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15章 祈り(前)
13話 告白(後)
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「……俺は、奴によって人生を二重にも三重にも歪められました。ある日突然家族と引き離されて、時間の流れの違う異国に飛んで……幸い親切な人に拾われたので道を誤ることなく生きてこられましたが、それは結果論でしかない。突然変わった環境に何も順応できず、俺はじわじわと壊れました。……精神的苦痛は全て兄になすりつけて憎んで憎んで……日記には、兄への恨み言ばかりを書いた……」
――あの夏の日の兄弟喧嘩でジャミル相手に吐き出したものと比べ、より深い感情を伴う"告白"。
『日記』のくだりで横にいるセルジュが目を閉じて少しうつむいた。
俺達が捕まった時イリアスが『押収したカイルの日記を読んでいる』と言っていた。
彼はその恨み言の記述を読んだのかもしれない。
「……お兄さんのことは、今は」
「……憎んではいません。数年してからそれは間違いだと気づいて、憎むのをやめました」
「君はとても強い意志を持っているね。過ちに自ら気づくのは、とても難しいことだ。特に、恨む気持ちというものは一度噴き上がったら収拾がつかない」
「恨み………」
教皇の言葉を受けてカイルは拳を握って肩を震わせる。
「今また、噴き上がっているのだね」
「当然です……収拾なんか、一生かかっても無理だ。支えてくれる仲間がいる……ありがたいと思うし、裏切りたくない。できればそっちを向いていたい。でも、ふとした瞬間に醜い気持ちが次から次へと無限に湧いて、頭を支配しようとしてくる……」
「カイル君。私は『全てを告白するといい』と言ったよ。『全てを受け入れる』『誰も咎めない』とも。今は感情を鎖で縛らなくてもいいんだ。……倫理や正義などいらない。君は自由だ」
教皇は、言葉を詰まらせうつむいたカイルの肩に手を置いてわずかに笑みを浮かべる。
少ししてからカイルは顔を上げ、声がするほどに大きく息を吸った。
(…………!)
――寒気がする。色濃い憎悪と殺意が、これから解き放たれる……。
「…………自分勝手な理由で、命を奪って弄んだあの男が憎い。人生をめちゃくちゃにしたあの男が憎い。兄を……憎まなくてもいいものを憎むきっかけを作ったあの男が憎い。あいつが時間を巻き戻して歴史を変えて……でも俺は戻ってきた、自分の魂を魔器にして……そう言えば聞こえはいいが、早い話俺は自殺をしたんだ! ……なんでそんなことをしなけりゃいけなかった、俺はただ、自分の人生を生きたいだけなのに……なんで俺は、なんで俺ばかり何度も何度も踏みにじられないといけない、あんな恥辱を受けてまで……!」
"倫理"と"正義"で封をしていた箱が開け放たれ、憎悪が次々と噴き出る。
あの夏の日のそれとは比較にならない本物の憎悪……俺達は黙って聞いているしかできない。
――聞きながら、教皇がカイルにこれをやらせる意味を考えている。
この計り知れない憎悪を心に溜め込んだまま、また日常に帰るとどうなる?
……きっと俺と同じに、闇に堕ちる。闇の剣に魅入られ、本当に己を無くしてしまう。どれだけ周りに良い人間がいても、堕ちる時は一瞬だ。だからそうなる前に全て解き放っておけば、闇に染まらずに済む……そう考えたのかもしれない。
だが……。
「……俺はあいつを殺したいです、っ……八つ裂きにして、精神ボロボロにしたあと二回も三回も殺してやりたいですよ!!」
――これは間違いじゃないのだろうか。全てを出し切ったあと、あいつは自分の正体を忘れてはしないだろうか?
