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Secret16. チッカー語講座(スピーキング)
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●登場人物
・輝・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。すみれの「チッカー語講座」に同行することになったが...
= マテラス・ダークライト:秘密結社ダーク・ライトの首領。
・紫野菫(すみれ):ひかるのお店のバイト。「チッカー語講座」を受けている。どうにかリスニングはクリアしたらしい。
= ヴィオレ:秘密結社ダーク・ライトの一員。
・チッカー:全身黒づくめのモブ戦闘員。チッカー語でコミュニケーションを取っている。専用の講座があるらしいが...
●前回のお話
私、紫野菫。訳あって「チッカー語」の研修を受けることになったわ。
とりあえずリスニングはクリアしたみたいだけど...
本当に大丈夫?この講座?
心配になってきたわ~~!
今は、秘密結社ダーク・ライトの「チッカー語講座」の真っ最中。
その中で、チカだかり(※チッカーたちの人だかり)が出来ている場所があった。
「なんで、チッカーたち、集まって来てるのよ」
すみれの周りには多くの観衆が集まっている。
「それは、普通は一週間以上かかる、リスニングを、わずか一時間弱でマスターした天才を、一目見ようと集まっているのですわ!」
ひかるは心底、感心した様子ですみれを見ていた。
(実は全く聞こえてないんだけどね...)
すみれは言い出すことが出来ずにいた。
「次はスピーキングね。何でもいいからしゃべってみて!」
「何?その雑な教え方...」
「いきなり、何の準備もなくチッカー語を話したすみれなら出来るわ!頑張って!」
「だから偶然だって言ってるのに...」
すみれは(ひかるってこんな人の話を聞かない人だったっけ?)と思いながらも、とりあえず何か話してみることにした。
「チィー、チィー、チィー」
「...発音は悪くないけど『すみすみ、かわいい、好き好き』では文とは言えないわ...」
すみれは頭が痛くなってきた。
(どうして、この話題から離れられないの?!)
周りのチッカーたちも飽きてきたようだ。
(くっ、次こそは!)
「チィチッ、チィチィー、チィー」
「うん。いい発音ね!文もしっかりしてるけど、『私はそれだけはかわいいのを着けています』では意味が不明瞭だわ。『それ』が何かを明示しないと」
すみれは壁に手をつき、うなだれている。
(どうして、こんなカミングアウトしなくちゃいけないの?それの中身バレてないよね?)
周りのチッカーたちが『それ』の内容を討論しているようだ。すみれはその内容が気になって仕方なかった。
(もう、ヤケよ!!)
すみれは悟りの境地に近づいていた。
「チィチィチッ、チィーチィー、チッ、チィーー。チィー、チィチィー!」
その途端、チッカーたちがドン引きした気がした。ひかるを見るとそっとうつむかれた。
(さすがに、やっちゃった?まあ、今更、何を言ったとしても驚かないけど)
その時、チッカーの一人がひかるをつついた。
「えっ、何て言ったかですって?
『私はこっそりセリシール様の等身大フィギュアの下着をチェックしました。だって、お揃いの着けたいんだもん』
って言ったのよ...」
と、その瞬間、
「いや~~~~~~~!!誰か、誰か私を殺して~~~~~~~~~~~!!!」
すみれの絶叫が教室内に響き渡る。
「まあ、死ぬほどうれしいんですの?発音も完璧。文の構成も明瞭で簡潔。完璧なチッカー語よ!」
「そんなこと聞いてない~~~!!」
「もちろん、スピーキングも合格ですわ。おめでとう!すみれ!」
「めでたくない~~~!私、帰る!!」
「まだですわ!最後に卒業試験が待ってますの!チッカー、準備を!」
そういうとチッカーたちが机をきれいに並べだす。教壇もセットされ、準備が終わるとチッカーはおのおの席についた。
「すみれには卒業試験として、五分間のスピーチを行っていただきます。その後、三分間の質疑応答があります。何か質問は?」
「もう、どうでもよくなってきたわ...どうせ、これ以上恥のかきようもないし...ちなみに合格の条件は?」
「私が決めます」
「相変わらずアバウトね...まあ、いいわ」
すみれは教壇に向かうと適当に話し出した。
「チィー、チッ、チッ、チィチィー、チィー、チィチィチィー、チィー...」
そして五分が経ち、
「チッ、チッ、チィー、チィー、チィチィチィー、チィー」
スピーチが締めくくられた。
直後、しばしの静寂。
(大丈夫かしら...)すみれを緊張が襲う。
それもつかの間、割れんばかりの拍手がすみれに送られた。中には涙ぐんでいるチッカーもいる。
ひかるはというと、
「すみれ...本当に成長したわね...『かわいいものを我慢してきた過去』『魔法少女との出会い・かわいさへの目覚め』そして何より『すみすみとして生きていく決意』どれもがすばらしかったわ...」
目にはうっすらと涙が浮かび始めている。
(別に『すみすみ』として生きていく気はないんだけど...)
