拾われた後は

なか

文字の大きさ
上 下
27 / 53

27.友人のこと2

しおりを挟む
   
※エミリオサイド



「冬がくれば16だそうだ。」

  持っていたグラスを落としそうになり、慌てて力を入れた。カイルもなんだか複雑そう。

「…えーと、そうだ!もしかして、彼の世界では数の数え方が違うとか。」

「いや、俺も確かめた。時間の単位も、1年の区切りも同じだ。ただハルカの国では20で成人らしい。だからハルカは子供だ。」

   そんな子供を主張しなくても。


   この国では16で成人とされている。一般的には仕事に就くのもそれくらいだ。軍の養成所は2年で、成人してからじゃないと入れないから、18で卒業して軍属になる。王宮に勤める文官系も似たような感じだ。
  個人差はあるが、18.9位までに体は大きくなる。しかし、16でほとんどが大人と同じくらいに成長する。

   11.2くらいかと思っていたが、まさか15だったとは。

「あ、じゃあさー、来年俺が嫁にもらおうか?」

「あぁ?」

  いきなりブリザードが吹いた。さっきより怖い。
  これ剣持ってたら手が掛かってたね。

「やだ、お父さん落ち着いて。ほら、俺、三男だから家継ぐとかないしー、一応貴族で少佐だし、優しいし、結構優良物件だと思うんだけどなぁ。」

   軽く言い募ると、更に空気が冷たくなった。威嚇のオーラがすごい出てて、友人でも流石に怖いよ。尻尾巻いちゃいそうだよ?

「ま、考えといてよ。それよりさぁ。前に庭でお昼食べてたカモのあれ!ハルカくんはもちろん知らないんだよね?」

   自分が蒔いた種だが、無理矢理話を変える。むっとした顔だけど、カイルの雰囲気が変わった。

「あれは美味かった。」

「いや、そうじゃなくてさー。にやけちゃって。
   狼のオスが自分で狩った獲物を、想う相手に渡すのは求婚の意味であって、それを相手が自ら調理して、一緒に食べると承諾ってやつ。お前の獲物は俺が一生獲る!命を分け合う!みたいな。
   確かに古いしきたりで、今はあまり知ってる奴も少ないけど。そんな意味なわけ?」

「……ただ気に入っているようだったから、食べさせてやりたかっただけだ。」

   歯切れ悪いけど、無意識だったわけね、この友人は。まぁ、ハルカくんもそんなこと知らないだろうし、無効でしょ?
   俺は苦笑して酒を飲んだ。


   それから、彼があの料理を作ることになった経緯を根掘り葉掘り聞いて、自分では気付いてないカイルの表情を酒の肴にしてみた。面白くて酒が進むね。
   かわいくてたまんない顔してますけど、お父さん自覚ないな。しかし、文化や風習が違うとはいえ、健気で胸を打たれちゃうね。

「かわいいねぇ。やっぱ嫁にちょうだい。」

   そう言うと、案の定グラスを取り上げられ、もう帰れと追い出された。ひどい。
   見送ってくれたマリアをデートに誘ったら、いつものように素気無くされた。
   2人してひどい。
   

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)

柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか! そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。 完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

処理中です...