正解が、なにひとつ分からない。
「っ……あの……野郎……、俺の……、人生、を、嘲笑い、やがって……! ハァ、ハァ、……、グ……ッ」
「! カイル……」
言葉の途中でカイルは激しく息を乱し始め、過呼吸に陥ってしまう。
「……いけない。少し話を中断しよう。呼吸を――」
「ハァ、ハァ……、……猊下……! あいつ……イリアスは、消えるん、ですよねっ……?」
教皇が話を切り上げようとするのを遮って、カイルはなおも言葉を続ける。
いつもの癖で服の胸元を掴んでいる――荒い呼吸のせいでまるで心臓の発作を起こしているかのようだ。
「…………、そうだ。肉体は腐る。魂は砕け散って、誰の記憶からも消え去る」
「っ……、それで、最初から……、……いなかったことに……なるんですよね?」
「そうだ」
「っ……ふふ、あっはは……っ、……いい気味だ……」
「…………」
「それは……それこそ、俺がずっと、恐れて、怯えてたこと……あいつが、あいつがそうなるんだ……? ハハハッ……ざまあ、みろ……、ざまあみろってんだよ……っ!!」
「!!」
そこまで叫んだところでカイルは天を仰ぐようにして前方へ倒れ込んだ。前にいる教皇がとっさに両手でそれを支える。
「カイル!」
「カイル殿!!」
「カイルさん……っ!!」
息はしているようだが顔は真っ青だ。額に汗がにじみ、手が少し痙攣している……。
「セルジュ、グレン君。手を貸してくれ。彼を隣の部屋に運ぶ」
「……はっ」
「…………」
教皇の言葉に従い、隣の部屋に設置してあるベッドへカイルを運んだ。
上着を脱がせてネクタイをゆるめ、シャツのボタンをいくつか外してやると少し呼吸が落ち着いた。
――まさかこんなことになるとは思わなかった。止めるべきだっただろうか……?
「……しばらく安静にしていれば、意識は戻るだろう」
「あ……では、わたくしが――」
「ありがとう、ベルナデッタ。しかし彼には別の者についてもらうよ。君は休憩していなさい」
「別の……?」
教皇はきょとんとした顔で見上げてくるベルナデッタにニコリと微笑みかけた。
しかし笑みはすぐに消え去り、その表情はここ数日で見たことのない厳しいものになる。
「……いつまで隠れているつもりだ。出てきなさい」
扉を睨みながら教皇が厳しく冷たい口調で告げると、一拍置いてから扉がゆっくりと開いた。
(……聖女……?)
扉の向こうから現れたのは、聖女と思しき女――前と同じに顔のほとんどが布に覆われていて分からないが、間違いなく聖女だろう。
目に涙を溜めながらベッドに寝かされたカイルの元にやってきて座り込み、頬を手で撫でる。
「…………」
――前に会った時の凜とした様子とは全く違う。
カイルの日記によれば、彼女は確かカイルが仕えていた侯爵家の令嬢だったはず。
真名を知らせたこと、そして今の様子からしてカイルには主従以上の気持ちを抱いているようだが、しかし……。
「……リタ・ユング」
教皇が聖女の名を呼ぶ。決して大声ではないが、はっきりとよく通る声――聖女は「はい」と静かに立ち上がり、教皇に向き直ると同時に手を組み合わせて、目を閉じる。
……まるで裁判の前のようだ。
「……立場上誰もお前を責め立てはしないだろうから、私が言う」
「はい」
「お前が彼に真名を教えさえしなければ、彼は利用されることなどなかった。これほどの憎悪も抱えなくて済んだのだ」
「!」
「……はい」
「この事件の主犯はイリアスだ。しかし、咎はお前にもある」
「……はい」
「こんな事態は誰も予想できない。……真名を教えたのは、幼い少女の遊び心であったのかもしれない。だがそれが回り回ってこうなった。これは確実にお前の罪だ……お前がこの青年を苦しめたのだ。尊厳を踏みにじられるきっかけを作ったのだ。彼の心をここまで打ち砕いたのはリタ……お前だよ」
