34 / 37
番外編
ただひとりの
しおりを挟む
「それでは、本日はここまでとしましょう」
「また明日、会議の時間を設けても良いでしょうか、王子」
「あぁ、明日の午後に」
「かしこまりました」
ディランの声で終了となった会議には、この城のなかでも特に責任の大きな立場にある人物たちが参加していた。
資料を手にすると席を立ち、会議室として使っている広い部屋から出るために扉へと歩く。
他の者たちは王子である自分が退室しないと動けないため、すぐにディランが開けた扉から外に出るつもりだった。
部屋の広さと同じように大きな扉を開けたディランは、何かに気づいたのか足を止める。
なんだ、と思っていると、前からどいたディランの奥に一刻も早く会いたいと考えていた人物がいた。
「ユキ。どうした」
「オーウェン、お疲れ様」
俺に微笑みを向けてくれるユキに、一日の疲れもどこかへと消える。
さっきまで重かった体も軽くなって、自分の体の素直さが可笑しかった。
「オーウェンにこれを見せたくて。今日やっと咲いたんだ。この色、オーウェンの髪色と似てて好きなんだ」
ユキは話しながら視線を下に落とす。
腕に抱えている鉢の中には、深みのある赤色のバラが咲いていた。
少し前にユキが訪れた町の学校で、子供たちからプレゼントされたと嬉しそうに話ていたのを覚えている。
それから毎日、城の庭師と相談しながら咲くのを待っていた。
「良かったな、ユキ」
「うん」
俺の言葉に目を細めるユキに、体の奥からあたたかな、幸せな感覚が込み上げてくる。
わざわざ俺に見せに会議室まで来たのも、自分が大切にしているものに訪れた変化を俺に知らせようとしてくれたのも、嬉しい感情を共有する相手に俺を選んでくれたことも、すべてが幸せで、愛しい。
「それじゃ部屋に戻ろうか」
俺たちが話し始めたところでディランはいなくなっているし、開いた扉の脇から中にいた全員もいつの間にか退室している。
部屋に戻ろうと体の向きを変えようとしたユキの手首を掴むと、誰もいない会議室に引き入れた。
「ん、オーウェンっ、はぁっ」
「っふ」
「あ、あっ」
甘い声を吐き出すユキはぎゅっと目を瞑る。
眉を寄せて快感に耐える姿に欲情した俺は、強く腰を打ち付けた。
「んんっ……こんなとこで、こんな、こと……っ」
「大丈夫だ、近くには誰もいない」
会議室の大きなテーブルの上に寝ているユキも、そんなユキに覆いかぶさり体を揺する俺も、服を乱れさせていた。
それだけでなく、俺はユキの中に入ったり出たりを繰り返している。
「みんな使う、とこ、なのに、あぁっ」
「すまない。どうしても今がいいと、思ってしまった……はぁっ」
閉じていた目を開いたユキが俺を見る。
その目は、そんなことを言うなんてずるい、と伝えていた。
ユキは俺を拒んでもいい。この城で俺を拒めるただひとりだ。
しかしそう言えばまたずるいと思われそうで、俺は緩む口元に繋いでいるユキの手を持ってきて、唇を寄せた。
「また明日、会議の時間を設けても良いでしょうか、王子」
「あぁ、明日の午後に」
「かしこまりました」
ディランの声で終了となった会議には、この城のなかでも特に責任の大きな立場にある人物たちが参加していた。
資料を手にすると席を立ち、会議室として使っている広い部屋から出るために扉へと歩く。
他の者たちは王子である自分が退室しないと動けないため、すぐにディランが開けた扉から外に出るつもりだった。
部屋の広さと同じように大きな扉を開けたディランは、何かに気づいたのか足を止める。
なんだ、と思っていると、前からどいたディランの奥に一刻も早く会いたいと考えていた人物がいた。
「ユキ。どうした」
「オーウェン、お疲れ様」
俺に微笑みを向けてくれるユキに、一日の疲れもどこかへと消える。
さっきまで重かった体も軽くなって、自分の体の素直さが可笑しかった。
「オーウェンにこれを見せたくて。今日やっと咲いたんだ。この色、オーウェンの髪色と似てて好きなんだ」
ユキは話しながら視線を下に落とす。
腕に抱えている鉢の中には、深みのある赤色のバラが咲いていた。
少し前にユキが訪れた町の学校で、子供たちからプレゼントされたと嬉しそうに話ていたのを覚えている。
それから毎日、城の庭師と相談しながら咲くのを待っていた。
