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ユーグレン究極の選択
ピアディの託宣~愛か国か~
しおりを挟むやがて、ピアディがいつものユーグレンやトオン相手限定の「へっ」とイラっとくる笑いを見せた。
「ぷぅ(ふふん。たかが人間の王族ごときがこの神人ピアディさまに楯突こうとはおろかなり)」
「私たちの間に割り込んできたのは貴殿のほうだぞ?」
「ぷぅ(われはわれのしたいようにするまでなのだ。よーし!)」
小さなウパルパは、大きく息を吸い込んでお腹の底の底まで溜め込んだ。
ピアディの半透明ベビーピンクの身体が虹色を帯びたネオンイエローの魔力を陽炎のようにまとい始める。
そして、勢いよくぷぅっと吐き出した。
「ぷぅ!(きさまは鮭の人とも、カズンとも添い遂げることかなわず! われ神人ピアディ宣言す!)」
「!? 呪詛か!?」
「ぷぅ(ノーウ! 愛を得られぬ代わりに、きさまが王となったあかつきには、玉座にある限り名君として讃えられ国はきわめて繁栄するであろう!)」」
「な、何という……何ということを……!」
「ぷぅ(愛をえらべばきさまの国はふつう。すっごくふつう)」
「? 愛を……選んでも良い……というのか?」
「ぷぅ(われは魔王おばばみたいにいじわるじゃないのだ。祝福特化のかわゆいウパルパ。どちらを選んでもきさまへの祝福ぞ。ありがたくおもえなのだー)」
言うだけ言って、とんでもウパルパはふと動きを止めて、小首を傾げるような仕草をした。
「ぷぅ(われなら愛も豊かさもどっちもおいしいとこ取りするのだ……。だがきさまはただの人間。のぞみすべて掴めるほどのうつわはないのだ)」
「………………」
「ぷぅ(おおそうだ。選択肢が悩ましすぎて今のきさまでは選べぬだろう。じつはわれ、カーナたんによい術をならったのだ)」
「?」
不審に思いながらも話を聞いてみると、〝夢見の術〟という夢の世界を利用して過去や未来、あるいは仮定の世界に飛ぶ魔法のことだった。
「ぷぅ(聖女ねえやが失った綿毛竜の雛竜たちをおもってまいばん泣いてるのだ。ねえやをなぐさめるため、われ雛たちに会えるよう練習してるのだ)」
「……貴殿、まさか私をその術の実験台にするつもりか?」
「ぷぅ! ……ぷぇっ!?(ごめいとう! ……な、なにをするっ!?)」
ユーグレンは無言でむんずと傲岸不遜ウパルパを大きな手で掴んだ。
そのまま部屋の椅子に引っ掛けてあった上着だけ小脇に抱えて、階下に降りる。
食堂を覗くと、カズンがアイシャやトオンと一緒にハーブティーを飲みながら歓談していた。
「ピアディ殿を海上神殿のカーナ姫にお返ししてくる。ヨシュアが来たらそう伝えておいてくれ」
「ん? わかったが、お前がピアディを? 珍しいな」
「まあそれなりに仲良くなったのさ」
手の中でぐねぐねと暴れるウパルパを逃さず、そのまま古書店エリアに設置された転移用の魔導具で海上神殿へと向かった。
※ユーグレンのその後については、環シリーズ設定集の「賢者ユーグレン」項目でも触れてます。
꒰( ˙𐃷˙ )꒱ アイカクニカエラベナノダーw
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