74 / 339
第四章 月虹
終戦工作
しおりを挟む
という訳で早速、瑞鶴達はチェ・ゲバラを呼びつけて戦争を終わらせる方法について議論することにした。キューバの最高指導者フィデル・カストロは忙しく、彼女らに構っている時間はないらしい。
「――君達がこの戦争を終わらせてくれるのならば、クーバとしては君達に可能な限りの支援を行おう」
「それは国家としての意思だと捉えていのかしら?」
「ああ。フィデルが約束してくれているよ」
「あ、そうなの」
裏切られる可能性もあるしキューバの力では日本に対抗できないかもしれないが、この言葉を信じないことには話を進めることもできない。瑞鶴は一先ずゲバラの言葉を信用することにした。
「で、どうすればいいと思う? 戦争を終わらせるには」
「いやー、そんなことを僕に聞かれてもな。それが分かってたらもうやってるよ」
「ゲバラ、我らの力を如何に使うか考えよ」
ツェッペリンは偉そうに命令する。
「僕はそんなに船魄については詳しくないんだけどなあ。第一、戦争を終わらせるとは何なんだ? 例えば僕達がアメリカに降伏すれば戦争は終わるけど」
「それはダメです!」
妙高は反射的に叫んでいた。
「それは何故かな?」
「アメリカに侵略を受けた国は徹底的に植民地にされると、あなた達も知っている筈です。戦争を終わらせるとは、キューバが勝利することです」
「ああ、その通りだ。まずはそれを目標にして考えよう」
戦争を終わらせるとはキューバが勝利することである。それ以外はあり得ない。これを大前提にして考えなければならない。
「キューバを勝利させる方法、ですか。しかし、正直言って陸上戦力が貧弱な以上、それは厳しいのでは……」
高雄は悲観的であった。海上戦力においては帝国海軍が圧倒的に優勢であるものの、陸上戦力においては帝国陸軍よりアメリカ陸軍の方が優勢である。戦争は海軍だけでどうにかなるというものではないのだ。
「うーん、じゃあ、アメリカに輸送船を全部沈めて、補給を断てばいいんじゃないかな?」
妙高は提案してみた。アメリカ本土とキューバの間で船が行き来できなければ、キューバに渡ったアメリカ兵は飢え死ぬしかないだろう。妙高はアメリカ人を殺すことに大した抵抗はなかった。
「それが上手くいけばいいでしょうが……ゲバラさん、どうでしょうか?」
「フロリダとハバナの間の航路は、アメリカ海軍が絶対国防圏としていて、大量の機雷をばら撒いていたり、海上要塞を幾つも配置している。いくら君達でもこれを完全に撃滅することは不可能だろうね」
「そうですかあ……」
妙高はガックリと俯いた。
「やっぱり私達だけで戦争を終わらせるなんて無理かもしれないわね」
「わたくし達だけで帝国海軍にもできていないことをやるというのは、確かに無理があったのかもしれませんね……」
そもそもたったの4隻で戦争を終わらせれるのなら、とっくに帝国海軍がアメリカを蹴散らしていることだろう。
「なれば、搦手を使うしかないということだな?」
「そういうことになるけど、ツェッペリンは何か提案があるの?」
「いや、特にない」
「使えない奴ねえ」
「搦手というのなら、原子爆弾というものを使えばよいのではありませんか?」
高雄は先程却下になった案を再び提案した。瑞鶴は怪訝な顔をして尋ね返す。
「あれを手に入れるのは無理だって話になったじゃない」
「強奪せずとも帝国海軍に原子爆弾を供与してもらって、アメリカに落とすと脅せばよろしいのでは? もちろん本当に使うつもりなどありませんが」
「帝国が私達に原子爆弾をくれるって? どういう理屈で?」
「わたくし達にではなくキューバに原子爆弾を供与してもらえばよいかと。ゲバラさん、どうですか?」
「原子爆弾を供与、か……。まあ君達が妨害した艦隊が僕達に原子爆弾を送り届ける艦隊だったんだが」
「あっ……」
後の祭りだが、瑞鶴が第五艦隊を襲撃していなければ原子爆弾は自然とキューバの手元に渡っていたのであった。もっとも、キューバに運び込まれたからと言ってキューバが自由に使えるという訳ではないのだが。
「まあつまり、上手いことすれば原子爆弾を供与してもらえる可能性はあるということだね。フィデルに話を通して日本と交渉してもらうよ。君達が使わずとも、原子爆弾は我が国にとって必要だ」
「ありがとうございます」
現状で使える搦手と言ったらこのくらいであろう。取り敢えずはキューバ政府の交渉次第であり、瑞鶴達にできることはなかった。
と、その時であった。キューバ軍の兵士が焦った様子で駆け込んできて、ゲバラに何かを耳打ちした。
「どうしたの、ゲバラ?」
「どうやら、日本軍が君達を狙っているようだ。君達を引っ捕らえるのに協力しろと言ってきた」
どうやら瑞鶴達の動向は向こうに筒抜けらしい。
「た、大変じゃないですか! どうするんですか、瑞鶴さん!?」
「いや、私に聞かれても困る」
「手は打ってみるが、現状、我が国が日本と表立って対立する訳にはいかない。彼らが本気を出してきたら、止める手段はないんだ。すまない」
ゲバラは悔しそうに言った。ソ連の支援もあるとは言え、日本の支援がなければキューバはたちまちアメリカに滅ぼされてしまうだろう。今のキューバの日本に抗う力はなかった。
「――君達がこの戦争を終わらせてくれるのならば、クーバとしては君達に可能な限りの支援を行おう」
「それは国家としての意思だと捉えていのかしら?」
「ああ。フィデルが約束してくれているよ」
「あ、そうなの」
