【完結】君と創る世界

くみた柑

文字の大きさ
44 / 132
【第四章】残酷な世界

僕が生きてきた世界

しおりを挟む
「お母様は……八幡くんの他に好きな人ができて。その人と一緒になるために、八幡くんと別れて家を出たの。どこで暮らしているかは、私は知らないわ」

「え……?」

 頭が真っ白になった。母さんは、浮気をしていたってこと……?
 両親が離婚をする少し前。毎日のように喧嘩をする両親を見るのが嫌だった。母さんを激しく怒鳴りつける父さんの姿が怖かった。

 蓋をしていた記憶。僕はその蓋を外し、記憶を探る。怒号、涙、母のうつむいた姿。それらは全部、父の一方的な攻撃だと思っていた。
 母さんを責めていた言葉は、母さんが浮気をしていたからだと知ると、あのときの印象はまた違ってくる。

 璃花子さんの言葉が、重く、響く。
 僕の脳内に広がるのは、過去の記憶と現実の間にできた亀裂。

「もともと離婚をする話を進めていたあなたのお母様は、あなたの意識がもう戻る可能性がほとんどないとドクターから聞き、あなたを置いて出ていってしまったの」

「そんな……」

 胸の奥から、言葉にならない感情が次々と溢れ出す。

「僕は……僕はこれまで母と暮らしてきました。僕を置いて出ていったのは父で……母は昔と変わらず優しくて……最近は趣味のフラダンスも楽しそうにしていて……」

 あの優しい母さんが僕を置いて家を出ていったなんて、あり得ない……信じられない……。
 璃花子さんは、そんな僕の言葉を否定せずに、ただ悲しそうな微笑みを浮かべて僕の話を聞いていた。

「八幡くんはね、お母さんっ子だった洵くんを思って、せめてこの世界は、大好きなお母様と暮らす世界にしようって」

「――僕が……これまで生きてきた世界って……」

 璃花子さんは、うん、と小さく頷くと、僕の目をまっすぐに見据えた。

「アストラルアークが開発した、コネクテッド・ワールド。通称〈MAHORAまほら〉のβべーた版。簡単に説明すると、現実リアルとリンクしたバーチャルな世界よ。〈MAHORA〉に接続すると、どこにいても、アバターを通して現実リアルの世界と同じように行動ができるの。ただ、あなたの世界は現実とは隔離された、完全に単独の世界だったけれど」

「単独……?」

「そう。当時、開発途中のものを利用したから、今の〈MAHORA〉よりも遥かに範囲も性能も劣るわ。現在リリースされている正式版の〈MAHORA〉にいる人々は、現実に存在する人たち。けれど、あなたの世界の人たちは……ゲームでいうところのNPCノンプレイキャラクター。人工知能によって行動しているの」

 僕は言葉を失った。ただ、彼女の目をじっと見つめることしかできなかった。
 そしてようやく、震える声で言葉を紡いだ。

「じゃあ、僕がこれまで関わってきた人たちは、みんなAIだったってことですか……」

 喉が乾き、うまく言葉を続けることができない。

「……そうなるわね」

 ハハッと、思わず乾いた笑いが漏れた。それと同時に、胸の奥で何かが砕け散るような感覚がした。
 これまで、どこか深く人と関われない自分が悪いんだと思っていた。けど……そういうことだったのか。
 あの広い世界で――僕は一人きりだったんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

煙草屋さんと小説家

男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。 商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。 ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。 そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。 小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

【完結】大変申し訳ありませんが、うちのお嬢様に貴方は不釣り合いのようです。

リラ
恋愛
 婚約破棄から始まる、有能執事の溺愛…いや、過保護?  お嬢様を絶対守るマンが本気を出したらすごいんです。  ミリアス帝国首都の一等地に屋敷を構える資産家のコルチエット伯爵家で執事として勤めているロバートは、あらゆる事を完璧にこなす有能な執事だ。  そんな彼が生涯を捧げてでも大切に守ろうと誓った伯爵家のご令嬢エミリー・コルチエットがある日、婚約者に一方的に婚約破棄を告げられる事件が起こる。  その事実を知ったロバートは……この執事を怒らせたら怖いぞ!  後に後悔しエミリーとの復縁を望む元婚約者や、彼女に恋心を抱く男達を前に、お嬢様の婿に相応しいか見極めるロバートだったが…?  果たして、ロバートに認められるようなエミリーお嬢様のお婿候補は現れるのだろうか!? 【物語補足情報】 世界観:貴族社会はあるものの、財を成した平民が貴族位を買い新興貴族(ブルジョア)として活躍している時代。 由緒正しい貴族の力は弱まりつつあり、借金を抱える高位貴族も増えていった。 コルチエット家:帝国一の大商会を持つ一族。元々平民だが、エミリーの祖父の代に伯爵位を買い貴族となった資産家。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...