誓いを君に

たがわリウ

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番外編

サイズの違うシャツ

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 無意識に寝返りをうった瞬間に感じた鈍い腰の痛みで意識が浮上する。
 ぼやけ眼のまま広いベッドで隣を見ると、そこにはもうオーウェンの姿はなかった。
 どうやらもう仕事を始めているような時間らしい。
 昔から朝は苦手だ。でも皆に甘えて昼過ぎまで寝ているようなことはしたくない。
 けれどどうしても、オーウェンと体を重ねた次の日はこうして寝坊してしまう。
 鋭いディランなんかには気づかれていそうで恥ずかしいのだけれど。
 体を起こし目覚まし時計を探すが見つからず、そういえばここは自分の住んでいた部屋ではないのだと思い出す。
 次にはスマホを探して枕元で動かしていた手に、寝ぼけていることを自覚する。
 ベッドから出ると下着しか身に付けていないことに気づき、近くのキャビネットに引っ掛かっていた白いワイシャツを手に取る。
 きっと洗濯し取り込んで自分がそこらへんにかけておいたものだろう。
 袖を通すとなんだかいつもとは違う違和感があったが、そのままボタンをはめながらクローゼットへと移動した。



 身支度を整えて広い部屋へと移動すると、もうオーウェンとディランは静かに仕事に取りかかっていた。

「おはよう、ごめん寝坊した」

 扉が開いた音に反応したふたりが顔を上げる。
 いつもならすぐに挨拶が返ってくるのだが、顔を上げたふたりは一瞬驚いたような雰囲気を醸した。
 ディランが口を開こうとしたが、まるでそれを制するようにオーウェンが咳払いをする。

「おはよう、ユキ。気にせずまだ休んでいてもかまわない」
「おはようございます、ユキ様。朝食はこちらでお召し上がりになりますか?」

 しかし俺が尋ねる前にふたりはいつも通りの様子に戻ったため、不思議には思ったものの追求することはしなかった。
 しかしあとで、この事を後悔することになる。



 オーウェンもディランも気にするなと言ってくれるが仕事をしている人と同じ部屋で食事をするのは気が引けるため、こうして俺が寝坊したりオーウェンと食事の時間が違うときは大抵自分の部屋に用意してもらうことにしていた。

「おはようございます、ユキ様」
「……おはよう」

 廊下を歩き部屋へと移動していると、すれ違う使用人やメイドがやけに笑顔で、まるで嬉しいことがあったかのような明るさで挨拶をしてくれる。
 いつもが暗いというわけではないが、今日は皆俺のことを見るとまず少し驚いて、すぐに嬉しそうに笑うのだからなんだか変な気分になる。
 今日なにかあったっけ? と考えを巡らせながら到着した部屋の扉を開けると、腹のすく良い匂いが鼻をかすめた。

「ユキ様、おはようございま、す」
「おはよう、セス」

 扉を開けた先にいたセスも、移動する間にすれ違った使用人たちと同じ反応をする。
まさか首にオーウェンにつけられた跡があるのだろうかと思ったが、今朝鏡を見たときに見えるところにはなかったことを思い出す。
 俺の勘違いなんだろうかと思いながら、セスが綺麗に並べてくれた料理を食べるためにソファに座った。
 透き通った野菜のスープにパン、鮮やかなサラダ、ふわふわのオムレツ、ベーコン、みずみずしいフルーツ。
 朝からこんなに贅沢で良いのだろうかと思うほどの料理はすべて美味しそうで、小さく鳴る腹が空腹を訴える。
 セスが紅茶をカップに注いでくれるのを眺めながら汚さないようにシャツの袖をまくる。
 そこでふと、違和感の正体に気づいた。

「あ、このシャツ、俺のじゃない」

 違和感があったのは普段自分が着ているものよりサイズが大きかったからだ。
 俺のものじゃないとしたら、考えられる持ち主はひとりだけ。

「うわぁ、やっちゃった」

 袖をめくるために前に出していた手で顔を覆う。
 オーウェンのシャツを着ていることに気づいていなかったのは俺だけなのだろう。
 部屋で挨拶をしたときにオーウェンもディランも気づいていて、すれ違う使用人たちも俺のシャツのサイズが大きいことに気づいてあの反応だったのだ。
 恥ずかしさで顔と首、耳にまで熱が集まってくる。
 だってオーウェンのシャツを着ているなんて、これでは昨日俺たちが体を重ねたことを言いふらしているようなものだ。