「良かったな、ユキ」
「うん」
俺の言葉に目を細めるユキに、体の奥からあたたかな、幸せな感覚が込み上げてくる。
わざわざ俺に見せに会議室まで来たのも、自分が大切にしているものに訪れた変化を俺に知らせようとしてくれたのも、嬉しい感情を共有する相手に俺を選んでくれたことも、すべてが幸せで、愛しい。
「それじゃ部屋に戻ろうか」
俺たちが話し始めたところでディランはいなくなっているし、開いた扉の脇から中にいた全員もいつの間にか退室している。
部屋に戻ろうと体の向きを変えようとしたユキの手首を掴むと、誰もいない会議室に引き入れた。
「ん、オーウェンっ、はぁっ」
「っふ」
「あ、あっ」
甘い声を吐き出すユキはぎゅっと目を瞑る。
眉を寄せて快感に耐える姿に欲情した俺は、強く腰を打ち付けた。
「んんっ……こんなとこで、こんな、こと……っ」
「大丈夫だ、近くには誰もいない」
会議室の大きなテーブルの上に寝ているユキも、そんなユキに覆いかぶさり体を揺する俺も、服を乱れさせていた。
それだけでなく、俺はユキの中に入ったり出たりを繰り返している。
「みんな使う、とこ、なのに、あぁっ」
「すまない。どうしても今がいいと、思ってしまった……はぁっ」
閉じていた目を開いたユキが俺を見る。
その目は、そんなことを言うなんてずるい、と伝えていた。
ユキは俺を拒んでもいい。この城で俺を拒めるただひとりだ。
しかしそう言えばまたずるいと思われそうで、俺は緩む口元に繋いでいるユキの手を持ってきて、唇を寄せた。
29
お気に入りに追加
958
あなたにおすすめの小説
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
初めてを絶対に成功させたくて頑張ったら彼氏に何故かめっちゃ怒られたけど幸せって話
もものみ
BL
【関西弁のR-18の創作BLです】
R-18描写があります。
地雷の方はお気をつけて。
関西に住む大学生同士の、元ノンケで遊び人×童貞処女のゲイのカップルの初えっちのお話です。
見た目や馴れ初めを書いた人物紹介
(本編とはあまり関係ありませんが、自分の中のイメージを壊したくない方は読まないでください)
↓
↓
↓
↓
↓
西矢 朝陽(にしや あさひ)
大学3回生。身長174cm。髪は染めていて明るい茶髪。猫目っぽい大きな目が印象的な元気な大学生。
空とは1回生のときに大学で知り合ったが、初めてあったときから気が合い、大学でも一緒にいるしよく2人で遊びに行ったりもしているうちにいつのまにか空を好きになった。
もともとゲイでネコの自覚がある。ちょっとアホっぽいが明るい性格で、見た目もわりと良いので今までにも今までにも彼氏を作ろうと思えば作れた。大学に入学してからも、告白されたことは数回あるが、そのときにはもう空のことが好きだったので断った。
空とは2ヶ月前にサシ飲みをしていたときにうっかり告白してしまい、そこから付き合い始めた。このときの記憶はおぼろげにしか残っていないがめちゃくちゃ恥ずかしいことを口走ったことは自覚しているので深くは考えないようにしている。
高校時代に先輩に片想いしていたが、伝えずに終わったため今までに彼氏ができたことはない。そのため、童貞処女。
南雲 空(なぐも そら)
大学生3回生。身長185cm。髪は染めておらず黒髪で切れ長の目。
チャラい訳ではないがイケメンなので女子にしょっちゅう告白されるし付き合ったりもしたけれどすぐに「空って私のこと好きちゃうやろ?」とか言われて長続きはしない。来るもの拒まず去るもの追わずな感じだった。
朝陽のことは普通に友達だと思っていたが、周りからは彼女がいようと朝陽の方を優先しており「お前もう朝陽と付き合えよ」とよく呆れて言われていた。そんな矢先ベロベロに酔っ払った朝陽に「そらはもう、僕と付き合ったらええやん。ぜったい僕の方がそらの今までの彼女らよりそらのこと好きやもん…」と言われて付き合った。付き合ってからの朝陽はもうスキンシップひとつにも照れるしかと思えば甘えたりもしてくるしめちゃくちゃ可愛くて正直あの日酔っぱらってノリでOKした自分に大感謝してるし今は溺愛している。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる