17 / 44
第五章
Chapter.17 真実の告白
しおりを挟む
真実の告白
3日間、二人はアーグラ城など、アーグラの見どころを巡り、楽しい時間を過ごした。
「周人、まだ日数あるからさ、私、ジャイプールに行きたい。そこも世界遺産あるんだよ」
「ジャイプール? 名前は聞いたことあるな。いいね、行こうよ」
翌朝、ジャイプールまでバスで5時間かけて移動、ゲストハウスを確保すると、部屋に荷物を置いて外出した。街歩きをすると、空はすっかり薄暗くなり、夕食を食べにレストランに入った。
二人はすでに恋人同士であり、十分に距離も縮めたと思っていた周人は、食後、幸来紗に本題を切り出そうと考えていた。
「あのさ、幸来紗。ちょっと、真面目な話なんだけどさ」周人の声色は変わる。
「どうしたの、あらたまって」
「幸来紗が大事で隠し事はしたくないから、みんな正直に話したい。気を悪くさせちゃったらごめん」
「何?」幸来紗の脈は高まる。
「あのさ、俺と日坂がインドに来て、幸来紗と会ったのは、すべて念入りな計画があってのことだったんだよ」
「どうゆうこと?」幸来紗は周人の目を見ながら、首をかしげる。
「美智さんがさ、未来のこと話したでしょ。あの信じられないような話、俺らも全部知ってたんだよ」
「えっ……?」
「幸来紗も、あの話を信じたとは聞いている。美智さんからお父さんを説得して、国防力を強化するとかして欲しい、みたいなこと言われたでしょ?」
「言われたけど、……周人もあの話に関係してるの?」
幸来紗は真剣な表情に変わる。
「未来人の話、聞いたでしょ?」
「うん」
「その未来人ってさ、華怜さんのことなんだよ。日坂の姉だって偽って一緒に行動してる。本名は松田友杏さんていって、彼女が2065年からタイムマシンで来た未来人」周人は息を深く吸う。
「そうなんだ…… 美智がその話のこと、急にしなくなったから、なんか変だなとは思ってた」
「友杏さんはさ、美智さんだけじゃなくて、俺と日坂にも協力を仰いで、東京へ核ミサイルが落とされるのを防ごうとしてるんだ。美智さんだけが、先にインドに来ていたみたいにしていたけど、実は最初から四人で来てた。みんなで騙していて本当にごめん」
周人は、その他にも友杏と出会ってからの経緯をすべて話した。
幸来紗は真剣に話を聞いている。
「美智が話していたことは、その後も気になってた。でも、美智はその後、その話題を出さなくなった。私もあんまり触れたくない話題だったから、あえて口に出さなかったけど」
「そのことなんだけど、俺からも幸来紗にお願いしたいと思ってる」
「周人も、核肯定派?」
「もちろん、核なんて、大量の人間を殺す兵器はない方がいいに決まってる。もともと存在しなければいいと思うよ。でも、現在の国際情勢を見ている限り、核保有してもいいと思ってる。核抑止力で、核を保有することで攻撃を防いでるのは、すでに歴史も実証しているよ。核保有している国は大きな戦争には発展してないし、核保有している国に対して、戦争を仕掛ける国もない」
「そうなんだね。それで周人も、私にお父さんを説得して欲しいわけなんだね?」
幸来紗の声のトーンは下がる。
「うん。そうだね。首都東京を守るためにもね。それに九州事変だって回避できるかもしれないし」
「分からないな。私は、お父さんにそのような考え方は間違いだって刷り込まれてる。国防力を高めることで敵対心を煽るんだって」
「それは逆だよ。国防力を高めることが抑止力になると思うよ。国によってイデオロギーは異なり、また、相手の歴史なども考慮して対応するべきだよ。そうなると、日本も核を持っていいと思う。未来の歴史書を読んでみても、その方がいいって分かると思う」
「ねえ周人、そのために私に近づこうとした? 本当に私のことが好きなの? なんかスパイみたい。ごめん、だんだん、周人が分からなくなってきてる」
幸来紗は悲しげな表情を見せる。
「何言ってるんだよ。本当に好きだよ。信じて欲しい」周人は焦って言う。
「信じたい。……でも少し一人にして」
幸来紗は周人に対して、疑惑の念が膨らみ始めた。
二人は、重苦しいムードでゲストハウスに戻り、ダブルベッドの隅と隅で、距離を置き眠りについた。
3日間、二人はアーグラ城など、アーグラの見どころを巡り、楽しい時間を過ごした。
「周人、まだ日数あるからさ、私、ジャイプールに行きたい。そこも世界遺産あるんだよ」
「ジャイプール? 名前は聞いたことあるな。いいね、行こうよ」
翌朝、ジャイプールまでバスで5時間かけて移動、ゲストハウスを確保すると、部屋に荷物を置いて外出した。街歩きをすると、空はすっかり薄暗くなり、夕食を食べにレストランに入った。
二人はすでに恋人同士であり、十分に距離も縮めたと思っていた周人は、食後、幸来紗に本題を切り出そうと考えていた。
「あのさ、幸来紗。ちょっと、真面目な話なんだけどさ」周人の声色は変わる。
「どうしたの、あらたまって」
「幸来紗が大事で隠し事はしたくないから、みんな正直に話したい。気を悪くさせちゃったらごめん」
「何?」幸来紗の脈は高まる。
「あのさ、俺と日坂がインドに来て、幸来紗と会ったのは、すべて念入りな計画があってのことだったんだよ」