「シャツを切らしてしまったのかと思いましたが、違ったのですね……」
「うん、セスのせいじゃないよ。朝寝ぼけてたから」

 そうだ、キャビネットに引っ掛かっていたこのシャツは昨日ベッドに移動するあいだにオーウェンが脱いだものだ。
 それに気づくと共に、その時に俺の体を抱き締めながら繰り返されたキスと甘い言葉、熱っぽい視線を思い出しさらに顔の温度が上昇した。
 目の前に並ぶ朝食はどれも美味しそうなのに、その味を堪能することはできるのだろうか。



「ん、……っふ」
「ユキ、気持ち良いか?」

 耳元で囁かれる名前も、吐息もすべてが熱い。
 オーウェンの手に翻弄されているのは俺なのに、後ろから抱き締めるオーウェンの息も荒いものになっていて、それが腹の奥の熱を大きくさせた。

「シャツのこと、教えてくれても、よかった、のに……んっ」
「はじめは俺のことを喜ばそうと着ているのかと思った。違うと気づいたが、教えたら着替えてしまうだろう? それは勿体ないし、俺のシャツを着たユキとこういうことをしたかったからな」

 服を着たままのオーウェンに後ろから抱き締められる形でソファに座っている俺は、オーウェンとは違いシャツ一枚の格好だ。
 いつもよりサイズの大きいワイシャツは太ももの途中までを隠していて、その下でオーウェンの右手がうごめき俺の硬くなったものに刺激を繰り返す。

「あっ、あぁっ」
「ユキ、ユキ」

 オーウェンの手は優しく、緩やかな動きなため、少し物足りなく感じてしまう。
 そんな俺に気づいているのか、おもむろに左手の指がシャツの上から胸の先端を軽く引っ掻いた。

「んぅっ、ふっ」
「俺たちが体を重ねていることは城の者は気づいているから気にしなくていい」
「えっ、みんなしってるの……?」
「ディランがいうに、特にメイドは鋭いらしい」

 皆がもし本当にすでに知っているならそれはそれで恥ずかしい。
 まぁ婚約者なんだからこういう行為をしていることはわかっているかもしれないが、全員が周知しているとは思っていなかった。

「今はこっちに集中してくれ」
「んんっ」

 布一枚隔てて胸の先端を執拗に擦られ、引っ掛かれ、つままれると抑えようとしていた声が大きくなってしまう。
 胸への刺激と同時に下腹部に這う手の動きも繰り返されるため、オーウェンからもたらされる快感に意識が支配される。
 寝室ではなく仕事をする部屋のソファというのも、こんなところでこんな行為をしてしまっても良いものかという後ろめたさが快感へと繋がっていた。

「ユキ、腰を上げてくれ」

 オーウェンの手の動きが止まりベルトの金具が外されるかちゃかちゃとした音が鳴る。
 その音に期待を抱きながら浮かせた腰に手がそえられた。
 その手に導かれるまま腰を下ろしていくと、すでにオーウェンの指によって解されていた後ろに熱いものがあてがわれる。
 息を吐き出し徐々に腰を落としていった。

「ん、はいって、る……あぁっ」
「はぁっ」

 ゆっくりと入ってきた熱はすべてがおさまると、すぐに下から突き上げるような動きが始まる。

「あっ、あっ、おーうぇんっ」

 下からの動きに加えて硬くなった俺の熱への刺激も再開されたため、迫る大きな快感に思わず喉をのけ反らせた。

「んんっ、きもち、よすぎて、だめ、だ……っあ」
「ユキ、そのまま、出していいぞ」
「あぁっ、ん、でる、……っ、でるっ」

 オーウェンからもたらされる深すぎる快感でどろどろに溶かされた意識のなか、限界に上り詰めたのを感じとる。
 俺の熱に触れている手が激しく動いたことで体に積み重なった快感が弾け、耐えられないものを外に逃がすかのように体を震わせた。
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