甘々にすっ転べ全集

mimimi456/都古

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36 ゆずの香り

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「珍しいな。」

「そ、今日は冬至だからね。」

どうりで風呂に柚子の皮が沈んでいた訳だ。
中身はどうしたんだろうと思ったが。
目の前で酒になるようだ。

「年末近いから厄除けしなきゃ。今日はとりわけ夜が長いんだよ。」

「お前はもう風呂は済んだのか。」

「ううん、今から入る。」

「それなら代わる。お前はゆっくり入って来い。」

ちょっとしたサプライズだ。
時間も掛かる、と言えば素直に着替えを取りに行った。

そうは言っても材料は冷蔵庫にある物だけだ。
4個で138円の洋梨のヨーグルト、
238円のホットケーキミックスがあと1袋、それと。

「ん?」

記憶違いが生じたらしい。困ったな。

ーーー

「パンケーキだぁっ。しかもシューアイス乗ってるっ。可愛い。」


ーー可愛いのか。

パンケーキの上にゆずを混ぜたヨーグルトソースの更に上にシュー生地に包まれたバニラアイスを半分に切って乗せた。

「普通のバニラアイスが無くてな。」

「え?全然気にしなぁい。これ可愛いよ。」

「そうか。」

「うん。今度はイチゴ味買う。ピンクだったんだよねー。」


予定では、バニラアイスをカレースプーンで掬って乗せるつもりだったんだが。
シューアイスじゃ、仕方なかった。
そうだな。
前の俺ならダメな奴だな自分は、と責めていただろう。

何にでも完璧である事を強要する所だが。

彼女が可愛いと言うのなら充分、成功だ。
まじまじとシューアイスの乗ったパンケーキを見る。

その間に彼女が作りかけていたゆず入り酎ハイが出来た。

「いただきまぁーす。」

にこにこしてる彼女が居るなら。
俺は完璧じゃなくて良い。

傾けたグラスからゆずの香りの良い匂いがした。


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