婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

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第二章 お師匠様がやってきた

ノーザ湖の雪鮭

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「そういえば、ルシウスさん。この近くに鮭のいる湖があるそうですよ。何でも珍しい種類だそうで」

 鮭食べたいサーモンパイその他! と期待を抱きつつ、王都の図書館まで行って国内の鮭の分布地を調べていたトオンだ。
 ちょうど、ここ第2号ダンジョンのある道から出ている乗合馬車で20分ほど進んだところにある。

「地元の人たちのハイキングコースになってるみたいです。で、湖にはサケ類の魚が昔からいるんですって」
「行こう」
「行きましょう」

 ルシウスとアイシャが食いぎみに身を乗り出してきた。
 美味しいものは積極的に探求していくスタンスである。



 そんなわけで、馬車に揺られて20分。
 ノーザ湖というひょうたん型の湖の湖畔に乗り合い馬車は到着した。
 湖は外周の遊歩道をゆっくり歩いても2時間ほどと、そう大きなものではない。
 湖畔には売店や休憩所、湖で獲れる水産物や加工品の直売所、またそれらが食べられる食堂などが点在している。

 さて、お目当ての鮭はといえば。

「ここの鮭はノーザ鮭といって、なかなか味が良いって本には書いてあったよ」

「そうか。この国でも鮭が獲れるのだな……」

 ルシウスが何やら顎に手を当てて考え込んでいる。

「ルシウスさん……何考えてるんだろう?」
「美味しいごはんのことだといいわよね」

 ふたりの疑問の答えは、数日後に明らかになるのだが、今日このときはまだ彼の意図はわからないままだ。

 この湖のノーザ鮭は加工品の一部が王都でも出回っている。
 トオンも食べたことがあるが、アイシャとトオンが以前カズンから食べさせてもらった、ルシウスの甥っ子から送られてきた鮭ほど美味ではない。
 それでも、なかなか味の良い魚だったように記憶している。

 また、ノーザ鮭は川で獲れる鮭でなく湖の鮭だから、通年漁獲できる。
 庶民でも手が届く程度の値段なのも良い。

 ただし、このノーザ鮭には注意点がひとつだけあった。



「これが……鮭、だと……?」

 ちょうど、ノーザ湖の水産物の販売所の店頭で鮭を捌いているところを見ることができた。
 魚切り包丁でするする捌かれていくノーザ鮭。
 腹側から捌かれ、内臓を取り除いて血を水洗いされ半身に開かれた後の光景に、ルシウスはその湖面の水色の目を見開いた。

「わあ、真っ白ね!」
「ノーザ鮭は別名を雪鮭っていうんだよ。湖に赤い色素を持った餌になる生き物がいないから、身も白くなっちゃったんだって」

 せっかくなので店内の食事処で名物料理をいくつか注文してみることにした。
 町で昼食を取ってきたばかりだが、三人でシェアし合えば問題なく食せる。


 ノーザ鮭のカルパッチョ
 ノーザ鮭の冷燻スライスでアボカドを巻いたもの
 ノーザ鮭の塩焼き


 店の人に尋ねたところ、この辺がノーザ鮭の人気の料理ということで三種類を注文してみた。

「「「いただきます」」」

 三人、お行儀よく手を合わせてから取り皿に均等にそれぞれの料理を分け、いざ実食。

「うん。鮭だ」
「鮭ね。あんまり鮭食べてる感じしないけど」
「鮭の味はする……が、これはもはや鮭というよりただの白身魚だな……」

 ひそひそと声を潜めて感想を言い合う。

 鮭というと濃いオレンジピンクの身の魚だと思い込んでいるから、この真っ白なノーザ鮭は見ながら食べると脳がバグる。
 味はしっかり鮭なのだが。

 ちなみに、同じ鮭でも、やはり川を登ってくるところを漁獲するルシウスの故郷の鮭と比べると、残念ながら味的にランクは落ちる。



 その後はルシウスがご近所さんたちへの土産に鮭とばを買った。
 彼の親しい親父さんたちは酒飲みが多いのだ。

 あとは町へ戻る馬車の発車時刻まで湖の周りを散策したり、カフェでお茶をしたりしながら充実した時間を過ごしていた。



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