はいはーい。了解でーす。」
「どうした川瀬、入稿前なのに元気じゃん?いつもならエナドリキメてるのに。」
そう話しかけてきたのは西谷だ。
お茶の際決まって世間話をするのでどうしても毎日仕事が忙しい…になってしまう。
焦って余裕がない自分を樹に見せる事を考えたら自然と冷静でいられた。
「私生活が充実してるって顔してるな。」
実際のところ充実しているのは間違いない。ただそれが西谷が思っている内容とは違うけれど…。
「デジタルデトックスみたいなものだよ。いいぞ、デジタルからの解放。」
「なんだぁ~?今度彼女の写真見せろよー。」
「だから彼女なんていないってば。」
彼女どころか、女でもないんだけど。
ーーーー
「では、お茶を出されたら頂戴いたしますと軽くお礼をしてください。指先は揃える感じで…」
「頂戴いたします…」
「今は柄が玲さん側に向いているからこのまま柄に口をつけないようにしてください。二度右回りで半回転をして亭主側に柄が見えるようにしましょう。」
「45度は目安なのでぴったりでなくても、多少ずれていても問題ないです。」
「ああいった柄が無い器はどうするんですか?」
玲は棚に飾ってある織部焼きを指差す。
「ああいったものは亭主がここを正面としたい気に入った部分が正面になります。けど大体が釉薬が特徴的な垂れ方をしているかな。ざっくりとした説明ですみません。」
「それも何となくここが正面かな?で大丈夫ですか?」
「はい、それに関しては正解は無いですからね、出されたらとりあえず同じく半回転を2回と思って大丈夫です。」
「お茶を飲み干したら器を拝見して楽しみます。両肘をついて両手で包み込むように器を持ち上げてください。」
「こんな感じですか?」
「はい。そしたら何か感想を言ってあげてください。もし何も思いつかない場合は季語を選ぶといいですよ。」
「季語って初春の…みたいなやつですよね。わーそれも覚えるとなると大変だぁ。」
「例えば、可愛らしい桜の模様ですね。でもいいんですよ。気負わず褒めてあげてくださいね。」
今日は久しぶりのお茶の日だ。月に2回、その日が来るのが待ち遠しい。
「玲さん、お疲れみたいですね。お仕事忙しいんですか?ちゃんとお休み取ってます?」
一通り終わって一息ついていたが樹に目元のクマを心配される。
「今繁忙期なんですよ。会社のイベントに向けて準備で忙しくて…」
「ああ、ネットの経済ニュースで見ました。大型のEXPOであの話題になっていた朝ドラに出演していた女優さんがゲストとかで…あの手のイベントでタレントさんを招くのは初だとか。」
「そうなんです。僕もあれを見てお抹茶に興味を持っていつか挑戦してみたいなと思ったんです。」
「そうでしたか。いや、しかしあの時は大変でしたよ…レッスンの問い合わせが凄くて僕が昔教わっていた先生からヘルプの連絡が来て。実はあのお茶の演技指導をしたのは僕の先生なんですよ。だから余計にパンクしてしまって…」
「えぇ!そうだったんですか!!ニュースで殺到とだけは見かけました…メーカーのサーバーが一時停止したとかで。でもあのシーンめちゃくちゃ感動しましたよ!けど感激だな。僕がお茶に挑戦するきっかけとなった番組が実は樹さんと関係があったなんて。」
「あの方は本当に素晴らしい女優さんでしたね。一度キャストさんへ先生が振る舞うから僕もお運びとしてお手伝いに行ったんですが、すごく物腰が柔らかくて。ですがあの若い方は…」
といいかけて樹は口籠る。
こういうのって巡り合わせですからね…と何やら濁されてしまった。
僕の方が年下なんだし玲と呼び捨てでいいですよ。と言ったのだが、じゃあ僕も樹で。とお互いが名前で呼び合うという結果で譲歩した。
忙しくなる日々に、樹とのやりとりは唯一の癒しだった。
「うぉーい川瀬!展示パネルの初稿上がってるから校正よろしく。」
