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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
飯ウマ二種類
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「それで、ゲンジさん。トオンの飯マズは何とかなりそうでしようか?」
飯ウマ属性持ちで、薬師スキルも持っている料理人ゲンジ。本日の主賓である。
人の良さそうな顔つきの、角刈り頭で初老の彼だが、飯マズコーヒーがなみなみと入ったマグカップを前に困った顔になっている。
「厳しいねえ。一時的なバッドステータスだったなら解除方法はあったんだろうけど」
トオンの飯マズ属性は、初代聖女でもあった母親エイリー(マルタ)から受け継いでしまったものだ。
エイリーが持っていたバッドステータスは下記になる。
『調理した料理がすべて不毛な味になる呪い。
聖女であるにも関わらず誠意のない男を愛し純潔を捧げたことのペナルティ。解除不可。
(元は料理上手で美味しいもの好き)』
しかしエイリーの飯マズは、自分の愚かさに対する自縄自縛の側面が強いと思われた。
ステータスに関する文献を調べてみても、こんな特殊なバッドステータスの例などなかったからだ。
その息子トオンのバッドステータスはといえば、こうだ。
『飯マズ:母親の聖女エイリーから継承したバッドステータス。調理した料理が激マズになる(味付け時に付与)』
「でも砂糖もミルクも入れてないブラックコーヒーがクソマズになったのはなぜだ?」
「いろいろ実験したの。コーヒーやお茶にお湯を注ぐだけなら問題ないのね。今回の場合、コーヒーを豆から粉にミルで挽くって行為が味付け判定されるみたいで」
「……きついな」
「環を出しながら実験してたからギリギリ耐えられたけど、途中で消えるほど辛かったわ……」
「そこまで……頑張ったのだな、アイシャ……」
何をどうやれば飯マズになるか、ならないか。
その過酷な実験に付き合ったアイシャは既に悟りの境地に達しつつある。無駄に精神力が鍛えられた挙句、結局どうにもならなかった徒労は言葉では表現し難かった。
しかも、このトオンの飯マズは後に残る。口の中に残る後味は、水を飲んだり、すすいだりしてもしばらく風味が残ってしまうのだ。
「清浄魔法」
範囲指定は口腔内。この場にいる全員、それぞれ浄化魔法を自分にかけて、ようやく飯マズの余韻から解放されたのだった。
それから、ユキレラが持参したトマトとチーズ風味のミートパイを一切れずつの、軽い朝食を皆で済ませた。
サクサクのパイ生地に、ハーブのきいたミートフィリングは飯ウマ。
食べるとほわっと頬が綻んで幸福な気持ちになる、この作り手はおそらく飯マズ実験から逃げたルシウスだろう。
実際、パイを持たされのは秘書ユキレラだ。
「〝飯ウマ〟にも種類があるんだよ。ルシウス君やカズン坊ちゃんのは、魔力由来の飯ウマ。俺やパン屋のミーシャちゃんは調理の配合バランスの飯ウマ」
料理人ゲンジの説明に、初めて知ったと皆が驚いている。
「俺やミーシャちゃんの場合は、錬金術的な調合に近いね。季節ごとに変わる野菜や肉、魚の素材、調味料を見て、その時々で最も上手くなるよう調整する。もちろん、お客さんの好みに合わせてね。だからいつでも安定して美味いものが作れる」
「ルシウス様やカズンが魔力由来というのは?」
「本能的に食べることが好きなんだろうね。だから『美味いものを作る』って意図の魔力を出して料理するから、ほとんど自動的に何を作っても飯ウマになる」
「「「「「へえ~」」」」
つまりは、魔力タイプの飯ウマの作り手は、料理に対する属性付与ということらしい。
食後のお茶を鮭の人が率先して淹れてくれる頃になって、恐る恐るルシウスがやってきた。
「も、もう飯マズ実験は終わった……か?」
「おや、叔父様。逃げたんじゃなかったんですか?」
「に、逃げたかったが、お前たちだけならともかく、ゲンジのオヤジさんまでついていったと聞いて、気が気じゃなかったのだ!」
そのルシウスが現れたのは厨房のほうからだ。
今、トオンの古書店の建物内には、国内数ヶ所を繋ぐ転移用の魔導具が設置されている。それを使ってやってきたのだろう。
転移魔導具は、トオンの古書店、ルシウス邸、旧王城の官邸にある宰相執務室、それに海上神殿の四ヶ所に設置して行き来できるように設定してある。
他にも、神人たちは単独で転移術を扱えるため、新たな神人ルシウスを始めとして、ピアディ、ジューア、カーナ姫が可能としていた。
転移術を使えるはずのルシウスが、今回わざわざ魔導具を使って来たのは。
「ぷぅ(われ、とうじょうー!)」
「ピュイッ(ボクもいるよー)」
「ピアディちゃん、ユキノ君!」
小さなベビーピンクのウーパールーパー神人ピアディと、そのお守り役の綿毛竜ユキノを伴っていたからだった。
飯ウマ属性持ちで、薬師スキルも持っている料理人ゲンジ。本日の主賓である。
人の良さそうな顔つきの、角刈り頭で初老の彼だが、飯マズコーヒーがなみなみと入ったマグカップを前に困った顔になっている。
「厳しいねえ。一時的なバッドステータスだったなら解除方法はあったんだろうけど」
トオンの飯マズ属性は、初代聖女でもあった母親エイリー(マルタ)から受け継いでしまったものだ。
エイリーが持っていたバッドステータスは下記になる。
『調理した料理がすべて不毛な味になる呪い。
聖女であるにも関わらず誠意のない男を愛し純潔を捧げたことのペナルティ。解除不可。
(元は料理上手で美味しいもの好き)』
しかしエイリーの飯マズは、自分の愚かさに対する自縄自縛の側面が強いと思われた。
ステータスに関する文献を調べてみても、こんな特殊なバッドステータスの例などなかったからだ。
その息子トオンのバッドステータスはといえば、こうだ。
『飯マズ:母親の聖女エイリーから継承したバッドステータス。調理した料理が激マズになる(味付け時に付与)』
「でも砂糖もミルクも入れてないブラックコーヒーがクソマズになったのはなぜだ?」
「いろいろ実験したの。コーヒーやお茶にお湯を注ぐだけなら問題ないのね。今回の場合、コーヒーを豆から粉にミルで挽くって行為が味付け判定されるみたいで」
「……きついな」
「環を出しながら実験してたからギリギリ耐えられたけど、途中で消えるほど辛かったわ……」
「そこまで……頑張ったのだな、アイシャ……」
何をどうやれば飯マズになるか、ならないか。
その過酷な実験に付き合ったアイシャは既に悟りの境地に達しつつある。無駄に精神力が鍛えられた挙句、結局どうにもならなかった徒労は言葉では表現し難かった。
しかも、このトオンの飯マズは後に残る。口の中に残る後味は、水を飲んだり、すすいだりしてもしばらく風味が残ってしまうのだ。
「清浄魔法」
範囲指定は口腔内。この場にいる全員、それぞれ浄化魔法を自分にかけて、ようやく飯マズの余韻から解放されたのだった。
それから、ユキレラが持参したトマトとチーズ風味のミートパイを一切れずつの、軽い朝食を皆で済ませた。
サクサクのパイ生地に、ハーブのきいたミートフィリングは飯ウマ。
食べるとほわっと頬が綻んで幸福な気持ちになる、この作り手はおそらく飯マズ実験から逃げたルシウスだろう。
実際、パイを持たされのは秘書ユキレラだ。
「〝飯ウマ〟にも種類があるんだよ。ルシウス君やカズン坊ちゃんのは、魔力由来の飯ウマ。俺やパン屋のミーシャちゃんは調理の配合バランスの飯ウマ」
料理人ゲンジの説明に、初めて知ったと皆が驚いている。
「俺やミーシャちゃんの場合は、錬金術的な調合に近いね。季節ごとに変わる野菜や肉、魚の素材、調味料を見て、その時々で最も上手くなるよう調整する。もちろん、お客さんの好みに合わせてね。だからいつでも安定して美味いものが作れる」
「ルシウス様やカズンが魔力由来というのは?」
「本能的に食べることが好きなんだろうね。だから『美味いものを作る』って意図の魔力を出して料理するから、ほとんど自動的に何を作っても飯ウマになる」
「「「「「へえ~」」」」
つまりは、魔力タイプの飯ウマの作り手は、料理に対する属性付与ということらしい。
食後のお茶を鮭の人が率先して淹れてくれる頃になって、恐る恐るルシウスがやってきた。
「も、もう飯マズ実験は終わった……か?」
「おや、叔父様。逃げたんじゃなかったんですか?」
「に、逃げたかったが、お前たちだけならともかく、ゲンジのオヤジさんまでついていったと聞いて、気が気じゃなかったのだ!」
そのルシウスが現れたのは厨房のほうからだ。
今、トオンの古書店の建物内には、国内数ヶ所を繋ぐ転移用の魔導具が設置されている。それを使ってやってきたのだろう。
転移魔導具は、トオンの古書店、ルシウス邸、旧王城の官邸にある宰相執務室、それに海上神殿の四ヶ所に設置して行き来できるように設定してある。
他にも、神人たちは単独で転移術を扱えるため、新たな神人ルシウスを始めとして、ピアディ、ジューア、カーナ姫が可能としていた。
転移術を使えるはずのルシウスが、今回わざわざ魔導具を使って来たのは。
「ぷぅ(われ、とうじょうー!)」
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