誓いを君に

たがわリウ

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番外編

執事が笑う朝(1)

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肌寒さを感じて目を開ける。無意識にそばにあるはずの体を抱き寄せようとしたが、のばした腕は何にも当たらなかった。
ぽっかりと空いたベッドの空間に気づき、俺は体を起こす。愛しい存在を探すために、寝室から移動した。

「ユキ?」

テラスの戸が開いているらしく、部屋に穏やかな風が舞い込んでいる。ゆらゆらと揺れるカーテンの隙間に、探していた人物を見つけた。

「あ、オーウェン、どうしたの?」
「ユキこそ、どうしたんだ」
「俺はなんか眠れなくて……ディランさんに聞いたことを思い出してたんだ」
「ディランに?」

近寄ったユキの腰に腕をまわす。羽織ったワイシャツの下の体が少し冷えていた。気温が低いわけではないが、ずっと外気に当たっていたためだろう。
やっとユキに触れられた俺は、満足気に黒い瞳を見つめる。

「小さい頃のオーウェンは、眠れない時、こうして夜空を見てたって」
「あぁ、そうだったか……。昔のことで忘れていた」

誤魔化しでも何でもなく、俺はその記憶を本当に忘れていた。確か兄と同じになれない自分の不甲斐なさや情けなさで、寝付けなかった時だろう。
寂しげに夜空を見上げていた自分を思い出したが、今はどうだっていい。隣にユキがいてくれるから。

「眠れないなら何か温かいものでも口にするか? 誰かしら起きていると思うが」
「ううん、大丈夫」
「それなら暖かいほうに移動しないか。体が冷えている」
「あ、そっか。じゃあそろそろ閉めようかな」

動こうとしたユキよりも早く、開いていた戸を閉める。揺らいでいたカーテンがおとなしくなり、動きを止めた。
ありがとうと礼を口にするユキをソファに座らせると、寝室からシーツを持ってきて、ふたりでくるまった。上半身に何も纏っていない俺の肌に、シーツとワイシャツの感触がすべる。少し冷たいユキの体も心地良かった。

「それ、俺のシャツか?」
「あれ、ほんとだ。また間違えちゃった」

隣の体をぎゅうぎゅうと抱きしめながら、顔を寄せる。ユキの瞼に、頬に、唇に何度も優しく触れた。

「オーウェン、くすぐったい」
「でも、好きだろう」
「……うん、まぁ、そうだね……好き」

くすぐったいと息を吐いて笑うユキ。その反応さえ愛しくて、俺は腕の力を強めた。好きと言ったユキからはにかみがこぼれる。

「なんか、こういう穏やかな夜もいいね」
「そうだな。数時間前の激しさも良かったが」
「……まぁね」

俺の言葉に少し前のベッドの中を思い出したのか、ユキの耳が微かに染まる。いつまでも初々しい反応に、俺は気づかれないように頬を緩めた。ユキに気づかれたら、穏やかな顔が崩れ、眉間にシワが寄ってしまうかもしれない。

「たまにはこうして、一睡もせずに話しているのもいいかもしれないな」
「うん。でも、明日、会議でしょ?」
「会議なんて俺がいなくてもどうにでもなる」
「そうかなぁ」

俺の言葉に頷きはしないユキだったが、甘えるように鼻先を擦り合わせてくる。キスを強請るユキがたまらなくて、俺は望まれた通り、唇に触れ、柔らかな感触を堪能した。
喋り、触れ合う俺たちに構わず、夜が深くなっていく。
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