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第三章
Chapter.9 作戦会議
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作戦会議
美智はヒルトンホテルに着くと、友杏の部屋を訪ねる。
「いらっしゃい。おっ、顔色もいいじゃん」智成は嬉しそうに歓迎する。
「思ってたより早かったね」周人も安心した様子だ。
「私、決めたらじっとしているの苦手で、直ぐに行動しないと落ち着かないんだよね」美智は、心のもやもやが晴れたように、スッキリした様子だ。
「ありがとう。来てくれたんだね」
友杏が声をかけると、美智は何も言わずに会釈する。
「ちょっと! めちゃくちゃ夜景が綺麗じゃん! いい思いしてるねー! ……それで、三人はあれからどうしてたの?」
「九州観光。長崎まで行ってきたよ。軍艦島も行った。あと、やっぱ博多はラーメンが美味いね!」
智成が言うと、友杏が興奮して続く。
「ラーメンよりお寿司でしょ。超美味いよ! 東京や横浜より福岡の方がぜんぜん美味しい。もう最高!」
「この人、この時代に来てからさ、毎日寿司なんだよ。2065年じゃ食べれないからって」
少し呆れながら言う智成の横で、周人は笑っている。
「じゃあ、これ、頭金の3千万。協力してもらえる?」
「とりあえず、先にもっと細かく話を聞かせてください」現金は受けとらずに、美智は答える。
「木曜日に聞いた話だと、幸来紗を周人くんに惚れさせるってことだったけど……」
美智が言うと、智成が割って入る。
「ここから先は、俺らも作戦を練ってないんだ。一緒に考えていこう」
「松田さんは、具体的にどう考えてんですか?」周人が訊く。
「じゃあ、ぼんやりだけど、私の考えを話すね」
「半月前、みっちーと話した時さ、……馴れ馴れしくてごめん。みっちーでいい?」
「別にかまいません」
「じゃあ続けるね。みっちーさあ、幸来紗ちゃんは男性を好きなると一途で、とことん尽くすって言ってたじゃない。好きな人のためなら何でもしちゃうって。
それで思いついたんだけど、幸来紗ちゃんを周人くんに惚れさせて、幸来紗ちゃんから総理のパパを説得してもらって、日本もできたら核保有するようにする! ……と考えてます」
間をおいて、周人が口を開く。
「……なんか、俺が一番重要な感じするんすけど。思ったんだけど、幸来紗さんにも同じように、お金あげて説得してもらったらどうなんですか?」
「幸来紗ちゃんは総理の娘なのよ。1億くらいの金じゃ動かないと思ってね。合計4億円は、さすがに払えないわ」
「じゃあ、俺らを通さないで、幸来紗ちゃんに三億払ったらよかったんじゃね?」智成が訊く。
「私は、三億でも動ないと思うけどね」と友杏が答えると、美智が口を開く。。
「幸来紗は、お金じゃ動かないよ。松田さんの言う通り、彼女の家は、超、超、超金持ちだから。それに、政治家の娘として育って、お金で解決するっていう考え方をすごく嫌ってる。……幸来紗のお父さん、岸部利蔵さん。お婆さんを原爆で亡くしてるから、総理の核を嫌う思いは並外れたものなの。そして、幸来紗自身もお父さんに洗脳されて核を憎んでる。幸来紗から何度か聞かされたわ。……友杏さんのアイデア、私はいいと思うな」
「東南アジアで一緒だったときはさ、幸来紗ちゃんと野島、いい感じだったもんな」
茶化す智成に、周人は少し動揺すると、美智が話す。
「実は、幸来紗ね。周人くんに気があったんだよ」
「マジで!」二人は声をそろえて言うと、友杏は「いーねー、いーねー」と楽しそうに聞いている。
「幸来紗って、基本、男に興味ないんだけど、周人くんのことは本当に好きだったと思うよ。バンコクで二人が日本に帰った後、幸来紗は周人くんのことを気にしてるようなことを話してた。男に関心なくて、めったに惚れることがない子だからびっくりしたのをよく覚えてる。でも、幸来紗は、男の人と付き合うのは自分に向いていないって、って言ってた」
美智は、周人と智成に幸来紗の過去の交際歴を話す。
「それと、あの東南アジアの旅を通して、やりたいことが明確に分かってきたから、彼氏とか別にいらないって」
