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3 永遠に
しおりを挟む中程になった風呂の湯に首まで沈み込み、波紋に揺れる自分の体をぼーっと眺める。
眼鏡を外しているお陰で輪郭はぼやけている。
分かるのは色くらいだ。
風呂の壁、浴槽と、体、あの青色はボディタオル。
あっちの銀色は鏡。
この家には永遠に帰ってこないつもりで居た。
20で卒業後。
21までに貯めた金を持って家を出たのに。
30になった今、あの頃感じていた生きづらさはだいぶ薄まっている。
風呂の壁、水色の浴槽、この体さえ憎かったのに。
今はだいぶ良い。
孤独は永遠ではなかったし
自由は思ったより苦労が要る。
只、覚悟だけ握って出た。
同じように風呂に沈み込んだ9年前の自分を褒めてあげたい。
「よくやったな。」
呆れつつ、褒めてやるんだ。
遅い反抗期だったな、と。
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