「どうゆうこと?」幸来紗は周人の目を見ながら、首をかしげる。
「美智さんがさ、未来のこと話したでしょ。あの信じられないような話、俺らも全部知ってたんだよ」
「えっ……?」
「幸来紗も、あの話を信じたとは聞いている。美智さんからお父さんを説得して、国防力を強化するとかして欲しい、みたいなこと言われたでしょ?」
「言われたけど、……周人もあの話に関係してるの?」
幸来紗は真剣な表情に変わる。
「未来人の話、聞いたでしょ?」
「うん」
「その未来人ってさ、華怜さんのことなんだよ。日坂の姉だって偽って一緒に行動してる。本名は松田友杏さんていって、彼女が2065年からタイムマシンで来た未来人」周人は息を深く吸う。
「そうなんだ…… 美智がその話のこと、急にしなくなったから、なんか変だなとは思ってた」
「友杏さんはさ、美智さんだけじゃなくて、俺と日坂にも協力を仰いで、東京へ核ミサイルが落とされるのを防ごうとしてるんだ。美智さんだけが、先にインドに来ていたみたいにしていたけど、実は最初から四人で来てた。みんなで騙していて本当にごめん」
周人は、その他にも友杏と出会ってからの経緯をすべて話した。
幸来紗は真剣に話を聞いている。
「美智が話していたことは、その後も気になってた。でも、美智はその後、その話題を出さなくなった。私もあんまり触れたくない話題だったから、あえて口に出さなかったけど」
「そのことなんだけど、俺からも幸来紗にお願いしたいと思ってる」
「周人も、核肯定派?」
「もちろん、核なんて、大量の人間を殺す兵器はない方がいいに決まってる。もともと存在しなければいいと思うよ。でも、現在の国際情勢を見ている限り、核保有してもいいと思ってる。核抑止力で、核を保有することで攻撃を防いでるのは、すでに歴史も実証しているよ。核保有している国は大きな戦争には発展してないし、核保有している国に対して、戦争を仕掛ける国もない」
「そうなんだね。それで周人も、私にお父さんを説得して欲しいわけなんだね?」
幸来紗の声のトーンは下がる。
「うん。そうだね。首都東京を守るためにもね。それに九州事変だって回避できるかもしれないし」
「分からないな。私は、お父さんにそのような考え方は間違いだって刷り込まれてる。国防力を高めることで敵対心を煽るんだって」
「それは逆だよ。国防力を高めることが抑止力になると思うよ。国によってイデオロギーは異なり、また、相手の歴史なども考慮して対応するべきだよ。そうなると、日本も核を持っていいと思う。未来の歴史書を読んでみても、その方がいいって分かると思う」
「ねえ周人、そのために私に近づこうとした? 本当に私のことが好きなの? なんかスパイみたい。ごめん、だんだん、周人が分からなくなってきてる」
幸来紗は悲しげな表情を見せる。
「何言ってるんだよ。本当に好きだよ。信じて欲しい」周人は焦って言う。
「信じたい。……でも少し一人にして」
幸来紗は周人に対して、疑惑の念が膨らみ始めた。
二人は、重苦しいムードでゲストハウスに戻り、ダブルベッドの隅と隅で、距離を置き眠りについた。
20
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令和日本神話 Next Generations
松コンテンツ製作委員会
SF
西暦2015年、日本神話の破壊神カグツチの復讐が始まる──
内閣総理大臣の物部泰三は国家総動員でこれに立ち向かうことを決意。安保法制改訂を急ぐ。
幹部自衛官志望の東城洋介とアイドル志望の西村美咲は進路に迷っていたが、遠くない未来、破壊神カグツチに立ち向かい、次世代の英雄を産み育てる使命を帯びていた。同年の観艦式において無人スペースシャトルの落下事件が起こるが、洋介の父幸一はイージス艦きりしまでこれを撃墜する。それはカグツチの復讐の嚆矢だった。(第一章)
時代は変わって令和2年。2020年。
半国営アイドルグループプロデューサーがアイドルの美咲にハラスメントを行っていた事実が明るみとなり、若きプロデューサーが美咲を保護する。芸能汚職により、物部政権は窮地に陥るが、奇しくも宇宙から円盤が現れ、そのパニックで有耶無耶となる。荒垣健防衛大臣は全世界同時反撃ヤタガラス作戦を指揮した英雄だ。物部はその人気に便乗し与党を延命さた。(第一章)
時は流れ、2022年。
エイリアン撃退の戦勝記念祭を兼ねた日米の大規模合同イベントフェスタよこはま2022が開幕。岸本勇雄内閣総理大臣、物部元総理大臣、荒垣健防衛大臣、さらに米国からはジョーカー大統領も出席していた。そのような中、小笠原諸島に謎の異世界文明が現れる。護衛艦やまとに乗り込むのは、海上自衛官東城洋介である。その婚約者は芸能人の美咲だ。異世界、グリムノーツ精霊王国の目的は、食料の確保だという。ちょうどTPPから農産物輸入圧力をかけられていた日本は、農産物を異世界人の口に合うように加工してグリムノーツに安く輸出。見返りにグリムノーツは魔法文明を日本に惜しげもなく供与するのだという。ここまで異世界人が友好的なのは、日本神話の破壊神が彼らの祖国を焼き尽くしたことが関係していた。そして彼らと日本人の共通点とは!?