「…………」
「隠れて何がどうなる。……向き合いなさい、自らの罪と。何を言われても全てを受け入れなさい。それが贖罪だ」
聖女は涙をこぼしながら、静かに首肯だけを返す。
「涙は彼が目覚めるまでに流しきっておきなさい。……謝罪に涙は不要だ。公正な判断を狂わせる」
「……はい……、はい」
「……皆、しばらくあちらの部屋に」
「…………」
教皇の言葉に従い、部屋を出た。
あとには、カイルと聖女だけが残された――。
◇
謁見は一時中断。
カイルの意識が戻って聖女と話し合いをしたあと、カイルの体調次第でまた再開するそうだ。
『お前が彼に真名を教えさえしなければ、彼は利用されることなどなかった。これほどの憎悪も抱えなくて済んだのだ』――。
「…………」
正直驚いた。己の宗教の象徴的存在にあそこまで厳しく冷たいことを言うとは……。
だがセルジュから事の顛末を聞いたとき、俺は教皇と同じことを思った。
聖女の言葉で荒ぶるシーザーが大人しくなった。聖女の力で俺達はカイルの元へ導かれた。
あの絶対的な力がなければ、カイルとセルジュは助からなかった。それは紛れもない事実だ。
カイルの人生と命を弄んだのはイリアスだ。奴の過去から今も因縁のある相手、宿敵だ。それも間違いない。
たった数日でカイルの精神を粉々に打ち砕いたのもイリアスだ。光の塾の"自分探しの試練"――試練の名を借りた拷問のせいで、カイルはああなった。
なぜ、拷問など加えた? ――カイルの心身を弱らせるためだ。
なぜ、心身を弱らせる? ――聖女の加護を持つカイルには"操り人形"の術が効かない。加護を破るには、精神を弱らせる必要があった。
全ては、聖女の真名を唱えさせるため。
真名など知らなければ、あそこまで壊されることはなかった……。
あの癒やしの力には圧倒されたが、だからと言って全て取り返せるものじゃない。
だが教皇によって人前であそこまで断じられたのだから、俺としてはもう何も思いを抱くことはない。あとはカイルの考え次第だ。
彼女に公正な判断を下す権利はカイルだけが持っている。
奴は彼女にどんな答えを返すのだろう。
誰も何も言わない。
時計の秒針の音だけがずっと響いている。
――あの夏の日の兄弟喧嘩でジャミル相手に吐き出したものと比べ、より深い感情を伴う"告白"。
『日記』のくだりで横にいるセルジュが目を閉じて少しうつむいた。
俺達が捕まった時イリアスが『押収したカイルの日記を読んでいる』と言っていた。
彼はその恨み言の記述を読んだのかもしれない。
「……お兄さんのことは、今は」
「……憎んではいません。数年してからそれは間違いだと気づいて、憎むのをやめました」
「君はとても強い意志を持っているね。過ちに自ら気づくのは、とても難しいことだ。特に、恨む気持ちというものは一度噴き上がったら収拾がつかない」
「恨み………」
教皇の言葉を受けてカイルは拳を握って肩を震わせる。
「今また、噴き上がっているのだね」
「当然です……収拾なんか、一生かかっても無理だ。支えてくれる仲間がいる……ありがたいと思うし、裏切りたくない。できればそっちを向いていたい。でも、ふとした瞬間に醜い気持ちが次から次へと無限に湧いて、頭を支配しようとしてくる……」
「カイル君。私は『全てを告白するといい』と言ったよ。『全てを受け入れる』『誰も咎めない』とも。今は感情を鎖で縛らなくてもいいんだ。……倫理や正義などいらない。君は自由だ」
教皇は、言葉を詰まらせうつむいたカイルの肩に手を置いてわずかに笑みを浮かべる。
少ししてからカイルは顔を上げ、声がするほどに大きく息を吸った。
(…………!)
――寒気がする。色濃い憎悪と殺意が、これから解き放たれる……。
「…………自分勝手な理由で、命を奪って弄んだあの男が憎い。人生をめちゃくちゃにしたあの男が憎い。兄を……憎まなくてもいいものを憎むきっかけを作ったあの男が憎い。あいつが時間を巻き戻して歴史を変えて……でも俺は戻ってきた、自分の魂を魔器にして……そう言えば聞こえはいいが、早い話俺は自殺をしたんだ! ……なんでそんなことをしなけりゃいけなかった、俺はただ、自分の人生を生きたいだけなのに……なんで俺は、なんで俺ばかり何度も何度も踏みにじられないといけない、あんな恥辱を受けてまで……!」
"倫理"と"正義"で封をしていた箱が開け放たれ、憎悪が次々と噴き出る。
あの夏の日のそれとは比較にならない本物の憎悪……俺達は黙って聞いているしかできない。
――聞きながら、教皇がカイルにこれをやらせる意味を考えている。
この計り知れない憎悪を心に溜め込んだまま、また日常に帰るとどうなる?
……きっと俺と同じに、闇に堕ちる。闇の剣に魅入られ、本当に己を無くしてしまう。どれだけ周りに良い人間がいても、堕ちる時は一瞬だ。だからそうなる前に全て解き放っておけば、闇に染まらずに済む……そう考えたのかもしれない。
だが……。
「……俺はあいつを殺したいです、っ……八つ裂きにして、精神ボロボロにしたあと二回も三回も殺してやりたいですよ!!」
――これは間違いじゃないのだろうか。全てを出し切ったあと、あいつは自分の正体を忘れてはしないだろうか?
正解が、なにひとつ分からない。
「っ……あの……野郎……、俺の……、人生、を、嘲笑い、やがって……! ハァ、ハァ、……、グ……ッ」
「! カイル……」
言葉の途中でカイルは激しく息を乱し始め、過呼吸に陥ってしまう。
「……いけない。少し話を中断しよう。呼吸を――」
「ハァ、ハァ……、……猊下……! あいつ……イリアスは、消えるん、ですよねっ……?」
教皇が話を切り上げようとするのを遮って、カイルはなおも言葉を続ける。
いつもの癖で服の胸元を掴んでいる――荒い呼吸のせいでまるで心臓の発作を起こしているかのようだ。
「…………、そうだ。肉体は腐る。魂は砕け散って、誰の記憶からも消え去る」
「っ……、それで、最初から……、……いなかったことに……なるんですよね?」
「そうだ」
「っ……ふふ、あっはは……っ、……いい気味だ……」
「…………」
「それは……それこそ、俺がずっと、恐れて、怯えてたこと……あいつが、あいつがそうなるんだ……? ハハハッ……ざまあ、みろ……、ざまあみろってんだよ……っ!!」
「!!」
そこまで叫んだところでカイルは天を仰ぐようにして前方へ倒れ込んだ。前にいる教皇がとっさに両手でそれを支える。
「カイル!」
「カイル殿!!」
「カイルさん……っ!!」
息はしているようだが顔は真っ青だ。額に汗がにじみ、手が少し痙攣している……。
「セルジュ、グレン君。手を貸してくれ。彼を隣の部屋に運ぶ」
「……はっ」
「…………」
教皇の言葉に従い、隣の部屋に設置してあるベッドへカイルを運んだ。
上着を脱がせてネクタイをゆるめ、シャツのボタンをいくつか外してやると少し呼吸が落ち着いた。
――まさかこんなことになるとは思わなかった。止めるべきだっただろうか……?
「……しばらく安静にしていれば、意識は戻るだろう」
「あ……では、わたくしが――」
「ありがとう、ベルナデッタ。しかし彼には別の者についてもらうよ。君は休憩していなさい」
「別の……?」
教皇はきょとんとした顔で見上げてくるベルナデッタにニコリと微笑みかけた。
しかし笑みはすぐに消え去り、その表情はここ数日で見たことのない厳しいものになる。
「……いつまで隠れているつもりだ。出てきなさい」
扉を睨みながら教皇が厳しく冷たい口調で告げると、一拍置いてから扉がゆっくりと開いた。
(……聖女……?)
扉の向こうから現れたのは、聖女と思しき女――前と同じに顔のほとんどが布に覆われていて分からないが、間違いなく聖女だろう。
目に涙を溜めながらベッドに寝かされたカイルの元にやってきて座り込み、頬を手で撫でる。
「…………」
――前に会った時の凜とした様子とは全く違う。
カイルの日記によれば、彼女は確かカイルが仕えていた侯爵家の令嬢だったはず。
真名を知らせたこと、そして今の様子からしてカイルには主従以上の気持ちを抱いているようだが、しかし……。
「……リタ・ユング」
教皇が聖女の名を呼ぶ。決して大声ではないが、はっきりとよく通る声――聖女は「はい」と静かに立ち上がり、教皇に向き直ると同時に手を組み合わせて、目を閉じる。
……まるで裁判の前のようだ。
「……立場上誰もお前を責め立てはしないだろうから、私が言う」
「はい」
「お前が彼に真名を教えさえしなければ、彼は利用されることなどなかった。これほどの憎悪も抱えなくて済んだのだ」
「!」
「……はい」
「この事件の主犯はイリアスだ。しかし、咎はお前にもある」
「……はい」
「こんな事態は誰も予想できない。……真名を教えたのは、幼い少女の遊び心であったのかもしれない。だがそれが回り回ってこうなった。これは確実にお前の罪だ……お前がこの青年を苦しめたのだ。尊厳を踏みにじられるきっかけを作ったのだ。彼の心をここまで打ち砕いたのはリタ……お前だよ」
「…………」
「隠れて何がどうなる。……向き合いなさい、自らの罪と。何を言われても全てを受け入れなさい。それが贖罪だ」
聖女は涙をこぼしながら、静かに首肯だけを返す。
「涙は彼が目覚めるまでに流しきっておきなさい。……謝罪に涙は不要だ。公正な判断を狂わせる」
「……はい……、はい」
「……皆、しばらくあちらの部屋に」
「…………」
教皇の言葉に従い、部屋を出た。
あとには、カイルと聖女だけが残された――。
◇
謁見は一時中断。
カイルの意識が戻って聖女と話し合いをしたあと、カイルの体調次第でまた再開するそうだ。
『お前が彼に真名を教えさえしなければ、彼は利用されることなどなかった。これほどの憎悪も抱えなくて済んだのだ』――。
「…………」
正直驚いた。己の宗教の象徴的存在にあそこまで厳しく冷たいことを言うとは……。
だがセルジュから事の顛末を聞いたとき、俺は教皇と同じことを思った。
聖女の言葉で荒ぶるシーザーが大人しくなった。聖女の力で俺達はカイルの元へ導かれた。
あの絶対的な力がなければ、カイルとセルジュは助からなかった。それは紛れもない事実だ。
カイルの人生と命を弄んだのはイリアスだ。奴の過去から今も因縁のある相手、宿敵だ。それも間違いない。
たった数日でカイルの精神を粉々に打ち砕いたのもイリアスだ。光の塾の"自分探しの試練"――試練の名を借りた拷問のせいで、カイルはああなった。
なぜ、拷問など加えた? ――カイルの心身を弱らせるためだ。
なぜ、心身を弱らせる? ――聖女の加護を持つカイルには"操り人形"の術が効かない。加護を破るには、精神を弱らせる必要があった。
全ては、聖女の真名を唱えさせるため。
真名など知らなければ、あそこまで壊されることはなかった……。
あの癒やしの力には圧倒されたが、だからと言って全て取り返せるものじゃない。
だが教皇によって人前であそこまで断じられたのだから、俺としてはもう何も思いを抱くことはない。あとはカイルの考え次第だ。
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