裏切られる可能性もあるしキューバの力では日本に対抗できないかもしれないが、この言葉を信じないことには話を進めることもできない。瑞鶴は一先ずゲバラの言葉を信用することにした。
「で、どうすればいいと思う? 戦争を終わらせるには」
「いやー、そんなことを僕に聞かれてもな。それが分かってたらもうやってるよ」
「ゲバラ、我らの力を如何に使うか考えよ」
ツェッペリンは偉そうに命令する。
「僕はそんなに船魄については詳しくないんだけどなあ。第一、戦争を終わらせるとは何なんだ? 例えば僕達がアメリカに降伏すれば戦争は終わるけど」
「それはダメです!」
妙高は反射的に叫んでいた。
「それは何故かな?」
「アメリカに侵略を受けた国は徹底的に植民地にされると、あなた達も知っている筈です。戦争を終わらせるとは、キューバが勝利することです」
「ああ、その通りだ。まずはそれを目標にして考えよう」
戦争を終わらせるとはキューバが勝利することである。それ以外はあり得ない。これを大前提にして考えなければならない。
「キューバを勝利させる方法、ですか。しかし、正直言って陸上戦力が貧弱な以上、それは厳しいのでは……」
高雄は悲観的であった。海上戦力においては帝国海軍が圧倒的に優勢であるものの、陸上戦力においては帝国陸軍よりアメリカ陸軍の方が優勢である。戦争は海軍だけでどうにかなるというものではないのだ。
「うーん、じゃあ、アメリカに輸送船を全部沈めて、補給を断てばいいんじゃないかな?」
妙高は提案してみた。アメリカ本土とキューバの間で船が行き来できなければ、キューバに渡ったアメリカ兵は飢え死ぬしかないだろう。妙高はアメリカ人を殺すことに大した抵抗はなかった。
「それが上手くいけばいいでしょうが……ゲバラさん、どうでしょうか?」
「フロリダとハバナの間の航路は、アメリカ海軍が絶対国防圏としていて、大量の機雷をばら撒いていたり、海上要塞を幾つも配置している。いくら君達でもこれを完全に撃滅することは不可能だろうね」
「そうですかあ……」
妙高はガックリと俯いた。
「やっぱり私達だけで戦争を終わらせるなんて無理かもしれないわね」
「わたくし達だけで帝国海軍にもできていないことをやるというのは、確かに無理があったのかもしれませんね……」
そもそもたったの4隻で戦争を終わらせれるのなら、とっくに帝国海軍がアメリカを蹴散らしていることだろう。
「なれば、搦手を使うしかないということだな?」
「そういうことになるけど、ツェッペリンは何か提案があるの?」
「いや、特にない」
「使えない奴ねえ」
「搦手というのなら、原子爆弾というものを使えばよいのではありませんか?」
高雄は先程却下になった案を再び提案した。瑞鶴は怪訝な顔をして尋ね返す。
「あれを手に入れるのは無理だって話になったじゃない」
「強奪せずとも帝国海軍に原子爆弾を供与してもらって、アメリカに落とすと脅せばよろしいのでは? もちろん本当に使うつもりなどありませんが」
「帝国が私達に原子爆弾をくれるって? どういう理屈で?」
「わたくし達にではなくキューバに原子爆弾を供与してもらえばよいかと。ゲバラさん、どうですか?」
「原子爆弾を供与、か……。まあ君達が妨害した艦隊が僕達に原子爆弾を送り届ける艦隊だったんだが」
「あっ……」
後の祭りだが、瑞鶴が第五艦隊を襲撃していなければ原子爆弾は自然とキューバの手元に渡っていたのであった。もっとも、キューバに運び込まれたからと言ってキューバが自由に使えるという訳ではないのだが。
「まあつまり、上手いことすれば原子爆弾を供与してもらえる可能性はあるということだね。フィデルに話を通して日本と交渉してもらうよ。君達が使わずとも、原子爆弾は我が国にとって必要だ」
「ありがとうございます」
現状で使える搦手と言ったらこのくらいであろう。取り敢えずはキューバ政府の交渉次第であり、瑞鶴達にできることはなかった。
と、その時であった。キューバ軍の兵士が焦った様子で駆け込んできて、ゲバラに何かを耳打ちした。
「どうしたの、ゲバラ?」
「どうやら、日本軍が君達を狙っているようだ。君達を引っ捕らえるのに協力しろと言ってきた」
どうやら瑞鶴達の動向は向こうに筒抜けらしい。
「た、大変じゃないですか! どうするんですか、瑞鶴さん!?」
「いや、私に聞かれても困る」
「手は打ってみるが、現状、我が国が日本と表立って対立する訳にはいかない。彼らが本気を出してきたら、止める手段はないんだ。すまない」
ゲバラは悔しそうに言った。ソ連の支援もあるとは言え、日本の支援がなければキューバはたちまちアメリカに滅ぼされてしまうだろう。今のキューバの日本に抗う力はなかった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。
一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか?
おすすめシチュエーション
・後輩に振り回される先輩
・先輩が大好きな後輩
続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。
だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。
読んでやってくれると幸いです。
「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195
※タイトル画像はAI生成です
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる