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Secret17. マテラスを見つめる少女
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●登場人物
・輝・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。
= マテラス・ダークライト:秘密結社ダーク・ライトの首領。外見はいいが、中身はポンコツ。
・紫野菫(すみれ):ひかるのお店でバイトをしている。
= ヴィオレ:秘密結社ダーク・ライトの一員。「チッカー語」をマスターし、ノリにノっている。
・チッカー:全身黒づくめのモブ戦闘員。いつも一行でやられるが、毎回出てくる真面目さん。
・小松春桜子(さくら):元気が取り柄の14才!セリシールとして、毎回、律儀にもマテラスと戦う。
= ラフェド・セリシール:魔法少女。無敗を誇る無敵の女王。だけど、毎回、逃がしてあげる優しいところもある。
・レオポン:ライオンを模したマスコットキャラ。セリシールをしてマテラスと戦わせしむ。
●前回のお話
私、紫野菫。いろいろあったけど、ついに「チッカー語」をマスターしたわ。
腑に落ちない事ばかりだったけど、とにかく取ってしまえばこっちのものよ!
あえて言えば、あの日の事は全ての関係者の記憶から消してしまいたいわね...
でも、今日はセリシール様との交流会(※戦闘です)。気を取り直していきましょー!!
ここはとある街のよくある公園。
今、ここでは、魔法少女と秘密結社ダーク・ライトの戦闘が始まろうとしていた。
「悪の秘密結社ダーク・ライト!また出たわね!この街の平和は私、ラフェド・セリシールが守って見せる!!」
「ふふふ、そううまくいくかな?」
ダーク・ライト首領マテラス・ダークライトが挑発する。
その周りでは、チッカーたちが叫んでいた。
「チィー!」(あぁあ、しんどいなぁ...)
「チィー!」(早く終わらせてひとっ風呂あびてぇぜ)
「チィー!」(まあ、適当にやるか)
すみれはチッカー語を習得したことで、彼らが何を言っているか分かるようになっていた。
「...マテラス、いいの?チッカーたち、こんな感じで」
「いつも、そうだが」
「それで本当にいいの?!」
「まあ、いつもやられて、痛い目を見ているわけだから、やる気を出せという方が無理だろう...」
ひかるはあきらめているようだ。
「何かテンション下がるわね」
「無駄口を叩いているヒマはない...いけ!チッカーども!」
「チィー!」(やっぱ、そうなるの?)
「チィー!」(あまり痛くないといいなあ...)
「チィー!」(はあ、やってられねぇぜ)
文句を言いながらも、魔法少女に襲い掛かるチッカーたち。
だが、あっという間にやられてしまった。
「チィー!」(よっしゃ、終わり)
「チィー!」(少しは手加減しやがれよ。痛ってーなぁ)
「チィー!」(早めに切り上げお願いします)
「やるな、魔法少女!やはり、私が出ないとダメなようだな」
「この会話聞きながら、よく、凄めるわね...」
すみれはひかるが鉄のハートを持っていることを知った。
そして...いつものごとくマテラスがやられる。
「ギャァァーーーーー!!!」
この様子を遠くからじっと見つめる少女がいた...
「マテラス様・・・今日も実にすばらしいやられっぷりです」
彼女の名は志頭蟹芭羅美(しずかにばらみ 14才)。さくらの同級生である。もっともそんなに親しくはないが...
黒髪を三つ編みにした小柄な少女で、少し地味な印象だ。話し声からしてもあまり快活な性格では無さそうだ。
芭羅美は、こうしてマテラスがやられる様を見ることに生きがいを感じている。
彼女がマテラスを見たのは、魔法少女とマテラスとの初戦。
偶然、この公園を通りかかった時だった。
何やら騒がしいので、人ごみを縫って公園を囲む木々の間から顔を出したちょうどそのとき、マテラスに太いビームが放たれた。
もだえ苦しむマテラスを見たとき、彼女の身体に電撃が走った。
その時の衝撃の正体を彼女はまだ自覚していない。
それは決してSだからではなく...彼女の脳内ではあの光景が別のものに変換されていたのだ。
「欲を言えば、もう少しやられ方のバリエーションが欲しいのですが...」
芭羅美はそんなことを考えてしまう。
この時、まだ芭羅美は気づいていなかった。
自分が何にそんなに興奮しているのかを...
・・・
それからしばらくしたとある日。
「セリシール、ちょっと僕、出かけてくるから」
レオポンがさくらに告げていた。
「いつものあれだね。いってらっしゃい!」
レオポンはひと月に一度、上司に進捗状況を報告しなければならないらしい。
中間管理職も大変だ。
「あっ、明日はマテラスとの戦闘があったよね」
レオポンは渋い顔をする。
「どうしたの?何か問題があるの?」
「いや、今度の上司が実績にこだわる人で...僕らマテラス倒せてないじゃない...」
「ああ、そうか...」
「セリシールはマテラスを倒したい?」
「...こんなこと言っちゃ魔法少女失格かもしれないけど...そんな悪い人じゃない気がするんだ...」
「分かったよ。うまくごまかしとく」
「ゴメンね...」
「気にすることないさ。僕もダークライト一族は倒したくない」
「ありがと♡」
レオポンは照れながら、窓からどこかへ飛んで行った。
・・・
そして、翌日。レオポンは疲れたようで、もう少し寝たいようだった。
さくらは一人、朝食を済ませると、学校へと向かう。すると...