「はーい。他にWチェックいります?」
「いや、一旦俺の方で見たしこれに関してはとりあえずは大丈夫。直し入りそうなら教えて。」
「はいはーい。了解でーす。」
「どうした川瀬、入稿前なのに元気じゃん?いつもならエナドリキメてるのに。」
そう話しかけてきたのは西谷だ。
お茶の際決まって世間話をするのでどうしても毎日仕事が忙しい…になってしまう。
焦って余裕がない自分を樹に見せる事を考えたら自然と冷静でいられた。
「私生活が充実してるって顔してるな。」
実際のところ充実しているのは間違いない。ただそれが西谷が思っている内容とは違うけれど…。
「デジタルデトックスみたいなものだよ。いいぞ、デジタルからの解放。」
「なんだぁ~?今度彼女の写真見せろよー。」
「だから彼女なんていないってば。」
彼女どころか、女でもないんだけど。
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「では、お茶を出されたら頂戴いたしますと軽くお礼をしてください。指先は揃える感じで…」
「頂戴いたします…」
「今は柄が玲さん側に向いているからこのまま柄に口をつけないようにしてください。二度右回りで半回転をして亭主側に柄が見えるようにしましょう。」
「45度は目安なのでぴったりでなくても、多少ずれていても問題ないです。」
「ああいった柄が無い器はどうするんですか?」
玲は棚に飾ってある織部焼きを指差す。
「ああいったものは亭主がここを正面としたい気に入った部分が正面になります。けど大体が釉薬が特徴的な垂れ方をしているかな。ざっくりとした説明ですみません。」
「それも何となくここが正面かな?で大丈夫ですか?」
「はい、それに関しては正解は無いですからね、出されたらとりあえず同じく半回転を2回と思って大丈夫です。」
「お茶を飲み干したら器を拝見して楽しみます。両肘をついて両手で包み込むように器を持ち上げてください。」
「こんな感じですか?」
「はい。そしたら何か感想を言ってあげてください。もし何も思いつかない場合は季語を選ぶといいですよ。」
「季語って初春の…みたいなやつですよね。わーそれも覚えるとなると大変だぁ。」
「例えば、可愛らしい桜の模様ですね。でもいいんですよ。気負わず褒めてあげてくださいね。」
今日は久しぶりのお茶の日だ。月に2回、その日が来るのが待ち遠しい。
「玲さん、お疲れみたいですね。お仕事忙しいんですか?ちゃんとお休み取ってます?」
一通り終わって一息ついていたが樹に目元のクマを心配される。
「今繁忙期なんですよ。会社のイベントに向けて準備で忙しくて…」
「ああ、ネットの経済ニュースで見ました。大型のEXPOであの話題になっていた朝ドラに出演していた女優さんがゲストとかで…あの手のイベントでタレントさんを招くのは初だとか。」
「そうなんです。僕もあれを見てお抹茶に興味を持っていつか挑戦してみたいなと思ったんです。」
「そうでしたか。いや、しかしあの時は大変でしたよ…レッスンの問い合わせが凄くて僕が昔教わっていた先生からヘルプの連絡が来て。実はあのお茶の演技指導をしたのは僕の先生なんですよ。だから余計にパンクしてしまって…」
「えぇ!そうだったんですか!!ニュースで殺到とだけは見かけました…メーカーのサーバーが一時停止したとかで。でもあのシーンめちゃくちゃ感動しましたよ!けど感激だな。僕がお茶に挑戦するきっかけとなった番組が実は樹さんと関係があったなんて。」
「あの方は本当に素晴らしい女優さんでしたね。一度キャストさんへ先生が振る舞うから僕もお運びとしてお手伝いに行ったんですが、すごく物腰が柔らかくて。ですがあの若い方は…」
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