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サンルームと妻、愛について (1
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「ハニー起きて、朝だ。」
んん、と言って顔を枕に沈め行く可愛い妻をまだ眠らせてあげたい欲求と戦いつつ、また声をかける。
「起きて、君の花たちが朝飯を待ってるぞ。それともオレが水遣りしようかなぁ?」
「だ、め...それはだめ。」
朝に弱くか細い声で主張する声すらも可愛い妻は、寝ぼけていてもダニエルに花の水遣りだけはさせない。
「ダニエルは、だめにする...」
「それ韻踏んでるの可愛いな。じゃあハニー、蜂蜜たっぷりのパンケーキが待ってるから、そろそろ起きてほしいな。」
「ぅ...ん...honeyに...honeyの、パンケーキ...たべたぃ。」
くすっと笑って、のそのそ起き上がるこの愛しい妻を夫のダニエルはハニーなんて甘ったるいあだ名で呼ぶ。
白銀の様に光る金髪を持つ彼の妻は、語学を教えている。
この国には、昔から決して多くはないが異界の言葉を話す者たちが時折やってくる。
そして水遣りの下手くそなダニエルの無二の親友は、つい最近異界の言葉を話す彼氏と結婚した。
耳から入る言語については、教会が翻訳の様な術を施してくれるのだが。
目から入る情報については、厄介だが自分で学ぶしかない。
そこで困った悪友は妻を頼ってきたのだ。
「昨日タツミの所に行ったんだろ、彼元気だったか?」
ダニエルは、親友が異界の子と結婚した事を随分喜んでいた。
強面で口下手な友が、どこをどう見ても可愛い、人の良さそうな子と結婚するんだと、式の二晩前から2人揃って飲み明かした程だ。
「元気だったよ、あげた童話ももうすぐ読み終わりそうなんだ。」
「凄いなタツミ。ハニーの"ニホンゴ"の勉強はどう?」
「それがかなりの難問なんだ。"ニホンゴ"はとてつもなく難しいんだよ。」
ぐぬぬ、と綺麗な顔に悔し気いっぱいの表情を表す妻。
「本当は、タツミの方が先生なんじゃないかと思う。最近は僕が教えて貰っている時間の方が長いんだ。」
「2人が先生だったらオレはもっと成績が上がってたかもなぁ。それで、オレの先生は今、何のお勉強中なの?」
「歌だよダニエル!タツミがあまりに愛おしそうに歌っているのを
たまたま聴いてしまって、どうしても衝動が抑えきれなかったんだ。僕はタツミの歌も、歌詞も学びたいと思ったんだ、響きが凄く綺麗なんだ...っ、だから多少、強引だった事はちょっとだけ反省してる。」
白銀の様にも見える金髪とブラウンの瞳が、しょんぼりと俯いてしまう。
「先生は真面目だなぁ。今度、タツミの好きそうなランチでも持っていこう。」
「うん。」
「タツミに教えてもらってる歌ってどんな歌なんだ?聴きたいな。」
もっもっ、とパンケーキを頬張る妻の向かいに座ってダニエルがにこっ、と微笑む。
すると、しょんぼりとしていた筈の妻は瞬く間に頰を赤らめる。
「どんな歌?」
まるでウブな初恋でもしているかの様な彼の表情が、ダニエルは気になった。
「それは、全部訳せたら教えるよ。」
可愛い口一杯に頬張っていたパンケーキをやがてお腹にしまい込んだ彼はすたすたと立ちあがり、花いっぱいのサンルームへ逃げてしまった。
朝夕欠かさない花の水遣りは、彼の日課であり仕事以外では唯一の趣味だ。
家をここに決めたのも、このサンルームがあったからだ。
ガーデンルームと言うのが正しいらしいのだが、とにかく、この部屋を見て妻がこう言ったのだ。
"ここで花を育てたい。陽の当たる花いっぱいの部屋で君と1日のひと時を過ごしたい。"
そんな風に言われて断れる男は居ない。
あれは妻からのプロポーズだとダニエルは思っている。
勿論、家は即決した。
「可愛かったなぁ、あの時のハリー。」
しかし、最近彼の趣味が1つ増えてしまった。
彼はタツミと言う友人を得てから、仕事でもそうだが"ニホンゴ"への興味が尽きないのだ。
言語学者というのは、つくづく変わった生き物で。
ある時は、家中の物を指差しながら
"イッポン"、"イッキャク"、"イッコ"と呟いていた。
ダニエルにはさっぱりだったが、後から聞けば数を数えていたのだと言う。
ふーん、と流してみたは良いが。
最近、自分に関する話が減ってきた様な気がしてならない。
「俺も、趣味に勤しみますか。」
言うが早いか、ダニエルも
早速キッチンに立ち湯を沸かし袖を捲る。
愛おしい妻の可愛い姿を見るために。
ーーーーー
「ひとかぶ、ひとはち、いちりん...」
僕は、夫の親友の妻と友達になった。
そして、彼の母国語は素晴らしく難解で美しい言語だと知る。
最初は、彼の呟く様な一言がきっかけだった。
二人の夫は、結婚式の二晩前から飲み明かしており、その片付け中に聞き慣れない音を聞いたのだ。
「酒で腹がたぷたぷになれ、バカ。」
「...た、ぷた、ぷぅ?」
翻訳できると言う教会の術でも
時々タツミの言葉は訳せない事がある。
その間にあった妙に可愛げのある音が気になったのだ。
「あーー。流石に擬音語は訳せなかったのか。」
僕には聞き取れない言葉を呟いた後、馬鹿騒ぎする夫たちから少し離れ、皮袋に水を入れ、その下を触らせてくれた。
「この触り心地、どう?」
「たぷ、たっぷ…?」
「そう。あいつらの腹も、あの調子だとそうなる。」
彼は面白い方法で、
"たぷたぷ"のニュアンスを教えてくれたのだ。
彼の母国は美しく楽しい。
自分達が雑音にしか思わなかった音も、わざわざ言葉にして、より鮮やかに情景や心情を表現する。
日々、この国の言語を教え学ぶ僕にとって"ニホンゴ"はあまりに美しく、楽しく、魅力溢れる言語だった。
好きなものの上達と言うのは驚く程早い。
僕の語彙力は瞬く間に成長し、今や数まで数えられる。
'カンジ"にはまだまだ苦戦しているが、1つの文字に深い意味が込められているのだ。
僕の頭はフル回転で、
それらを学び日々活かしている。
日課としていた花の水遣りも、楽しさが増した。
ジョウロの水は"さぁさぁ"と聞こえるし
その水を吸う土はタツミが言った通りに聞こえてきそうだ。
「たぷたぷ。」
「何だそれくそ可愛いな。」
「え、?」
ふと振り向くと、そこにはダイニングに居たはずの夫が立っていた。
そして、今の独り言を聞かれたらしい。
「水遣り終わった?」
「うん、これで終わり。」
「お茶でもどう?」
そう言ってシルバートレイを持つその姿は、流石としか言いようがない。
小さいレストランを経営する夫は、フルコースを一人であっという間に作ってしまう。
特に、彼の淹れる紅茶は完璧で珈琲党の僕をあっさり離党させた。
鼻筋の通った顔と、色っぽく真っ直ぐな眉。
蕩けるような甘さのブラウンの瞳は、自分と同じ瞳の同じなのに。
何故この男の瞳は甘く感じるのか、僕には見当も付かないが、彼の容姿は完璧で、全てが僕の好みだった。
勿論それを知っているからこそダニエルは、
時折こうして家でも尽くしてくれる。
美味しい朝食、美味しい紅茶。
格好いい夫はそれだけでもう文句の付けようも無いのに
まだ、僕の瞳を釘付けにさせる。
彼が持つだけで、そこら辺のステンレスのトレイが
本物の銀の様な高級感を漂わせる。
その彼の腕の中にいる自分は、ただのハリーなのに
気が付けば甘い蜂蜜になって彼の喉を潤しているのかもしれない。
例えばキスで。
絡め合う唾液を彼に全て飲み干して欲しいと思うのは、はしたないだろうか。
でもダニエルの喉仏がゴクリと動く様は目眩がする程セクシーで
まだ見ていたい。
「オレを見てる?」
「え、ぇ?」
「ハニーが俺を10秒も見てた。」
「うそ...、」
「本当。オレに見惚れてた?」
言われてみれば確かに。
サンルームに入ってきた彼は、入り口に立ちトレイを持っていたが
改めて見てみると、持っていたトレイはテーブルの上に置かれ
綺麗に並べられたポットと湯気の立つ紅茶の入ったティーカップが既に用意されていた。
「気付かなかった...君は所作が綺麗だから。」
嘘だ。
本当は彼の喉仏ばかりを見て、
朝から逞しい妄想力を発揮してしまった。
軽いショックで俯いた顔をふと上げると
ありがと、と言って微笑む夫がそこに居た。
白のロングTシャツと、ベージュのパンツに
シルバートレイがこんなにも似合ってしまう男を僕は知らない。
「ズルイよ、僕なんかこんな白けた金髪で童顔なのに。ダニエルは全部が格好良いんだ。」
「ハリー。オレのハニー。オレにはロビンの髪も顔も可愛い。オレの蜂蜜は世界一可愛いくて美味しくて綺麗だ...もっと言う?」
「わ、わかったよ、もう言わないでっ。」
好きな男の吐く言葉は甘く、蜂蜜を蜂蜜酒にするのはもう時間の問題かもしれない。
僕はハリーだ。ハニーじゃない。
なのに、もうすぐこの男に全部を飲み干される、それはどんなに嬉しい事だろうか。
また妄想に走ろうとする思考で、用意してくれたお茶に口を付ける。
やはり、ダニエルの煎れる紅茶は完璧だ。
「美味しい?」
「うん、ダニエルの紅茶は完璧でいつ飲んでも美味しい。僕の中を花の香りでいっぱいにしてくれる。」
生憎、紅茶に詳しくないロビンだがこの茶葉の名前だけは覚えた。
一口飲む度に自分の頬が緩んで行くのが分かる。
休日の朝からこんなに美味しい紅茶が飲めるのだ。
今日は何だって彼の言うことを聞いてあげたい。
「ねぇ、ハニー?」
「ん?」
「オレとセックスしよう、今ここで。」
ゴフッ、と口に含んだ紅茶が吹き出すのをなんとかギリギリ堪えられた筈だ。
「な...っに、を言ってるの!」
「ハニーはオレが淹れた紅茶が好きだろ?それ飲んだら何でもオレのお願い聞いてくれちゃう事、知ってるんだよなぁ。」
「そん、なわけ無いだろ、!」
「誤魔化すのか?オレ達、もう新婚さんじゃ無いんだから。騙されないよ。」
もう結婚生活3年目。
丁度タツミがコチラへ来た年に結婚し、ダニエルの生まれ育ったこの街へ越してきたのだ。
「いやだ。この一杯を飲み終わるまでは、絶対に嫌だ。」
「良いよ。待ってる。スコーンも食べてみて。これ新作なんだ。」
そう言って差し出されたのは、ピンク色のスコーン。
それと、真っ赤なジャム。
「薔薇の匂いがする。」
「食べてみて。」
にっこり笑ってダニエルが勧めてくる。
僕か水遣りをしている間に彼はスコーンを焼き、お茶を用意してくれたのだ。
自分たちは夫婦なのだ、抱かれる事に抵抗は無いし、
何より彼のセックスは好きだ。
それに彼を愛しているし、この場所も特に問題は無い。
ガラス張りではあるが、
人目に付かない様に周りには背の高い植木を置いてある。
それに、断りもなく門を入ってくる知り合いは僕にも彼にも居ない。
それなのに、
意地を張って少しお茶の減ったカップを持ち、
絶対離さないと言うように握って身構えてしまう。
まだ、僕はお茶を楽しみたいっ、筈だ。
その姿が、
夫の欲情を煽っているとも知らずに。
ーーーーー
お預けも悪くない、と思ってしまう。
取って食われるまでのカウントダウンを自分でしてしまっている可愛い妻の、可愛いミスに身が燃えて仕様がないダニエルは、彼を怖がらせない様優しく微笑んで言った。
「良いよ、君が飲み終わるまで俺は君を見てるよハニー。」
「く…っ、」
それから粘る事15分。
負けたのはハリーだった。
新作のスコーンは美味しかったらしく、全く持って時間稼ぎにはならなかった。
ぱくぱくと食べ勧め、ひとつ食べ終えては未練がましく手元を見つめる可愛い妻をこの家で一体誰が咎めるというのか。
まだあるよ、と言って
もうひとつ勧めると嬉しそうに微笑んでまたぱくぱくと食べてくれる。
それから喉を潤すために美味しいお茶を味わって、
カップの中身をまた少し減らしてしまう。
その度に悔しそうな表情を浮べるロビンに
ひたすら甘いダニエルは優しく紅茶を注ぎ足していく。
「まだ"一杯"は飲み終えてないだろ?」
ぱぁ、と煌くブラウンの瞳が純粋で無垢で可愛い。
我慢に我慢を重ねるダニエルを
静かに焚き付けてるが
可愛い妻への貢物は、全て美味しく味わって欲しい。
"墓穴を掘ったのはオレの方かもー。"
にこにこ顔で紅茶を味わう彼の
そのカップを取り上げ切れない自分の甘さがなんだか憎く思えて来た。
だが、ポットの中身は増えたりしない。
ダニエルは愛おしい妻の全身をじっと瞳で味わっていた。
ーーーーー
カタン、と
空になったカップをテーブルに置く。
ふぅ、と吐く息がなんだか熱い。
それに少し震えている。
きっとダニエルの熱い視線のせいだ。
髪や瞳や喉や指先まで、
彼の瞳が余すとこなく見詰めるせいで身体が妙に熱を持っている。
鼻を掠める紅茶の香りも相まって、頭の中まで花畑になりそうだった。
それに、スコーンに入っていた薔薇の花びらや薔薇の香り、それに苺とベリーのジャムが思考力をも蕩けさせる。
"美味しかった。"
愛する人に白昼堂々求められ
こうして美味しいおやつとお茶まで用意されて、嫌な筈がない。
僕の機嫌を取るのが抜群に上手いんだ。
「良いのハニー。もう飲み終わった?」
「うん。」
「じゃあ、今度はオレがいただくとしますか。」
椅子からスラリと立ち上がったダニエルは、真っ直ぐ僕の方へ向かってくると突如その場に片膝を着いてみせた。
「ダニエ、ル...!?」
「何?」
「なに、してるのさ…!」
嗚呼。
何時に無く真っ赤な顔で慌てふためく妻は最高に愛らしかった。
5年付き合って、プロポーズした時もこうだった。
アパートで、オレの淹れた紅茶をハリーが嬉しそうににこにこして飲んでいたのを邪魔して、傅いて、プロポーズした。
正直、紳士ぶってるなと思わなくも無い。
親友と話せば、自分の紳士振りは一欠片もなく取り払われ
只の嫁が好き過ぎるバカな男になってしまう。
「キスしてハリー。オレ、ここからじゃ届かない。」
「...立てば良いのに。」
そう呟きながら、さらりと美しい髪が耳から溢れてオレの視界に降ってくる。同時に花の香りの唇が寄せられた。
「花の匂いがする。」
「サ、サンルームだからね。」
話す合間にも、妻は触れるだけのキスをたくさんくれる。
「俺の淹れる紅茶の蜜は最高に美味いだろうな。」
「ん...なに?」
唇だけでは足らなかったのか、ハニーは顔中にキスをし始めた。
「いいや只の独り言。君はオレの紅茶に夢中だなって言ったんだよ。」
「そうだよ。最近は、ダニエルの紅茶しか飲んで無い。でも夏に飲んだレモン水も美味しかった。」
オレは妻の唇から溢れてくる唾液をコクリと喉を鳴らして嚥下した。
「それ恥ずかしい、」
「ふ、美味かった。椅子ごとこっちを向いて。」
ガタリとテーブルに収まっていた妻のしなやかな片足を手に取ると
ダニエルは躊躇いもなく、恭しく彼の足の甲へキスをした。
「ダニーっ、」
その唇で、うっすら歯を立て片手で履いていた靴を脱がせていく。
これで、彼の白く綺麗な足を隠す邪魔ものは無くなった。
「ダニー、ンんっ。」
現れた指先の一本一本が、愛おしい。
先ずは親指から口付け、爪をぺろりと舐めるとそのまま指を咥内に含んでいく。
足先から駆け抜ける小さな雷の感覚に、ハリーは理性という武器を奪われ始めていた。
その証拠に、彼はもう夫の事をダニエルとは呼んでいない。
普段は恥ずかしがって呼ばないが、彼の愛称を妻も大切に想っていた。
「ダニー、ぁ、あ。♡」
指と指の間が弱いらしい妻の足先を、器用に舌で舐めていく。
やがて、空いた右手がロビンの太ももと足の付け根を堪能し終える頃には二人して息が上がっていた。
「腰を浮かせて。下着、もう要らないだろ。」
「う、ん。」
部屋着の緩いウエストゴムのパンツと、下着が一緒に引き下ろされる。不意に外気に触れた熱がヒクリと震えてみせた。
「可愛い、少し勃ってるな。」
「ぁ...ぁあ、♡ゃ...ぁ、んぁっあ、くっ」
ロビンの先端に、ちゅと吸い付くと
そのまま緩やかに咥え込む。
舌を這わせる度に上がる控えめな声と、ピクピク震える腰と熱欲は
健気で色気が匂い立つようだ。
妻の蜜を搾り取ろうと、震える先端に舌先を小刻みに押し付け、溢れてきた所で音を立てて啜る。
更に裏側をベロリと舐め上げてやれば
カサが増し、だらだらと蜜が増えていく。
「ダニー、ダニー」
切なげに自分の名前を呼ぶ声が、ダニエルの下腹部に直結する。
今日のセックスは尽くすと決めたのに、
我ながら堪え性の無い下半身だと苦笑してしまう。
「ごめんハリー。オレのも触って。」
「ん...足で?」
戸惑う妻の細い足首にそっと指を添え、自分の熱へと導く。
「ぁ、熱いっ。」
「ハリーが可愛いから、うっ、あぁっ、綺麗だっ。」
足先に触れる熱を、妻は意外な程積極的に愛した。
ズボンで覆われてはいるが、完全に勃ち上がっている熱を足先で優しく擦ったかと思うと、足裏でまるで踏むように押しつけてくる。
「く...っ、」
真面目で、語学の研究に熱意を傾ける彼にこんな事をさせているのだと思うと言いようのない背徳感と優越感に満たされてしまう。
彼がこんな事をするのは自分だけだ。
この陽の当たる朝の明るい時間に、2人きりのサンルームで花に囲まれブラウンのウッドチェアに白い尻と濡れた欲望を丸出しにしたその無防備な姿を見る事が出来るのは、ーー自分だけなのだ。
「ダニー、ねぇ...お尻がひくひくする。」
お互いの熱心な愛撫で先に音を上げたのはハリーだった。
「あぁ...いいよっ、俺に見せて。」
「うん、見て…♡ダニー。」
蕩けきった顔で、椅子へ後ろ向きに座り直したハリーが、
ヒクつくというお尻をグイグイとダニエルの眼前に見せつけて来る。
「エロスだ...」
言うが早いかダニエルは、顔面を押し当てめり込ませるようにして
ロビンの尻の柔らかさを味わう。
尻肉を指で少し強めに揉んでやれば、
ロビンは蕩けそうな声を上げ鳴いてみせる。
「ぁあー、♡お尻...あ、んぅ。」
顔いっぱいに尻肉を感じて、舌先でヌルヌルと孔を溶かしていく。
ふーふーっ、乱れる息、濡れた音と、小さな喘ぎ声がサンルームに響く。
ぬぷっ。♡
ぬふぬふっ、♡にゅぷっ。♡
「はいって、る、お尻に舌が...♡はいってる、んぅーーっ。♡」
どれ程尻孔を愛撫し続けたのか、とにかく気が済むまで舐めしゃぶって感触を楽しんだ。
「ダニーぃ、だにっ、もう...いいからっ、」
「ん?」
いやいや、と鳴きながら言いたい事を分かってくれないダニエルに
焦れた様にハリーが右手を自分の尻孔へと伸ばす。
「ハリー?」
そこは、柔らかく閉じたりして収縮を繰り返す。
オレがそうした。
「ここに...来て。」
ダニー、と溜息の様に出た声が夫の理性を崩壊させる。
花に満たされた二人きりのサンルームに、いつもの部屋着姿だが。
下半身のみを曝け出し愛を乞う。
脳裏に、蜂蜜に溺れ虜になる憐れな男の絵が浮かぶ。
もう他のどれでも駄目なんだ。
何時しかそれを手に入れる為に傅き、どうかその蜜を分けてくれないか、と。
その為ならより一層彼に尽くしてしまう。
甘い甘い特別な蜂蜜を独り占めするために。
続
んん、と言って顔を枕に沈め行く可愛い妻をまだ眠らせてあげたい欲求と戦いつつ、また声をかける。
「起きて、君の花たちが朝飯を待ってるぞ。それともオレが水遣りしようかなぁ?」
「だ、め...それはだめ。」
朝に弱くか細い声で主張する声すらも可愛い妻は、寝ぼけていてもダニエルに花の水遣りだけはさせない。
「ダニエルは、だめにする...」
「それ韻踏んでるの可愛いな。じゃあハニー、蜂蜜たっぷりのパンケーキが待ってるから、そろそろ起きてほしいな。」
「ぅ...ん...honeyに...honeyの、パンケーキ...たべたぃ。」
くすっと笑って、のそのそ起き上がるこの愛しい妻を夫のダニエルはハニーなんて甘ったるいあだ名で呼ぶ。
白銀の様に光る金髪を持つ彼の妻は、語学を教えている。
この国には、昔から決して多くはないが異界の言葉を話す者たちが時折やってくる。
そして水遣りの下手くそなダニエルの無二の親友は、つい最近異界の言葉を話す彼氏と結婚した。
耳から入る言語については、教会が翻訳の様な術を施してくれるのだが。
目から入る情報については、厄介だが自分で学ぶしかない。
そこで困った悪友は妻を頼ってきたのだ。
「昨日タツミの所に行ったんだろ、彼元気だったか?」
ダニエルは、親友が異界の子と結婚した事を随分喜んでいた。
強面で口下手な友が、どこをどう見ても可愛い、人の良さそうな子と結婚するんだと、式の二晩前から2人揃って飲み明かした程だ。
「元気だったよ、あげた童話ももうすぐ読み終わりそうなんだ。」
「凄いなタツミ。ハニーの"ニホンゴ"の勉強はどう?」
「それがかなりの難問なんだ。"ニホンゴ"はとてつもなく難しいんだよ。」
ぐぬぬ、と綺麗な顔に悔し気いっぱいの表情を表す妻。
「本当は、タツミの方が先生なんじゃないかと思う。最近は僕が教えて貰っている時間の方が長いんだ。」
「2人が先生だったらオレはもっと成績が上がってたかもなぁ。それで、オレの先生は今、何のお勉強中なの?」
「歌だよダニエル!タツミがあまりに愛おしそうに歌っているのを
たまたま聴いてしまって、どうしても衝動が抑えきれなかったんだ。僕はタツミの歌も、歌詞も学びたいと思ったんだ、響きが凄く綺麗なんだ...っ、だから多少、強引だった事はちょっとだけ反省してる。」
白銀の様にも見える金髪とブラウンの瞳が、しょんぼりと俯いてしまう。
「先生は真面目だなぁ。今度、タツミの好きそうなランチでも持っていこう。」
「うん。」
「タツミに教えてもらってる歌ってどんな歌なんだ?聴きたいな。」
もっもっ、とパンケーキを頬張る妻の向かいに座ってダニエルがにこっ、と微笑む。
すると、しょんぼりとしていた筈の妻は瞬く間に頰を赤らめる。
「どんな歌?」
まるでウブな初恋でもしているかの様な彼の表情が、ダニエルは気になった。
「それは、全部訳せたら教えるよ。」
可愛い口一杯に頬張っていたパンケーキをやがてお腹にしまい込んだ彼はすたすたと立ちあがり、花いっぱいのサンルームへ逃げてしまった。
朝夕欠かさない花の水遣りは、彼の日課であり仕事以外では唯一の趣味だ。
家をここに決めたのも、このサンルームがあったからだ。
ガーデンルームと言うのが正しいらしいのだが、とにかく、この部屋を見て妻がこう言ったのだ。
"ここで花を育てたい。陽の当たる花いっぱいの部屋で君と1日のひと時を過ごしたい。"
そんな風に言われて断れる男は居ない。
あれは妻からのプロポーズだとダニエルは思っている。
勿論、家は即決した。
「可愛かったなぁ、あの時のハリー。」
しかし、最近彼の趣味が1つ増えてしまった。
彼はタツミと言う友人を得てから、仕事でもそうだが"ニホンゴ"への興味が尽きないのだ。
言語学者というのは、つくづく変わった生き物で。
ある時は、家中の物を指差しながら
"イッポン"、"イッキャク"、"イッコ"と呟いていた。
ダニエルにはさっぱりだったが、後から聞けば数を数えていたのだと言う。
ふーん、と流してみたは良いが。
最近、自分に関する話が減ってきた様な気がしてならない。
「俺も、趣味に勤しみますか。」
言うが早いか、ダニエルも
早速キッチンに立ち湯を沸かし袖を捲る。
愛おしい妻の可愛い姿を見るために。
ーーーーー
「ひとかぶ、ひとはち、いちりん...」
僕は、夫の親友の妻と友達になった。
そして、彼の母国語は素晴らしく難解で美しい言語だと知る。
最初は、彼の呟く様な一言がきっかけだった。
二人の夫は、結婚式の二晩前から飲み明かしており、その片付け中に聞き慣れない音を聞いたのだ。
「酒で腹がたぷたぷになれ、バカ。」
「...た、ぷた、ぷぅ?」
翻訳できると言う教会の術でも
時々タツミの言葉は訳せない事がある。
その間にあった妙に可愛げのある音が気になったのだ。
「あーー。流石に擬音語は訳せなかったのか。」
僕には聞き取れない言葉を呟いた後、馬鹿騒ぎする夫たちから少し離れ、皮袋に水を入れ、その下を触らせてくれた。
「この触り心地、どう?」
「たぷ、たっぷ…?」
「そう。あいつらの腹も、あの調子だとそうなる。」
彼は面白い方法で、
"たぷたぷ"のニュアンスを教えてくれたのだ。
彼の母国は美しく楽しい。
自分達が雑音にしか思わなかった音も、わざわざ言葉にして、より鮮やかに情景や心情を表現する。
日々、この国の言語を教え学ぶ僕にとって"ニホンゴ"はあまりに美しく、楽しく、魅力溢れる言語だった。
好きなものの上達と言うのは驚く程早い。
僕の語彙力は瞬く間に成長し、今や数まで数えられる。
'カンジ"にはまだまだ苦戦しているが、1つの文字に深い意味が込められているのだ。
僕の頭はフル回転で、
それらを学び日々活かしている。
日課としていた花の水遣りも、楽しさが増した。
ジョウロの水は"さぁさぁ"と聞こえるし
その水を吸う土はタツミが言った通りに聞こえてきそうだ。
「たぷたぷ。」
「何だそれくそ可愛いな。」
「え、?」
ふと振り向くと、そこにはダイニングに居たはずの夫が立っていた。
そして、今の独り言を聞かれたらしい。
「水遣り終わった?」
「うん、これで終わり。」
「お茶でもどう?」
そう言ってシルバートレイを持つその姿は、流石としか言いようがない。
小さいレストランを経営する夫は、フルコースを一人であっという間に作ってしまう。
特に、彼の淹れる紅茶は完璧で珈琲党の僕をあっさり離党させた。
鼻筋の通った顔と、色っぽく真っ直ぐな眉。
蕩けるような甘さのブラウンの瞳は、自分と同じ瞳の同じなのに。
何故この男の瞳は甘く感じるのか、僕には見当も付かないが、彼の容姿は完璧で、全てが僕の好みだった。
勿論それを知っているからこそダニエルは、
時折こうして家でも尽くしてくれる。
美味しい朝食、美味しい紅茶。
格好いい夫はそれだけでもう文句の付けようも無いのに
まだ、僕の瞳を釘付けにさせる。
彼が持つだけで、そこら辺のステンレスのトレイが
本物の銀の様な高級感を漂わせる。
その彼の腕の中にいる自分は、ただのハリーなのに
気が付けば甘い蜂蜜になって彼の喉を潤しているのかもしれない。
例えばキスで。
絡め合う唾液を彼に全て飲み干して欲しいと思うのは、はしたないだろうか。
でもダニエルの喉仏がゴクリと動く様は目眩がする程セクシーで
まだ見ていたい。
「オレを見てる?」
「え、ぇ?」
「ハニーが俺を10秒も見てた。」
「うそ...、」
「本当。オレに見惚れてた?」
言われてみれば確かに。
サンルームに入ってきた彼は、入り口に立ちトレイを持っていたが
改めて見てみると、持っていたトレイはテーブルの上に置かれ
綺麗に並べられたポットと湯気の立つ紅茶の入ったティーカップが既に用意されていた。
「気付かなかった...君は所作が綺麗だから。」
嘘だ。
本当は彼の喉仏ばかりを見て、
朝から逞しい妄想力を発揮してしまった。
軽いショックで俯いた顔をふと上げると
ありがと、と言って微笑む夫がそこに居た。
白のロングTシャツと、ベージュのパンツに
シルバートレイがこんなにも似合ってしまう男を僕は知らない。
「ズルイよ、僕なんかこんな白けた金髪で童顔なのに。ダニエルは全部が格好良いんだ。」
「ハリー。オレのハニー。オレにはロビンの髪も顔も可愛い。オレの蜂蜜は世界一可愛いくて美味しくて綺麗だ...もっと言う?」
「わ、わかったよ、もう言わないでっ。」
好きな男の吐く言葉は甘く、蜂蜜を蜂蜜酒にするのはもう時間の問題かもしれない。
僕はハリーだ。ハニーじゃない。
なのに、もうすぐこの男に全部を飲み干される、それはどんなに嬉しい事だろうか。
また妄想に走ろうとする思考で、用意してくれたお茶に口を付ける。
やはり、ダニエルの煎れる紅茶は完璧だ。
「美味しい?」
「うん、ダニエルの紅茶は完璧でいつ飲んでも美味しい。僕の中を花の香りでいっぱいにしてくれる。」
生憎、紅茶に詳しくないロビンだがこの茶葉の名前だけは覚えた。
一口飲む度に自分の頬が緩んで行くのが分かる。
休日の朝からこんなに美味しい紅茶が飲めるのだ。
今日は何だって彼の言うことを聞いてあげたい。
「ねぇ、ハニー?」
「ん?」
「オレとセックスしよう、今ここで。」
ゴフッ、と口に含んだ紅茶が吹き出すのをなんとかギリギリ堪えられた筈だ。
「な...っに、を言ってるの!」
「ハニーはオレが淹れた紅茶が好きだろ?それ飲んだら何でもオレのお願い聞いてくれちゃう事、知ってるんだよなぁ。」
「そん、なわけ無いだろ、!」
「誤魔化すのか?オレ達、もう新婚さんじゃ無いんだから。騙されないよ。」
もう結婚生活3年目。
丁度タツミがコチラへ来た年に結婚し、ダニエルの生まれ育ったこの街へ越してきたのだ。
「いやだ。この一杯を飲み終わるまでは、絶対に嫌だ。」
「良いよ。待ってる。スコーンも食べてみて。これ新作なんだ。」
そう言って差し出されたのは、ピンク色のスコーン。
それと、真っ赤なジャム。
「薔薇の匂いがする。」
「食べてみて。」
にっこり笑ってダニエルが勧めてくる。
僕か水遣りをしている間に彼はスコーンを焼き、お茶を用意してくれたのだ。
自分たちは夫婦なのだ、抱かれる事に抵抗は無いし、
何より彼のセックスは好きだ。
それに彼を愛しているし、この場所も特に問題は無い。
ガラス張りではあるが、
人目に付かない様に周りには背の高い植木を置いてある。
それに、断りもなく門を入ってくる知り合いは僕にも彼にも居ない。
それなのに、
意地を張って少しお茶の減ったカップを持ち、
絶対離さないと言うように握って身構えてしまう。
まだ、僕はお茶を楽しみたいっ、筈だ。
その姿が、
夫の欲情を煽っているとも知らずに。
ーーーーー
お預けも悪くない、と思ってしまう。
取って食われるまでのカウントダウンを自分でしてしまっている可愛い妻の、可愛いミスに身が燃えて仕様がないダニエルは、彼を怖がらせない様優しく微笑んで言った。
「良いよ、君が飲み終わるまで俺は君を見てるよハニー。」
「く…っ、」
それから粘る事15分。
負けたのはハリーだった。
新作のスコーンは美味しかったらしく、全く持って時間稼ぎにはならなかった。
ぱくぱくと食べ勧め、ひとつ食べ終えては未練がましく手元を見つめる可愛い妻をこの家で一体誰が咎めるというのか。
まだあるよ、と言って
もうひとつ勧めると嬉しそうに微笑んでまたぱくぱくと食べてくれる。
それから喉を潤すために美味しいお茶を味わって、
カップの中身をまた少し減らしてしまう。
その度に悔しそうな表情を浮べるロビンに
ひたすら甘いダニエルは優しく紅茶を注ぎ足していく。
「まだ"一杯"は飲み終えてないだろ?」
ぱぁ、と煌くブラウンの瞳が純粋で無垢で可愛い。
我慢に我慢を重ねるダニエルを
静かに焚き付けてるが
可愛い妻への貢物は、全て美味しく味わって欲しい。
"墓穴を掘ったのはオレの方かもー。"
にこにこ顔で紅茶を味わう彼の
そのカップを取り上げ切れない自分の甘さがなんだか憎く思えて来た。
だが、ポットの中身は増えたりしない。
ダニエルは愛おしい妻の全身をじっと瞳で味わっていた。
ーーーーー
カタン、と
空になったカップをテーブルに置く。
ふぅ、と吐く息がなんだか熱い。
それに少し震えている。
きっとダニエルの熱い視線のせいだ。
髪や瞳や喉や指先まで、
彼の瞳が余すとこなく見詰めるせいで身体が妙に熱を持っている。
鼻を掠める紅茶の香りも相まって、頭の中まで花畑になりそうだった。
それに、スコーンに入っていた薔薇の花びらや薔薇の香り、それに苺とベリーのジャムが思考力をも蕩けさせる。
"美味しかった。"
愛する人に白昼堂々求められ
こうして美味しいおやつとお茶まで用意されて、嫌な筈がない。
僕の機嫌を取るのが抜群に上手いんだ。
「良いのハニー。もう飲み終わった?」
「うん。」
「じゃあ、今度はオレがいただくとしますか。」
椅子からスラリと立ち上がったダニエルは、真っ直ぐ僕の方へ向かってくると突如その場に片膝を着いてみせた。
「ダニエ、ル...!?」
「何?」
「なに、してるのさ…!」
嗚呼。
何時に無く真っ赤な顔で慌てふためく妻は最高に愛らしかった。
5年付き合って、プロポーズした時もこうだった。
アパートで、オレの淹れた紅茶をハリーが嬉しそうににこにこして飲んでいたのを邪魔して、傅いて、プロポーズした。
正直、紳士ぶってるなと思わなくも無い。
親友と話せば、自分の紳士振りは一欠片もなく取り払われ
只の嫁が好き過ぎるバカな男になってしまう。
「キスしてハリー。オレ、ここからじゃ届かない。」
「...立てば良いのに。」
そう呟きながら、さらりと美しい髪が耳から溢れてオレの視界に降ってくる。同時に花の香りの唇が寄せられた。
「花の匂いがする。」
「サ、サンルームだからね。」
話す合間にも、妻は触れるだけのキスをたくさんくれる。
「俺の淹れる紅茶の蜜は最高に美味いだろうな。」
「ん...なに?」
唇だけでは足らなかったのか、ハニーは顔中にキスをし始めた。
「いいや只の独り言。君はオレの紅茶に夢中だなって言ったんだよ。」
「そうだよ。最近は、ダニエルの紅茶しか飲んで無い。でも夏に飲んだレモン水も美味しかった。」
オレは妻の唇から溢れてくる唾液をコクリと喉を鳴らして嚥下した。
「それ恥ずかしい、」
「ふ、美味かった。椅子ごとこっちを向いて。」
ガタリとテーブルに収まっていた妻のしなやかな片足を手に取ると
ダニエルは躊躇いもなく、恭しく彼の足の甲へキスをした。
「ダニーっ、」
その唇で、うっすら歯を立て片手で履いていた靴を脱がせていく。
これで、彼の白く綺麗な足を隠す邪魔ものは無くなった。
「ダニー、ンんっ。」
現れた指先の一本一本が、愛おしい。
先ずは親指から口付け、爪をぺろりと舐めるとそのまま指を咥内に含んでいく。
足先から駆け抜ける小さな雷の感覚に、ハリーは理性という武器を奪われ始めていた。
その証拠に、彼はもう夫の事をダニエルとは呼んでいない。
普段は恥ずかしがって呼ばないが、彼の愛称を妻も大切に想っていた。
「ダニー、ぁ、あ。♡」
指と指の間が弱いらしい妻の足先を、器用に舌で舐めていく。
やがて、空いた右手がロビンの太ももと足の付け根を堪能し終える頃には二人して息が上がっていた。
「腰を浮かせて。下着、もう要らないだろ。」
「う、ん。」
部屋着の緩いウエストゴムのパンツと、下着が一緒に引き下ろされる。不意に外気に触れた熱がヒクリと震えてみせた。
「可愛い、少し勃ってるな。」
「ぁ...ぁあ、♡ゃ...ぁ、んぁっあ、くっ」
ロビンの先端に、ちゅと吸い付くと
そのまま緩やかに咥え込む。
舌を這わせる度に上がる控えめな声と、ピクピク震える腰と熱欲は
健気で色気が匂い立つようだ。
妻の蜜を搾り取ろうと、震える先端に舌先を小刻みに押し付け、溢れてきた所で音を立てて啜る。
更に裏側をベロリと舐め上げてやれば
カサが増し、だらだらと蜜が増えていく。
「ダニー、ダニー」
切なげに自分の名前を呼ぶ声が、ダニエルの下腹部に直結する。
今日のセックスは尽くすと決めたのに、
我ながら堪え性の無い下半身だと苦笑してしまう。
「ごめんハリー。オレのも触って。」
「ん...足で?」
戸惑う妻の細い足首にそっと指を添え、自分の熱へと導く。
「ぁ、熱いっ。」
「ハリーが可愛いから、うっ、あぁっ、綺麗だっ。」
足先に触れる熱を、妻は意外な程積極的に愛した。
ズボンで覆われてはいるが、完全に勃ち上がっている熱を足先で優しく擦ったかと思うと、足裏でまるで踏むように押しつけてくる。
「く...っ、」
真面目で、語学の研究に熱意を傾ける彼にこんな事をさせているのだと思うと言いようのない背徳感と優越感に満たされてしまう。
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「ダニー、ねぇ...お尻がひくひくする。」
お互いの熱心な愛撫で先に音を上げたのはハリーだった。
「あぁ...いいよっ、俺に見せて。」
「うん、見て…♡ダニー。」
蕩けきった顔で、椅子へ後ろ向きに座り直したハリーが、
ヒクつくというお尻をグイグイとダニエルの眼前に見せつけて来る。
「エロスだ...」
言うが早いかダニエルは、顔面を押し当てめり込ませるようにして
ロビンの尻の柔らかさを味わう。
尻肉を指で少し強めに揉んでやれば、
ロビンは蕩けそうな声を上げ鳴いてみせる。
「ぁあー、♡お尻...あ、んぅ。」
顔いっぱいに尻肉を感じて、舌先でヌルヌルと孔を溶かしていく。
ふーふーっ、乱れる息、濡れた音と、小さな喘ぎ声がサンルームに響く。
ぬぷっ。♡
ぬふぬふっ、♡にゅぷっ。♡
「はいって、る、お尻に舌が...♡はいってる、んぅーーっ。♡」
どれ程尻孔を愛撫し続けたのか、とにかく気が済むまで舐めしゃぶって感触を楽しんだ。
「ダニーぃ、だにっ、もう...いいからっ、」
「ん?」
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何時しかそれを手に入れる為に傅き、どうかその蜜を分けてくれないか、と。
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甘い甘い特別な蜂蜜を独り占めするために。
続
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