「でも、野島くんに気が合ったのは確かなのよね…… 野島くんに惚れさせる。野島くんという愛する人の影響で、幸来紗ちゃんも考えを変えていく。私、みっちーと日坂くんは、二人を結びつけるための恋のキューピッドになる。それでいいでしょ」友杏は三人の顔を見る。
「幸来紗と周人くんを結びつけるといったハードルは、そんな高くないと思うけど、その先の、核保有を説得するのは無理だと思うな。幸来紗も相当核反対派だからね。幸来紗を説得できたところで、幸来紗がお父さんを説得させるのは神のみぞなせる業だと思うわ。いくら愛する一人娘の頼みでも難しいと思う。」
美智は険しい表情で言う。
「核保有までとはいかなくても、国防を強化することでも回避する可能性は上がるかもしれないんじゃないですか?」周人が友杏に訊く。
「そうかもしれないわね。……まあ、とにかく、この案で決定しようと思う。他にもっと良い案があれば聞くけど、ある?」友杏が訊くと、三人は黙る。
「その計画以外、思いつかないな」少しの沈黙の後、智成が口を開く。
「そうね。私たち三人が恋のキューピッドになりましょう」美智が続く。
「野島くんもそれでOK?」黙っている周人に友杏は訊く。
「なんか、俺が一番荷が重い感じするんですけど、……分かりました」
周人も渋々合意する。
「よし! 決まり!」友杏はご機嫌だ。
「ねえ、松田さん。国防力を強化することで、九州、沖縄の侵略も食い止められるかな? 沖縄で結婚式をあげれなくなるなんて悲しいわ」美智は心配げに訊く。
「分からないけど、可能性はだいぶ下がると思う」
「あと、このミッションを遂行したとして、結果はいつ分かるの? 何か松田さんが持ってる道具ですぐに分かるの?」
「それがねぇ…… その時が来ないと分からない」美智が訊くと、友杏は間をおいて答える。
「えっ、マジで? じゃあ、核ミサイルが落とされる2030年まで待たなきゃいけないってこと?」
「そうなの? 何か未来を知るツールはないの? 何か持ってきてないの?」
智成に続いて周人も訊く。
「そうゆうものがないんだよね…… あるとしても、私たちが未来を変えてしまうような行動をとったら、新たな時間軸が発生してしまって、そっちの方に枝分かれしてしまう。だから、未来を知ることはできないの。2030年まで6年待つことになるわ」
「マジっすか。長いなー。それまで落ち着かないな」周人は気落ちする。
「じゃあ、報酬金の残りの、7千万もらえるかどうかは、その時が来ないと分からないってことか?」智成が訊く。
「そうゆうことになっちゃうわね」友杏は少し気まずそうに答える。
「あの~、私的にはさ、東京に核ミサイルが落とされるってこと以上に、九州全土が占領されるってことの方が問題なんだけど」
「そりゃそうだよね。心配だよね」美智に続いて周人が話す。
「報酬金だけどさ、2027年に、もし沖縄事変が回避された時点で、1千万円。2028年、九州事変が回避された時点で3千万。2030年、東京への核ミサイル回避で残りの3千万支払うっていうのはどう?」
「うん、いいと思う」
「そうだね、いいんじゃない」
友杏の提案に美智と智成が答える。
「ちょっと待って。俺らの行動によって未来が変わるわけだよね? それなら核ミサイルを落とされる日や、終戦の日も変わりえるんじゃないかな?」周人は疑問ありげに訊く。
「確かに、そうなりえるわ。……そうなると、終戦の日が来るまで、分かりえないってことになるわね。終戦はいつだっけ?」
友杏は、未来の歴史書を開いて調べる。
「あった。2033年、5月8日だって。でも、終戦の日程も前後するかもしれない」
「そうなるのか」友杏の予測に、智成が呟く。
「もし、沖縄、九州事変や核ミサイルが落ちなくても、終戦になるまで安心できないってことになるよね」
「2033年なんて、さらに長いじゃん。9年も、もしくはそれ以上待つかもしれないんでしょ」
美智は、勘弁してといった様子だ。
「じゃあ、報酬の残金は、終戦の時になるわね。戦争が終わった時点で、沖縄事変、九州事変、東京に核ミサイルのすべてが起きていなかったら全額の7千万。沖縄事変が起こったら1千万。九州事変が起こって、東京に核ミサイルが落とされたら、それぞれ、3千万ずつ引くといった計算でいいかな?」
友杏は提案する。
「分かりました」
「それ相応の配分かな。分かった」周人に続いて、美智が返事する。
「じゃあ、決まりだね! 戦争が終わったら報酬金の残金は払います」
三人は納得する。
「みっちー、仕事はどうするの?」智成が訊く。
「私、仕事も辞めるよ。だって、3千万、先にもらえるんでしょ? 何とかなるよ」
「はい、じゃあ頭金。受け取って」友杏は3千万円入った紙袋を美智に渡す。
「いただきます」美智は頭を下げて、すまなそうに受け取る。
「なんかさ、私、ワクワクしてきちゃって……。‟バック・トゥ・ザ・フューチャー”みたいじゃん!」
美智は興奮気味だ。
「あれは、面白いね」周人が言う。
「何、‟バック・トゥ・ザ・フューチャー”って?」友杏は、興味ありげに訊く。
「未来人の松田さんは知らないか。80年代のSF映画で三部作。傑作だよ。過去での行動によって、現在を変えるみたいな話」美智は説明する。
「なにそれ、面白そう。観てみたいな」
「そうだ!」美智は何かを思い出したように言う。
「そういえば、幸来紗、今、インドにボランティアに行ってる。小学校で教育支援だって。半年間」
「そうなの? じゃあ、計画の遂行はインドで?」
「時間もないし、そうなるわね。憲法改正まで時間を考慮すると、すぐに動いた方がいいわ」周人の質問に対し友杏は答える。
「なんか、それはそれで楽しそうじゃね?」
「うん、なんか楽しそうだよね。いい思い出になりそう」
美智と智成はすっかりその気だ。
「なんかさ、ミッション名決めない?」
「LSJは?‟Love Saves Japan”の略。愛の力がもとになって、日本を救おうとしてるわけだもんね」
智成に続いて美智が提案する。
「いいね!」友杏が言うと、「いいじゃん」と周人も同意する。
「じゃあ、決まり。酒頼んで乾杯しよう!」
「いいね、飲もう、飲もう」智成が提案すると、美智もすっかりその気になっている。
智成は部屋の電話を取り、ルームサービスで注文する。
ビールをグラスに注ぐと、四人は福岡の夜景をバックに、友杏の音頭で乾杯した。
「それでは、LSJの成功を願って、乾杯!」
「かんぱーい!」
美智はヒルトンホテルに着くと、友杏の部屋を訪ねる。
「いらっしゃい。おっ、顔色もいいじゃん」智成は嬉しそうに歓迎する。
「思ってたより早かったね」周人も安心した様子だ。
「私、決めたらじっとしているの苦手で、直ぐに行動しないと落ち着かないんだよね」美智は、心のもやもやが晴れたように、スッキリした様子だ。
「ありがとう。来てくれたんだね」
友杏が声をかけると、美智は何も言わずに会釈する。
「ちょっと! めちゃくちゃ夜景が綺麗じゃん! いい思いしてるねー! ……それで、三人はあれからどうしてたの?」
「九州観光。長崎まで行ってきたよ。軍艦島も行った。あと、やっぱ博多はラーメンが美味いね!」
智成が言うと、友杏が興奮して続く。
「ラーメンよりお寿司でしょ。超美味いよ! 東京や横浜より福岡の方がぜんぜん美味しい。もう最高!」
「この人、この時代に来てからさ、毎日寿司なんだよ。2065年じゃ食べれないからって」
少し呆れながら言う智成の横で、周人は笑っている。
「じゃあ、これ、頭金の3千万。協力してもらえる?」
「とりあえず、先にもっと細かく話を聞かせてください」現金は受けとらずに、美智は答える。
「木曜日に聞いた話だと、幸来紗を周人くんに惚れさせるってことだったけど……」
美智が言うと、智成が割って入る。
「ここから先は、俺らも作戦を練ってないんだ。一緒に考えていこう」
「松田さんは、具体的にどう考えてんですか?」周人が訊く。
「じゃあ、ぼんやりだけど、私の考えを話すね」
「半月前、みっちーと話した時さ、……馴れ馴れしくてごめん。みっちーでいい?」
「別にかまいません」
「じゃあ続けるね。みっちーさあ、幸来紗ちゃんは男性を好きなると一途で、とことん尽くすって言ってたじゃない。好きな人のためなら何でもしちゃうって。
それで思いついたんだけど、幸来紗ちゃんを周人くんに惚れさせて、幸来紗ちゃんから総理のパパを説得してもらって、日本もできたら核保有するようにする! ……と考えてます」
間をおいて、周人が口を開く。
「……なんか、俺が一番重要な感じするんすけど。思ったんだけど、幸来紗さんにも同じように、お金あげて説得してもらったらどうなんですか?」
「幸来紗ちゃんは総理の娘なのよ。1億くらいの金じゃ動かないと思ってね。合計4億円は、さすがに払えないわ」
「じゃあ、俺らを通さないで、幸来紗ちゃんに三億払ったらよかったんじゃね?」智成が訊く。
「私は、三億でも動ないと思うけどね」と友杏が答えると、美智が口を開く。。
「幸来紗は、お金じゃ動かないよ。松田さんの言う通り、彼女の家は、超、超、超金持ちだから。それに、政治家の娘として育って、お金で解決するっていう考え方をすごく嫌ってる。……幸来紗のお父さん、岸部利蔵さん。お婆さんを原爆で亡くしてるから、総理の核を嫌う思いは並外れたものなの。そして、幸来紗自身もお父さんに洗脳されて核を憎んでる。幸来紗から何度か聞かされたわ。……友杏さんのアイデア、私はいいと思うな」
「東南アジアで一緒だったときはさ、幸来紗ちゃんと野島、いい感じだったもんな」
茶化す智成に、周人は少し動揺すると、美智が話す。
「実は、幸来紗ね。周人くんに気があったんだよ」
「マジで!」二人は声をそろえて言うと、友杏は「いーねー、いーねー」と楽しそうに聞いている。
「幸来紗って、基本、男に興味ないんだけど、周人くんのことは本当に好きだったと思うよ。バンコクで二人が日本に帰った後、幸来紗は周人くんのことを気にしてるようなことを話してた。男に関心なくて、めったに惚れることがない子だからびっくりしたのをよく覚えてる。でも、幸来紗は、男の人と付き合うのは自分に向いていないって、って言ってた」
美智は、周人と智成に幸来紗の過去の交際歴を話す。
「それと、あの東南アジアの旅を通して、やりたいことが明確に分かってきたから、彼氏とか別にいらないって」
「でも、野島くんに気が合ったのは確かなのよね…… 野島くんに惚れさせる。野島くんという愛する人の影響で、幸来紗ちゃんも考えを変えていく。私、みっちーと日坂くんは、二人を結びつけるための恋のキューピッドになる。それでいいでしょ」友杏は三人の顔を見る。
「幸来紗と周人くんを結びつけるといったハードルは、そんな高くないと思うけど、その先の、核保有を説得するのは無理だと思うな。幸来紗も相当核反対派だからね。幸来紗を説得できたところで、幸来紗がお父さんを説得させるのは神のみぞなせる業だと思うわ。いくら愛する一人娘の頼みでも難しいと思う。」
美智は険しい表情で言う。
「核保有までとはいかなくても、国防を強化することでも回避する可能性は上がるかもしれないんじゃないですか?」周人が友杏に訊く。
「そうかもしれないわね。……まあ、とにかく、この案で決定しようと思う。他にもっと良い案があれば聞くけど、ある?」友杏が訊くと、三人は黙る。
「その計画以外、思いつかないな」少しの沈黙の後、智成が口を開く。
「そうね。私たち三人が恋のキューピッドになりましょう」美智が続く。
「野島くんもそれでOK?」黙っている周人に友杏は訊く。
「なんか、俺が一番荷が重い感じするんですけど、……分かりました」
周人も渋々合意する。
「よし! 決まり!」友杏はご機嫌だ。
「ねえ、松田さん。国防力を強化することで、九州、沖縄の侵略も食い止められるかな? 沖縄で結婚式をあげれなくなるなんて悲しいわ」美智は心配げに訊く。
「分からないけど、可能性はだいぶ下がると思う」
「あと、このミッションを遂行したとして、結果はいつ分かるの? 何か松田さんが持ってる道具ですぐに分かるの?」
「それがねぇ…… その時が来ないと分からない」美智が訊くと、友杏は間をおいて答える。
「えっ、マジで? じゃあ、核ミサイルが落とされる2030年まで待たなきゃいけないってこと?」
「そうなの? 何か未来を知るツールはないの? 何か持ってきてないの?」
智成に続いて周人も訊く。
「そうゆうものがないんだよね…… あるとしても、私たちが未来を変えてしまうような行動をとったら、新たな時間軸が発生してしまって、そっちの方に枝分かれしてしまう。だから、未来を知ることはできないの。2030年まで6年待つことになるわ」