女の子が、見たことのない赤髪の男に絡まれていた。
「お前!ダーク・ライトの首領を知っているのか?!」
男は三つ編みの小柄な少女を問い詰めていた。
男はかなりの美形であったが、その顔つきは、どこかきつめの印象を与える。
髪はそんなに長くない。一応、解かしているようだが、手入れはあまりされていない。
かなりの長身で、問い詰められている少女はとてもおびえているようだ。
(あの子...)
さくらはその子に見覚えがあった。そして何よりもその状況を、さくらは放ってはおけなかった。
「あなた、誰?見かけない顔だけど。その娘、怖がってるじゃない!離れなさい!」
「セリシール?」
男がつぶやく。さくらはあせって少女の手を取ると、学校へと向かって走っていくのだった。
「はぁ、はぁ、ちょっと待って。あたし、もう走れない...」
三つ編みの少女が息も絶え絶えに言う。
「ごめん...あいつ、追ってこないよね。ふう、あなた同じクラスの志頭蟹さんだよね」
「うん。確かさくらちゃん...あっ、ごめん、小松春さん。みんなそう呼んでるからついあだ名で呼んじゃった」
「あは。さくらちゃんでいいよ!私も、芭羅美ちゃんって呼んでいいかな!」
「芭羅美ちゃん...何か恥ずかしいけど、いいよ。何か友達みたいでうれしい」
「もう友達だよぅ。学校まで一緒に行こ!またあの男が出てくるかもしれないし...」
「うん、ありがとう」
「さっきの男だけど、どうして絡まれたの?」
「分かんない。いきなりマテラスさんのことを聞かれて...」
(「マテラス様...」ってつぶやいた瞬間、急に現れたんだけど、ちょっと言いづらいから黙っとこ)
「何なんだろ、ダーク・ライトの関係者かな?」
「さあ、そういえばさっき魔法少女の名前、呼んでたけど」
「えっ、あぁ、あれじゃない?魔法少女の追っかけとか。マテラスを追えば会えると思ってとか...」
「そうなのかなぁ...」
「きっと、そうだよ。あはは...」
・輝・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。
= マテラス・ダークライト:秘密結社ダーク・ライトの首領。外見はいいが、中身はポンコツ。
・紫野菫(すみれ):ひかるのお店でバイトをしている。
= ヴィオレ:秘密結社ダーク・ライトの一員。「チッカー語」をマスターし、ノリにノっている。
・チッカー:全身黒づくめのモブ戦闘員。いつも一行でやられるが、毎回出てくる真面目さん。
・小松春桜子(さくら):元気が取り柄の14才!セリシールとして、毎回、律儀にもマテラスと戦う。
= ラフェド・セリシール:魔法少女。無敗を誇る無敵の女王。だけど、毎回、逃がしてあげる優しいところもある。
・レオポン:ライオンを模したマスコットキャラ。セリシールをしてマテラスと戦わせしむ。
●前回のお話
私、紫野菫。いろいろあったけど、ついに「チッカー語」をマスターしたわ。
腑に落ちない事ばかりだったけど、とにかく取ってしまえばこっちのものよ!
あえて言えば、あの日の事は全ての関係者の記憶から消してしまいたいわね...
でも、今日はセリシール様との交流会(※戦闘です)。気を取り直していきましょー!!
ここはとある街のよくある公園。
今、ここでは、魔法少女と秘密結社ダーク・ライトの戦闘が始まろうとしていた。
「悪の秘密結社ダーク・ライト!また出たわね!この街の平和は私、ラフェド・セリシールが守って見せる!!」
「ふふふ、そううまくいくかな?」
ダーク・ライト首領マテラス・ダークライトが挑発する。
その周りでは、チッカーたちが叫んでいた。
「チィー!」(あぁあ、しんどいなぁ...)
「チィー!」(早く終わらせてひとっ風呂あびてぇぜ)
「チィー!」(まあ、適当にやるか)
すみれはチッカー語を習得したことで、彼らが何を言っているか分かるようになっていた。
「...マテラス、いいの?チッカーたち、こんな感じで」
「いつも、そうだが」
「それで本当にいいの?!」
「まあ、いつもやられて、痛い目を見ているわけだから、やる気を出せという方が無理だろう...」
ひかるはあきらめているようだ。
「何かテンション下がるわね」
「無駄口を叩いているヒマはない...いけ!チッカーども!」
「チィー!」(やっぱ、そうなるの?)
「チィー!」(あまり痛くないといいなあ...)
「チィー!」(はあ、やってられねぇぜ)
文句を言いながらも、魔法少女に襲い掛かるチッカーたち。
だが、あっという間にやられてしまった。
「チィー!」(よっしゃ、終わり)
「チィー!」(少しは手加減しやがれよ。痛ってーなぁ)
「チィー!」(早めに切り上げお願いします)
「やるな、魔法少女!やはり、私が出ないとダメなようだな」
「この会話聞きながら、よく、凄めるわね...」
すみれはひかるが鉄のハートを持っていることを知った。
そして...いつものごとくマテラスがやられる。
「ギャァァーーーーー!!!」
この様子を遠くからじっと見つめる少女がいた...
「マテラス様・・・今日も実にすばらしいやられっぷりです」
彼女の名は志頭蟹芭羅美(しずかにばらみ 14才)。さくらの同級生である。もっともそんなに親しくはないが...
黒髪を三つ編みにした小柄な少女で、少し地味な印象だ。話し声からしてもあまり快活な性格では無さそうだ。
芭羅美は、こうしてマテラスがやられる様を見ることに生きがいを感じている。
彼女がマテラスを見たのは、魔法少女とマテラスとの初戦。
偶然、この公園を通りかかった時だった。
何やら騒がしいので、人ごみを縫って公園を囲む木々の間から顔を出したちょうどそのとき、マテラスに太いビームが放たれた。
もだえ苦しむマテラスを見たとき、彼女の身体に電撃が走った。
その時の衝撃の正体を彼女はまだ自覚していない。
それは決してSだからではなく...彼女の脳内ではあの光景が別のものに変換されていたのだ。
「欲を言えば、もう少しやられ方のバリエーションが欲しいのですが...」
芭羅美はそんなことを考えてしまう。
この時、まだ芭羅美は気づいていなかった。
自分が何にそんなに興奮しているのかを...
・・・
それからしばらくしたとある日。
「セリシール、ちょっと僕、出かけてくるから」
レオポンがさくらに告げていた。
「いつものあれだね。いってらっしゃい!」
レオポンはひと月に一度、上司に進捗状況を報告しなければならないらしい。
中間管理職も大変だ。
「あっ、明日はマテラスとの戦闘があったよね」
レオポンは渋い顔をする。
「どうしたの?何か問題があるの?」
「いや、今度の上司が実績にこだわる人で...僕らマテラス倒せてないじゃない...」
「ああ、そうか...」
「セリシールはマテラスを倒したい?」
「...こんなこと言っちゃ魔法少女失格かもしれないけど...そんな悪い人じゃない気がするんだ...」
「分かったよ。うまくごまかしとく」
「ゴメンね...」
「気にすることないさ。僕もダークライト一族は倒したくない」
「ありがと♡」
レオポンは照れながら、窓からどこかへ飛んで行った。
・・・
そして、翌日。レオポンは疲れたようで、もう少し寝たいようだった。
さくらは一人、朝食を済ませると、学校へと向かう。すると...
女の子が、見たことのない赤髪の男に絡まれていた。
「お前!ダーク・ライトの首領を知っているのか?!」
男は三つ編みの小柄な少女を問い詰めていた。
男はかなりの美形であったが、その顔つきは、どこかきつめの印象を与える。
髪はそんなに長くない。一応、解かしているようだが、手入れはあまりされていない。
かなりの長身で、問い詰められている少女はとてもおびえているようだ。
(あの子...)
さくらはその子に見覚えがあった。そして何よりもその状況を、さくらは放ってはおけなかった。
「あなた、誰?見かけない顔だけど。その娘、怖がってるじゃない!離れなさい!」
「セリシール?」
男がつぶやく。さくらはあせって少女の手を取ると、学校へと向かって走っていくのだった。
「はぁ、はぁ、ちょっと待って。あたし、もう走れない...」
三つ編みの少女が息も絶え絶えに言う。
「ごめん...あいつ、追ってこないよね。ふう、あなた同じクラスの志頭蟹さんだよね」
「うん。確かさくらちゃん...あっ、ごめん、小松春さん。みんなそう呼んでるからついあだ名で呼んじゃった」
「あは。さくらちゃんでいいよ!私も、芭羅美ちゃんって呼んでいいかな!」
「芭羅美ちゃん...何か恥ずかしいけど、いいよ。何か友達みたいでうれしい」
「もう友達だよぅ。学校まで一緒に行こ!またあの男が出てくるかもしれないし...」
「うん、ありがとう」
「さっきの男だけど、どうして絡まれたの?」
「分かんない。いきなりマテラスさんのことを聞かれて...」
(「マテラス様...」ってつぶやいた瞬間、急に現れたんだけど、ちょっと言いづらいから黙っとこ)
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