拾われた後は

なか

文字の大きさ
上 下
45 / 53

45.待ってもらいます

しおりを挟む
   嬉しくて泣きそうな顔で笑いかけると、カイルさんが体を起こした。そのまま、僕の顔の両脇に肘をつき、覆い被さられる。体格差もあり、カイルさんに閉じ込められているみたい。

「……ほんとに無事でよかった。」

   そう言って目を細めて僕を見る。不安そうな瞳に、胸が詰まって言葉が出なかった。
   ゆっくりとカイルさんの顔が近付き、唇が重なった。優しく啄むみたいに、何度も口付けられる。

   名前を呼ばれて目を開けると、愛おしそうな表情で僕を見つめる姿があった。名前をどうつけて良いのか分からない感情が、溢れ、涙となって頬を伝った。昨日から僕は泣き虫だ。

   右頬を指の背で撫でられ、ぞわりとした感触に軽く肩をすくめる。指が耳や首筋に這わされて、感じたことないものが体に走り、小さな声が出た。

   離れていた唇が戻ってきて、深く口付けられる。力の抜けた僕の唇の隙間から、熱い舌が入ってきた。

「んっ。」

   くぐもった声が漏れたけど、宥めるように首筋を撫でられ、体が弾む。
   カイルさんの舌が、左頬の傷を舐め、歯列をなぞる。くちゅ、といやらしい音が聞こえる。どうしていいのか分からず、カイルさんのシャツを掴むが、手に力が入らない。
   奥で固まっていた舌を捕らえられ、翻弄される。

   初めての気持ちよさに、頭の中が沸騰してるみたい。

   握っていた手が力をなくして、投げ出された。パジャマのボタンが外され、胸の傷を舐められる。

「ぅんっ。」

   言葉にならない声がもれる。何度か往復して、カイルさんの舌が離れた。ぼんやりとそれを目で追っていると、もう一度触れるだけの口付けが落ちてくる。

「…カイルさん……。」

   溜め息みたいな声しか出なかったけど、名前を呼ぶと、カイルさんはぐっと何かに耐えるような顔をした。

   渋い顔でボタンを留め直し、僕の上から退いて横になった。でもすぐに、その腕に引き寄せられてしまう。僕は放心状態のままで、その腕におさまった。

「嫌だったか?」

   問われて、小さく首を振る。
   男の人が相手なのに、全然嫌悪感がない。ただ、恥ずかしいだけ。自分の気持ちがなんだか不思議に思えた。カイルさんからほっとした雰囲気がした。

「よかった。しかし、ハルカはどこも小さいからな、これ以上はせめて成人するまでは待つよ。」

   カイルさんはそう言って、髪の毛に口付けた。まぁ、耐えられたらだけどと、小さい声が聞こえた。


   ん?成人て20才のこと?こちらの成人?
  期待してるみたいで、どっち、なんて聞けない。それにまだ成長期だから、もう少し大きくなるはずだけど、2ヶ月じゃそう変わらないんじゃないかな。
   それに耐えられないとどうなっちゃうの?

   ぐるぐる考えている僕を、くすりとカイルさんが笑う。


   しかし、いつまでもベッドにいては、皆のところに行けない。とりあえず、この件は保留だ。朝から恥ずかしいし、頭から追い出そう。
   僕はカイルさんの腕から抜け出しだした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)

柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか! そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。 完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

【BL】小さな恋の唄…盲目の私が恋をしたのは…

梅花
BL
街の薬師をしているティアは、幼い頃に負った病気のせいで目が見えない。 ティアの世界は音と匂いでできているのだ。 そんな視力を失ったティアを見初めたのは…この国の…。 純愛をテーマにしていきたいと思います。 現在、諸事情により配信が止まっています。 再開の目処が立ちませんが、一部だけでもどうぞ。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

処理中です...