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六章 金の神殿
118. マグダリーナの方針
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「それよ! ショウネシー領の紹介動画を流しちゃいましょう!」
マグダリーナは立ち上って、名案とばかりに言った。
そして。
「というわけだから、決闘はエステラお願い!」
「任せて!」
「どうして?!」
ルシンがマグダリーナを見た。
「こんな馬鹿な決闘で、誰かの命が犠牲になるなんて、どうかしてる。それにショウネシー領の紹介も兼ねてるんじゃ『絶対殺す』の貴方じゃだめなのよ」
マグダリーナは、強い意志でルシンを見返した。
その時、ルシンはマグダリーナの周りで瞬く星を見た。
「マグダリーナ、今、星を動かしたな」
ぼそりと呟かれたその言葉を、マグダリーナは聞き逃した。
「え? なに?」
「別に。決定権をお前にしたのは俺だし、存分にコキ使え」
マグダリーナは頷いた。
◇◇◇
「くっは。それでお前、明日の朝から早速サトウマンドラゴラ春の陣の映像撮りに行くのか。星読みの白の神官も形無しだな!」
んはははーと笑うエデンの足を、ルシンはゲシゲシ蹴った。
「それにしても、僕らがほんの一日不在だっただけで、エステラが決闘するなんてことが起きるなんて」
ニレルは愛刀の手入れをしている、エステラを見た。
エステラとニレルの得意武器は刀だった。
エステラの前世の記憶は、エステラという存在を手がかりに、繋がっていた『世界そのもの』を読み取る魔法で共有されていた。
だから前世のエステラが実際体験したことのない技術や知識も得ることができる。
これはこの世界で一番の、原初魔法の使い手だったディオンヌ独自の魔法で、その情報量を自在に処理できるのも、ハイエルフであるディオンヌならではだった。
その技と精石を受け継いだエステラでも素体が人である限り、この『集合的情報記憶魔法』を使える範囲に限りがあった。
今のエステラは奇しくもハイエルフになってしまったので、徐々にその制限は解消されていっているが。
エステラの記憶から日本刀の存在を知ったディオンヌは、その刀身の美しさに一目惚れし、エステラと一緒にきゃっきゃうふふと刀を打ち、毎日ニレルとエステラ相手にちゃんちゃんばらばらと楽しそうに斬り合って、今まで存在しなかった刀を使う戦闘術を確立してしまった。
「これを使わずに済むくらい、弱い人だったら良いのに……」
「そう思うくらいなら、初めから決闘に出るなんて云っちゃいけないよ。絶対勝たなくてはならない闘いだろう?」
珍しくニレルに窘められて、エステラは気合いを入れる為にパシリと両頬を叩いた。
「そうよね、エデンは徒手だから武器を持った相手は即、殺、だし、ニレルもお師匠に敵に情けはかけるなって教育されてるし、アーベルは決闘に出るってだけで、デボラが倒れるかも知れないし、リーナの願いを叶えるのは、やっぱり私しか居ないんだわ」
エステラは少し考え込んで、真顔になった。
「ハイエルフって平和を尊ぶ温厚な種族のはずよね?」
「なーにを今更。だから俺は野蛮な武器など持たないだろう?」
エデンが両手を振ってそう言うと、ニレルも真面目に答える。
「僕もそもそも、誰かと敵対するなんてことの無いよう、人間関係には気をつけてるつもりだけど?」
確かに。
アーベルも訓練以外では、自分から他者を攻撃したりするタイプでもないし、残りの三人などは戦闘する様子すら想像つかない。
エステラはルシンを見た。
「俺はエステラとニレル以外は、どうでもいい」
「そっか、お兄ちゃんはまず、もっと領内の人達と仲良くなる必要がありそうね。とりあえずフェリックスさんは友達でしょ?」
「友達……? フェリックスが? ただ偶然、一緒にリーン王国に来ただけだが」
「夏のキャンプでも修行に付き合ってあげてたでしょ」
「それだけだが?」
『お嬢、お嬢』
仔竜姿のハイドラゴン、ゼラがエステラの服を引っ張って、どっこいしょとエステラの膝の上に乗った。
『ルシンとディオンヌ、昔っから紙より情が薄いんじゃよ……エルフェーラも苦労しとった』
「お師匠は私が知っている限り、愛情表現が乏しいだけで、とっても優しい人だったわ」
エステラがニレルとエデンを見ると、二人とも深く頷いた。
「だからルシンお兄ちゃんもそうだと思うの」
今度の二人はエステラから目を逸らす。
ふとエステラは思い出して、ルシンを見た。
「そういえば、お師匠から預かって、白の神殿にあった女神の精石、私が持ってるんだけど」
「それはいい。もう神殿もないし」
「僕も叔母上から譲り受けて君の杖を使ってる」
「それは、返してほしい」
ニレルは純白の杖を取り出すと、ルシンに渡した。
ルシンは二、三回杖を振ると杖は短杖に姿を変えた。
「今のニレルの力に、この杖は合わなくなってきてただろ?」
「そうだね」
「じゃあ私が作るわ、ニレルの杖! 決闘の後になるけど」
やる気満々のエステラに、ニレルは笑って「楽しみにしよう」と言った。
後日本当に、フランク子爵家から決闘状が届いた。
そしてルシンも決闘が終わるまで、マグダリーナにコキ使われる事になる。
マグダリーナは立ち上って、名案とばかりに言った。
そして。
「というわけだから、決闘はエステラお願い!」
「任せて!」
「どうして?!」
ルシンがマグダリーナを見た。
「こんな馬鹿な決闘で、誰かの命が犠牲になるなんて、どうかしてる。それにショウネシー領の紹介も兼ねてるんじゃ『絶対殺す』の貴方じゃだめなのよ」
マグダリーナは、強い意志でルシンを見返した。
その時、ルシンはマグダリーナの周りで瞬く星を見た。
「マグダリーナ、今、星を動かしたな」
ぼそりと呟かれたその言葉を、マグダリーナは聞き逃した。
「え? なに?」
「別に。決定権をお前にしたのは俺だし、存分にコキ使え」
マグダリーナは頷いた。
◇◇◇
「くっは。それでお前、明日の朝から早速サトウマンドラゴラ春の陣の映像撮りに行くのか。星読みの白の神官も形無しだな!」
んはははーと笑うエデンの足を、ルシンはゲシゲシ蹴った。
「それにしても、僕らがほんの一日不在だっただけで、エステラが決闘するなんてことが起きるなんて」
ニレルは愛刀の手入れをしている、エステラを見た。
エステラとニレルの得意武器は刀だった。
エステラの前世の記憶は、エステラという存在を手がかりに、繋がっていた『世界そのもの』を読み取る魔法で共有されていた。
だから前世のエステラが実際体験したことのない技術や知識も得ることができる。
これはこの世界で一番の、原初魔法の使い手だったディオンヌ独自の魔法で、その情報量を自在に処理できるのも、ハイエルフであるディオンヌならではだった。
その技と精石を受け継いだエステラでも素体が人である限り、この『集合的情報記憶魔法』を使える範囲に限りがあった。
今のエステラは奇しくもハイエルフになってしまったので、徐々にその制限は解消されていっているが。
エステラの記憶から日本刀の存在を知ったディオンヌは、その刀身の美しさに一目惚れし、エステラと一緒にきゃっきゃうふふと刀を打ち、毎日ニレルとエステラ相手にちゃんちゃんばらばらと楽しそうに斬り合って、今まで存在しなかった刀を使う戦闘術を確立してしまった。
「これを使わずに済むくらい、弱い人だったら良いのに……」
「そう思うくらいなら、初めから決闘に出るなんて云っちゃいけないよ。絶対勝たなくてはならない闘いだろう?」
珍しくニレルに窘められて、エステラは気合いを入れる為にパシリと両頬を叩いた。
「そうよね、エデンは徒手だから武器を持った相手は即、殺、だし、ニレルもお師匠に敵に情けはかけるなって教育されてるし、アーベルは決闘に出るってだけで、デボラが倒れるかも知れないし、リーナの願いを叶えるのは、やっぱり私しか居ないんだわ」
エステラは少し考え込んで、真顔になった。
「ハイエルフって平和を尊ぶ温厚な種族のはずよね?」
「なーにを今更。だから俺は野蛮な武器など持たないだろう?」
エデンが両手を振ってそう言うと、ニレルも真面目に答える。
「僕もそもそも、誰かと敵対するなんてことの無いよう、人間関係には気をつけてるつもりだけど?」
確かに。
アーベルも訓練以外では、自分から他者を攻撃したりするタイプでもないし、残りの三人などは戦闘する様子すら想像つかない。
エステラはルシンを見た。
「俺はエステラとニレル以外は、どうでもいい」
「そっか、お兄ちゃんはまず、もっと領内の人達と仲良くなる必要がありそうね。とりあえずフェリックスさんは友達でしょ?」
「友達……? フェリックスが? ただ偶然、一緒にリーン王国に来ただけだが」
「夏のキャンプでも修行に付き合ってあげてたでしょ」
「それだけだが?」
『お嬢、お嬢』
仔竜姿のハイドラゴン、ゼラがエステラの服を引っ張って、どっこいしょとエステラの膝の上に乗った。
『ルシンとディオンヌ、昔っから紙より情が薄いんじゃよ……エルフェーラも苦労しとった』
「お師匠は私が知っている限り、愛情表現が乏しいだけで、とっても優しい人だったわ」
エステラがニレルとエデンを見ると、二人とも深く頷いた。
「だからルシンお兄ちゃんもそうだと思うの」
今度の二人はエステラから目を逸らす。
ふとエステラは思い出して、ルシンを見た。
「そういえば、お師匠から預かって、白の神殿にあった女神の精石、私が持ってるんだけど」
「それはいい。もう神殿もないし」
「僕も叔母上から譲り受けて君の杖を使ってる」
「それは、返してほしい」
ニレルは純白の杖を取り出すと、ルシンに渡した。
ルシンは二、三回杖を振ると杖は短杖に姿を変えた。
「今のニレルの力に、この杖は合わなくなってきてただろ?」
「そうだね」
「じゃあ私が作るわ、ニレルの杖! 決闘の後になるけど」
やる気満々のエステラに、ニレルは笑って「楽しみにしよう」と言った。
後日本当に、フランク子爵家から決闘状が届いた。
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