すみれは反論しなかった。もはや達観の境地にいたのだ。
「最後の試練よ、すみれ!質疑応答の時間に入ります!何か質問のあるもの!」
ひかるが宣言した。早速手が上がる。
「チッカーN!」
「チッ!チィー、チィー、チィー、チィチィー、チィー、チッ、チィー!」
「すみれ!」
「チィー、チィー、チィー?チィチィー、チィチィー、チィー」
直後、どよめきが起こる。
(あぁ、翻訳機が欲しい...)
「チィー!」
チッカーNが敬礼をして着席する。顔には尊敬の念があふれている。
「いい答えだったわ。次!」
また数人の手が上がる。
「チッカーK!」
「チッ!チッ、チッ、チィー、チィチィー?チィー、チィチィチィー、チィー、チィチッ、チィー!」
「すみれ!」
「チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー?チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー」
チッカーKの顔に当惑が現れる。
(さすがに「チィー」だけじゃまずかったかしら)
すみれが焦っていると、チッカーKの隣の席から声が上がる。
「チィー、チィー、チィー」
すると、チッカーKの顔がみるみる明るくなっていき、最後には胸で手を組みながら喜びを体いっぱいで表現する。
「チィー!」
チッカーKがすみれを見つめ返す。その目には感謝の念がこれでもかというほどにあふれていた。
(何を悟ったの?あなたは!)
すみれは神という存在がどんな心で人を見ているのか、分かった気がした。
「すばらしい...質問もすばらしいけど、直接、答えを教えず、相手に気づかせる返答が秀逸だったわ。そしてそれを理解したあなたもね!次!」
そして、三分のタイムリミットが近づいてきた。
「次の質問が最後ね。どうしても聞きたい人のみ挙手すること。つまらない質問は認めません。挙手!」
すると一人のチッカーがまっすぐに手を上げた。
「あなたね、チッカーF!」
「チッ!」
凛々しく返事をするとチッカーFはしゃべり始めた。
「チィー、チィー、チィー、チィー?チッ、チッ、チィー、チィー、チィチィー、チィチィー?チィー、チィー、チィチィチィー、チィチッ、チィー!」
周囲がどよめく。
「すみれ!あなたの真価が問われるわ!」
(そんなこと言われても...)
全く意味が分からないすみれは相変わらず適当に答えるしかなかった。
「チッ、チッ、チィー!チィチィー、チィー!チッ、チッ、チィチィチィー、チィチィー、チィー!」
すると、チッカーFの目から涙がこぼれた。
次いで、他のチッカーからも嗚咽が聞こえる。隣のチッカーに意味を聞いている者もいるが、理解すると同じく涙している。
「チィーーーー!」
チッカーFは大きく叫ぶと、深くお辞儀をし、着席をした。
(これは才能なのかしら...どうせならかわいい服の似合う才能が欲しかった...)
パチパチパチ...
ひかるの手から拍手が聞こえる。この拍手は教室中のチッカーたちに広がり、部屋は大きな拍手音に包まれた。
「ありがとう、すみれ。いえ、すみすみ!ダーク・ライト史上最高のスピーチだったわ。このスピーチは額に入れて、教室に飾りましょう!もちろん、顔写真入りで!」
「すみすみはいいから!それと、飾る前にスピーチの日本語訳を教えてほしいんですけど...」
「冗談がお上手ね!大丈夫。分からないチッカーには分かるものが教えるでしょう。心配しなくてもよろしくてよ」
「心配なのはそこじゃないんですけど...」
「さあ、史上最速で史上最高の得点を上げ、無事『チッカー語講座』を終了した『すみすみ』に、もう一度大きな拍手を!!」
「人の話を聞け~~~!!」
すみれの声は大音量の拍手と喝采にかき消された...
・・・
そして、翌日、なぜかすみれにはチッカーの言葉が理解できていた。
「チィー!チッ、チッ、チィー!チィチィー?」(冷蔵庫のプリン食べちゃってもいいかなぁ?)
「ダメよ。ひかるに言いつけるわよ」
「チィー...」(チッ、ダメか)
「すみれ、店番ご苦労様!何かある?」
「チッカーがプリン食べようとしたから止めた」
「さすがすみれね。研修受けてもらって良かったわ。これからもよろしくお願いしますわ!」
「...私、まだ普通の人間だよね...」
すみれは何か超えては行けない一線を超えた気がして、無性に不安になるのであった。
・輝・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。すみれの「チッカー語講座」に同行することになったが...
= マテラス・ダークライト:秘密結社ダーク・ライトの首領。
・紫野菫(すみれ):ひかるのお店のバイト。「チッカー語講座」を受けている。どうにかリスニングはクリアしたらしい。
= ヴィオレ:秘密結社ダーク・ライトの一員。
・チッカー:全身黒づくめのモブ戦闘員。チッカー語でコミュニケーションを取っている。専用の講座があるらしいが...
●前回のお話
私、紫野菫。訳あって「チッカー語」の研修を受けることになったわ。
とりあえずリスニングはクリアしたみたいだけど...
本当に大丈夫?この講座?
心配になってきたわ~~!
今は、秘密結社ダーク・ライトの「チッカー語講座」の真っ最中。
その中で、チカだかり(※チッカーたちの人だかり)が出来ている場所があった。
「なんで、チッカーたち、集まって来てるのよ」
すみれの周りには多くの観衆が集まっている。
「それは、普通は一週間以上かかる、リスニングを、わずか一時間弱でマスターした天才を、一目見ようと集まっているのですわ!」
ひかるは心底、感心した様子ですみれを見ていた。
(実は全く聞こえてないんだけどね...)
すみれは言い出すことが出来ずにいた。
「次はスピーキングね。何でもいいからしゃべってみて!」
「何?その雑な教え方...」
「いきなり、何の準備もなくチッカー語を話したすみれなら出来るわ!頑張って!」
「だから偶然だって言ってるのに...」
すみれは(ひかるってこんな人の話を聞かない人だったっけ?)と思いながらも、とりあえず何か話してみることにした。
「チィー、チィー、チィー」
「...発音は悪くないけど『すみすみ、かわいい、好き好き』では文とは言えないわ...」
すみれは頭が痛くなってきた。
(どうして、この話題から離れられないの?!)
周りのチッカーたちも飽きてきたようだ。
(くっ、次こそは!)
「チィチッ、チィチィー、チィー」
「うん。いい発音ね!文もしっかりしてるけど、『私はそれだけはかわいいのを着けています』では意味が不明瞭だわ。『それ』が何かを明示しないと」
すみれは壁に手をつき、うなだれている。
(どうして、こんなカミングアウトしなくちゃいけないの?それの中身バレてないよね?)
周りのチッカーたちが『それ』の内容を討論しているようだ。すみれはその内容が気になって仕方なかった。
(もう、ヤケよ!!)
すみれは悟りの境地に近づいていた。
「チィチィチッ、チィーチィー、チッ、チィーー。チィー、チィチィー!」
その途端、チッカーたちがドン引きした気がした。ひかるを見るとそっとうつむかれた。
(さすがに、やっちゃった?まあ、今更、何を言ったとしても驚かないけど)
その時、チッカーの一人がひかるをつついた。
「えっ、何て言ったかですって?
『私はこっそりセリシール様の等身大フィギュアの下着をチェックしました。だって、お揃いの着けたいんだもん』
って言ったのよ...」
と、その瞬間、
「いや~~~~~~~!!誰か、誰か私を殺して~~~~~~~~~~~!!!」
すみれの絶叫が教室内に響き渡る。
「まあ、死ぬほどうれしいんですの?発音も完璧。文の構成も明瞭で簡潔。完璧なチッカー語よ!」
「そんなこと聞いてない~~~!!」
「もちろん、スピーキングも合格ですわ。おめでとう!すみれ!」
「めでたくない~~~!私、帰る!!」
「まだですわ!最後に卒業試験が待ってますの!チッカー、準備を!」
そういうとチッカーたちが机をきれいに並べだす。教壇もセットされ、準備が終わるとチッカーはおのおの席についた。
「すみれには卒業試験として、五分間のスピーチを行っていただきます。その後、三分間の質疑応答があります。何か質問は?」
「もう、どうでもよくなってきたわ...どうせ、これ以上恥のかきようもないし...ちなみに合格の条件は?」
「私が決めます」
「相変わらずアバウトね...まあ、いいわ」
すみれは教壇に向かうと適当に話し出した。
「チィー、チッ、チッ、チィチィー、チィー、チィチィチィー、チィー...」
そして五分が経ち、
「チッ、チッ、チィー、チィー、チィチィチィー、チィー」
スピーチが締めくくられた。
直後、しばしの静寂。
(大丈夫かしら...)すみれを緊張が襲う。
それもつかの間、割れんばかりの拍手がすみれに送られた。中には涙ぐんでいるチッカーもいる。
ひかるはというと、
「すみれ...本当に成長したわね...『かわいいものを我慢してきた過去』『魔法少女との出会い・かわいさへの目覚め』そして何より『すみすみとして生きていく決意』どれもがすばらしかったわ...」
目にはうっすらと涙が浮かび始めている。
(別に『すみすみ』として生きていく気はないんだけど...)