「マジっすか。長いなー。それまで落ち着かないな」周人は気落ちする。
「じゃあ、報酬金の残りの、7千万もらえるかどうかは、その時が来ないと分からないってことか?」智成が訊く。
「そうゆうことになっちゃうわね」友杏は少し気まずそうに答える。
「あの~、私的にはさ、東京に核ミサイルが落とされるってこと以上に、九州全土が占領されるってことの方が問題なんだけど」
「そりゃそうだよね。心配だよね」美智に続いて周人が話す。
「報酬金だけどさ、2027年に、もし沖縄事変が回避された時点で、1千万円。2028年、九州事変が回避された時点で3千万。2030年、東京への核ミサイル回避で残りの3千万支払うっていうのはどう?」
「うん、いいと思う」
「そうだね、いいんじゃない」
友杏の提案に美智と智成が答える。
「ちょっと待って。俺らの行動によって未来が変わるわけだよね? それなら核ミサイルを落とされる日や、終戦の日も変わりえるんじゃないかな?」周人は疑問ありげに訊く。
「確かに、そうなりえるわ。……そうなると、終戦の日が来るまで、分かりえないってことになるわね。終戦はいつだっけ?」
友杏は、未来の歴史書を開いて調べる。
「あった。2033年、5月8日だって。でも、終戦の日程も前後するかもしれない」
「そうなるのか」友杏の予測に、智成が呟く。
「もし、沖縄、九州事変や核ミサイルが落ちなくても、終戦になるまで安心できないってことになるよね」
「2033年なんて、さらに長いじゃん。9年も、もしくはそれ以上待つかもしれないんでしょ」
美智は、勘弁してといった様子だ。
「じゃあ、報酬の残金は、終戦の時になるわね。戦争が終わった時点で、沖縄事変、九州事変、東京に核ミサイルのすべてが起きていなかったら全額の7千万。沖縄事変が起こったら1千万。九州事変が起こって、東京に核ミサイルが落とされたら、それぞれ、3千万ずつ引くといった計算でいいかな?」
友杏は提案する。
「分かりました」
「それ相応の配分かな。分かった」周人に続いて、美智が返事する。
「じゃあ、決まりだね! 戦争が終わったら報酬金の残金は払います」
三人は納得する。
「みっちー、仕事はどうするの?」智成が訊く。
「私、仕事も辞めるよ。だって、3千万、先にもらえるんでしょ? 何とかなるよ」
「はい、じゃあ頭金。受け取って」友杏は3千万円入った紙袋を美智に渡す。
「いただきます」美智は頭を下げて、すまなそうに受け取る。
「なんかさ、私、ワクワクしてきちゃって……。‟バック・トゥ・ザ・フューチャー”みたいじゃん!」
美智は興奮気味だ。
「あれは、面白いね」周人が言う。
「何、‟バック・トゥ・ザ・フューチャー”って?」友杏は、興味ありげに訊く。
「未来人の松田さんは知らないか。80年代のSF映画で三部作。傑作だよ。過去での行動によって、現在を変えるみたいな話」美智は説明する。
「なにそれ、面白そう。観てみたいな」
「そうだ!」美智は何かを思い出したように言う。
「そういえば、幸来紗、今、インドにボランティアに行ってる。小学校で教育支援だって。半年間」
「そうなの? じゃあ、計画の遂行はインドで?」
「時間もないし、そうなるわね。憲法改正まで時間を考慮すると、すぐに動いた方がいいわ」周人の質問に対し友杏は答える。
「なんか、それはそれで楽しそうじゃね?」
「うん、なんか楽しそうだよね。いい思い出になりそう」
美智と智成はすっかりその気だ。
「なんかさ、ミッション名決めない?」
「LSJは?‟Love Saves Japan”の略。愛の力がもとになって、日本を救おうとしてるわけだもんね」
智成に続いて美智が提案する。
「いいね!」友杏が言うと、「いいじゃん」と周人も同意する。
「じゃあ、決まり。酒頼んで乾杯しよう!」
「いいね、飲もう、飲もう」智成が提案すると、美智もすっかりその気になっている。
智成は部屋の電話を取り、ルームサービスで注文する。
ビールをグラスに注ぐと、四人は福岡の夜景をバックに、友杏の音頭で乾杯した。
「それでは、LSJの成功を願って、乾杯!」
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