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前段階のテストである場所は、
滝とゴツゴツとした岩場があり
奥には雑木林が見えている。


ナタリー様と侍女のメアリーが消えた時から
お三方の話と目線は雄弁に語る

「ヒバナ殿、クリス殿、ナタリー嬢は私が頂く」

先に口を開いたのはエルサレム

「あれ、見かけに寄らず熱い人だったんですね」
ふふ、と微笑むクリスに

「勝負に勝っても、ナタリー嬢の気持ちが大事だろ」
と、マスターヒバナが応戦する。

少し離れた場所から見ていたが、
お三方にとっては自分など目に入ってないようでホッとする。

さて、どうしたものかと顎に手をやり少し考える。

ふむ、状況から察するに自分はあんまり関係ないように思う。

大した理由も根拠もなくはないが、
多分その為だろうとは思われる。

太公の取り決めは、詳しい内容までは知らなくても噂レベル程度のこの国に住む者達ならば知っている。

公爵夫人の時もそうだったと言われれば、疑いようもない。

十中八九、婚約者になる為だろうな…。

それに、そもそも自分をここに連れて行く理由は取材の為だ。

連れて行き方が問題だが。
…………何も縛らなくていいだろうに。

ナタリー嬢の考えはサッパリ掴めないが、
あまり深く考えたくはない。

ふーーーと一息ついて、グゥーっと背伸びをする

ポキポキと骨同士の鳴る音が聞こえる。

自分の考えを少しばかり整理できたおかげから頭の中がスッキリして

「さてっと、行きますか」

お三方が行ってしまった方角を見ながら
自分もゆっくり歩いていく。




⭐︎






アンドリューも居なくなって
岩場の影に隠れていた
匍匐前進の格好の
寝そべっていた暗躍部隊のひとりがその様子を見て伝書鳩を飛ばす。



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