すみれは反論しなかった。もはや達観の境地にいたのだ。
「最後の試練よ、すみれ!質疑応答の時間に入ります!何か質問のあるもの!」
ひかるが宣言した。早速手が上がる。
「チッカーN!」
「チッ!チィー、チィー、チィー、チィチィー、チィー、チッ、チィー!」
「すみれ!」
「チィー、チィー、チィー?チィチィー、チィチィー、チィー」
直後、どよめきが起こる。
(あぁ、翻訳機が欲しい...)
「チィー!」
チッカーNが敬礼をして着席する。顔には尊敬の念があふれている。
「いい答えだったわ。次!」
また数人の手が上がる。
「チッカーK!」
「チッ!チッ、チッ、チィー、チィチィー?チィー、チィチィチィー、チィー、チィチッ、チィー!」
「すみれ!」
「チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー?チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー、チィー」
チッカーKの顔に当惑が現れる。
(さすがに「チィー」だけじゃまずかったかしら)
すみれが焦っていると、チッカーKの隣の席から声が上がる。
「チィー、チィー、チィー」
すると、チッカーKの顔がみるみる明るくなっていき、最後には胸で手を組みながら喜びを体いっぱいで表現する。
「チィー!」
チッカーKがすみれを見つめ返す。その目には感謝の念がこれでもかというほどにあふれていた。
(何を悟ったの?あなたは!)
すみれは神という存在がどんな心で人を見ているのか、分かった気がした。
「すばらしい...質問もすばらしいけど、直接、答えを教えず、相手に気づかせる返答が秀逸だったわ。そしてそれを理解したあなたもね!次!」
そして、三分のタイムリミットが近づいてきた。
「次の質問が最後ね。どうしても聞きたい人のみ挙手すること。つまらない質問は認めません。挙手!」
すると一人のチッカーがまっすぐに手を上げた。
「あなたね、チッカーF!」
「チッ!」
凛々しく返事をするとチッカーFはしゃべり始めた。
「チィー、チィー、チィー、チィー?チッ、チッ、チィー、チィー、チィチィー、チィチィー?チィー、チィー、チィチィチィー、チィチッ、チィー!」
周囲がどよめく。
「すみれ!あなたの真価が問われるわ!」
(そんなこと言われても...)
全く意味が分からないすみれは相変わらず適当に答えるしかなかった。
「チッ、チッ、チィー!チィチィー、チィー!チッ、チッ、チィチィチィー、チィチィー、チィー!」
すると、チッカーFの目から涙がこぼれた。
次いで、他のチッカーからも嗚咽が聞こえる。隣のチッカーに意味を聞いている者もいるが、理解すると同じく涙している。
「チィーーーー!」
チッカーFは大きく叫ぶと、深くお辞儀をし、着席をした。
(これは才能なのかしら...どうせならかわいい服の似合う才能が欲しかった...)
パチパチパチ...
ひかるの手から拍手が聞こえる。この拍手は教室中のチッカーたちに広がり、部屋は大きな拍手音に包まれた。
「ありがとう、すみれ。いえ、すみすみ!ダーク・ライト史上最高のスピーチだったわ。このスピーチは額に入れて、教室に飾りましょう!もちろん、顔写真入りで!」
「すみすみはいいから!それと、飾る前にスピーチの日本語訳を教えてほしいんですけど...」
「冗談がお上手ね!大丈夫。分からないチッカーには分かるものが教えるでしょう。心配しなくてもよろしくてよ」
「心配なのはそこじゃないんですけど...」
「さあ、史上最速で史上最高の得点を上げ、無事『チッカー語講座』を終了した『すみすみ』に、もう一度大きな拍手を!!」
「人の話を聞け~~~!!」
すみれの声は大音量の拍手と喝采にかき消された...
・・・
そして、翌日、なぜかすみれにはチッカーの言葉が理解できていた。
「チィー!チッ、チッ、チィー!チィチィー?」(冷蔵庫のプリン食べちゃってもいいかなぁ?)
「ダメよ。ひかるに言いつけるわよ」
「チィー...」(チッ、ダメか)
「すみれ、店番ご苦労様!何かある?」
「チッカーがプリン食べようとしたから止めた」
「さすがすみれね。研修受けてもらって良かったわ。これからもよろしくお願いしますわ!」
「...私、まだ普通の人間だよね...」
すみれは何か超えては行けない一線を超えた気がして、無性に不安になるのであった。
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