精霊魔法に秘められた謎の因子が明らかとなる!(第二章)
他サイトにもマルチ投稿しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ボクらは魔界闘暴者!
幾橋テツミ
ファンタジー
ラージャーラという名の異世界から日本に出現した“妖術鬼”シャザラの目的は地上世界を制覇した後に故郷を“逆侵略”し、【神牙教軍】なる最強勢力を率いる【鏡の教聖】と名乗る仮面の魔人を打倒することであった。
一方、戦乱状態のラージャーラを最深奥部で統治しているとされる天響神エグメドは神牙教軍の覇業を阻止すべく、選ばれしラージャーラ人と地上人の混血組織【絆獣聖団】を結成し、彼らは教軍に蹂躙される現地勢力と共闘、日々熾烈な戦いを続けていた…。
目下、妖術鬼の“野望の拠点”となっているのが新興宗教団体【光霊至聖教団】(通称・光至教)と世界的な実戦空手団体【拳星會館】、そして国内最大のアダルト産業コングロマリット【アグニグループ】であり、これら三大組織の代表者は彼の忠実なる使徒であり、〈師〉から恐るべき魔能力を授けられていた!
対する絆獣聖団側も負けじと〈地上部隊〉を結成し、ラージャーラでも使用されている超兵器で迎え撃つが、両陣営とも現時点では戦火が野放図に拡大することを望まぬためか、〈戦場〉は日本各地の地下に両者が所有する【誓覇闘地】に限定されていた。
岡山在住の冬河家は絆獣聖団極東支部において中心的な役割を担う九氏族の一員であり、若き当主で高校二年生の黎輔は乗り込んで来た光至教の二代目女性教祖・光城亜希世の息子で共に最強戦士とされる玄矢と威紅也を相手に死闘に臨まんとしていた。
黎輔の盟友は市内在住の整体師・宗 星愁と倉敷市でオカルトショップを営む青年・剛駕嶽仁であるが、彼らも敵に劣らぬ超戦士であり、その結束は固く聖団内でも屈指の軍団として認知されていた。
光城家が“最強タッグ”を送り込んだのも最近聖団に対し劣勢であるためであり、今回敗北すれば首領である妖術鬼から一族が一人ずつ身の毛もよだつような制裁を課される運命が待ち受けていた!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
楽園島
超山熊
SF
楽園島……それは太平洋上に出来た新たな島。
海底火山の噴火によって生まれたその島はあらゆる可能性と未知を秘めていた。
なにせ、
噴火が治まって直ぐ、島には生態系が確立されていたこと。
島の動植物には新種の物が多く確認されたこと。
世界中の科学者や研究者は注目した。
しかし島へ上陸した研究者達が生きて帰ることは無かった。
研究者たちが島中に常時撮影可能なカメラをセットしたとき島を霧が包んだのだ。
そして、
研究者たちは帰ってきた。
誰一人として口を開ける者はいなかったが。
そして共通して花を手にしていた。
その花から採取される蜜を体内へ取り込んだ者は島でのみ特別な力が使えた。
誰もがその力を欲しがったが島へ入る危険は冒せない。
結果、国は技術と知識を持ち、いなくなっても不利益の無い存在。
――凶悪犯罪者を送ったのだ。
彼らは新種の動植物と共存しながら殺し合いを始める。
これは犯罪者と凶暴な動植物による殺し合いに巻き込まれた、犯罪に巻き込まれ運の悪さで島へ送られてしまった俺の。
島の謎と生き残りを目指す物語。
不定期更新です。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる