甘々にすっ転べ全集

mimimi456/都古

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39 てぶくろ

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#てぶくろ

在宅になっていよいよ、低燃費に拍車が掛かった。
朝飯 いらん
昼飯 いらん
晩飯 米炊いてのりたま食うか
コーヒーと葡萄やらマスカット、桃のゼリー飲料か。
コーヒー味のプロテインバーを合間に摘む。

かと言ってデカい金が貯まるという事もなく。
小銭が少しずつ積み上がって行くくらいか。

只、唯一の楽しみが彼女の言うままに買う身の回りの物たち。

「ちょっと遅いけどクリスマスだからねっ」

そう言って手袋をくれた。

「一日中家にいるのに?」

彼女がくれるなら何だって嬉しい。
けど、使ってあげられる場面が無いのは辛い。

「だからだよっ。デートの時はして来てね。いっつも早く来るくせにダウンとパーカーなんて寒過ぎるよ。」

「マフラー有るから。」

「それはこの前のデートで私が買わせたヤツです。」

「気に入ってる。あと温い。」

「ほらねっ。だから手袋もして。」

もそっと手に嵌った黒の手袋。
自分に金を掛ける意味が分からんのに、彼女が選ぶなら何でも嬉しい。

けど。

「あれ、気に入らなかった?黒は嫌?」

シャカシャカ素材が嫌いだった、と首を傾げるけど。
そうじゃ無い。

「手、繋ぎたい、」

「良いよっ。」

あっという間も無く手をぎゅっと繋いでくれた彼女の体温が今日は分からないけど、
何でこのひと手袋してないんだ。

「今日行くとこ、決めた。」

「え、どこ?」

「君の手袋買いに行く。あと帽子。」

「えっ、良いよ。」

「ダメ。あと、君が俺に服を着せたがる気持ちが分かった。俺も手袋買わせたい。付けて欲しい。」

スポン、とくれた手袋の右手側を彼女に嵌めて
左手をダウンのポケットに突っ込んだ。
こんな事、陽の者のする事だって思いながら、彼女の冷たい指を放置させない為なら陰キャも必死になる。

「ふふっ、かっこいい。」

「揶揄わないで、結構、恥ずかしい。」

「がんばれ、がんばれっ。」

変な声が出そうになって奥歯を噛んで耐えた。

三次元彼女が可愛すぎて血反吐出そう。
今の台詞、もう一回言って欲しい。録音したい。
エコー掛けて毎日聞けば仕事頑張れそう。

名前も呼んでもらって、目覚ましボイスも欲しい。
飯も食べたか聞いてくれたら、毎日食えそう。

「どうかした?」

「あ、いや、ちょっと考えてた。」
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