甘々にすっ転べ全集

mimimi456/都古

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30 イルミネーション

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心地良い重さの
同じ名前の絵の具を絞り出して固めた様な
紡錘形の果物で
爆弾騒ぎを起こす犯人

という妄想をした人を思い出す。

私も
ここ暫く続いていた憂鬱を晴らしたくて、少し緩やかに帰路を歩いていた。

「そうだ。」

目の前のやけに眩しい目障りと言えなくも無い電飾
私も普段なら素直な気持ちで綺麗だと言えた。

けれどここ暫くの私は違う。
そしてたった今から
私はどうにもこの込み上げる思いを堪えきれないでいる。

私も。

私も同じ妄想に取り憑かれる。

私も。
あの美しいイルミネーションに。

ひとつだけ妙にズレた奴があった。
私はそれを元有った様な空気感で置き直す。

この時、私は極々小さな
そうだな。百均の胡桃ボタンを忍ばせる。

「ふ、ふふっ。」

分かってる。
これは妄想。

現実では只、綺麗な電飾に手を触れただけの女。

けれど今
私の心は高揚している。
憂鬱は風と共にさっと吹き飛んだ。

「胡桃ボタンか。」


我ながら良いセンスだ。
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