26 / 38
番外編
黄色に沈む
しおりを挟む
ぱらり。紙のめくれる乾いた音を背中で聞きながら、文字を追うために細かく動く黄色い瞳をじっと見つめていた。
夕方に近づいた時刻、オーウェンの部屋には仕事を片付けるオーウェンと俺のふたりだけ。
それはいつものことなのだけど、今はいつもとは違う部分があった。
普段ならソファで静かに読書をしている俺が、オーウェンと向かい合う体勢でオーウェンの膝の上にいる。
以前ディランの頼みで同じようなことをしたからか、あれからこの体勢をせがまれるようになってしまった。
仕事の疲れを癒してくれと言われたら断ることなんてできず、恥ずかしいけどなんだかんだオーウェンの要求にいつも応えている。
(それにしても、本当に綺麗な目だなぁ)
日本に住んでいた頃は見たことのなかった黄色い瞳を、いつかじっくりと観察したいと思っていた。
手持ちぶさたな俺は、十分前くらいからオーウェンの黄色い瞳を見続けている。
日本にいた頃に外国人の瞳の色のことで聞いたように、オーウェンの瞳も体調や天気や光の加減で透き通るような色になったり深みのある色に変化するらしい。
飽きもせずにじっと見ていると、合いそうで合わなかった視線が重なった。
あ、目が合った、と思っているうちに顔が近づいて唇に柔らかな感触。
目を瞑ることもできなかった俺に、いままで以上に黄色が近づく。
「キスを待っていたのか?」
「違うよ、目を見てた」
「でもしたかっただろう?」
「……まぁ、そうだね」
したいかしたくないかで言ったらそりゃしたいに決まってる。
唇とともに離れた顔はまたもとの位置に戻り、顔を赤くしているのは俺だけでなんだか少し悔しくなる。
ただオーウェンもさっきと違って口元を緩めたから、俺だけが喜んでいるわけではないみたいだけど。
目を見ることはやめていったん体の向きを正面にしようとした俺は、閃いて反転させる体を止める。
もう一度オーウェンの瞳を見つめると顔を近づかせた。
唇を押し付けると同時に、視界を埋める黄色い目が驚いたように見開かれる。
「キスしたいのかと思ったけど違った?」
「……いや、当たりだ」
唇は離れても、すぐに触れそうな距離のままだった頭の後ろに手がまわり、それ以上引くことは許されなくなる。
どちらともなくまた唇を合わせると、今度は深く口付けられた。
何度も角度を変えられ侵入してきた舌がかき乱す。
お互いがお互いに夢中になっていると、オーウェンは俺を抱えたまま立ち上がった。
「ちょっと待って、まだ仕事中でしょ。ディランさんに怒られるよ」
「実は今日の分は既に終わらせてある。俺を見つめるユキが可愛くてやっているふりをしていた」
「……でもこれから夕食だし」
「そろそろいいか?」
ただちょっと仕返しがしたかっただけでベッドに連れていかれることは予想していなかった俺は言い訳を並べてみるものの、結局は断ることなんてしないから口を塞ぐようなキスを受けながら大人しくベッドに運ばれる。
だってやっぱり、したいかしたくないかで聞かれたらそりゃしたいに決まってるから。
夕方に近づいた時刻、オーウェンの部屋には仕事を片付けるオーウェンと俺のふたりだけ。
それはいつものことなのだけど、今はいつもとは違う部分があった。
普段ならソファで静かに読書をしている俺が、オーウェンと向かい合う体勢でオーウェンの膝の上にいる。
以前ディランの頼みで同じようなことをしたからか、あれからこの体勢をせがまれるようになってしまった。
仕事の疲れを癒してくれと言われたら断ることなんてできず、恥ずかしいけどなんだかんだオーウェンの要求にいつも応えている。
(それにしても、本当に綺麗な目だなぁ)
日本に住んでいた頃は見たことのなかった黄色い瞳を、いつかじっくりと観察したいと思っていた。
手持ちぶさたな俺は、十分前くらいからオーウェンの黄色い瞳を見続けている。
日本にいた頃に外国人の瞳の色のことで聞いたように、オーウェンの瞳も体調や天気や光の加減で透き通るような色になったり深みのある色に変化するらしい。
飽きもせずにじっと見ていると、合いそうで合わなかった視線が重なった。
あ、目が合った、と思っているうちに顔が近づいて唇に柔らかな感触。
目を瞑ることもできなかった俺に、いままで以上に黄色が近づく。
「キスを待っていたのか?」
「違うよ、目を見てた」
「でもしたかっただろう?」
「……まぁ、そうだね」
したいかしたくないかで言ったらそりゃしたいに決まってる。
唇とともに離れた顔はまたもとの位置に戻り、顔を赤くしているのは俺だけでなんだか少し悔しくなる。
ただオーウェンもさっきと違って口元を緩めたから、俺だけが喜んでいるわけではないみたいだけど。
目を見ることはやめていったん体の向きを正面にしようとした俺は、閃いて反転させる体を止める。
もう一度オーウェンの瞳を見つめると顔を近づかせた。
唇を押し付けると同時に、視界を埋める黄色い目が驚いたように見開かれる。
「キスしたいのかと思ったけど違った?」
「……いや、当たりだ」
唇は離れても、すぐに触れそうな距離のままだった頭の後ろに手がまわり、それ以上引くことは許されなくなる。
どちらともなくまた唇を合わせると、今度は深く口付けられた。
何度も角度を変えられ侵入してきた舌がかき乱す。
お互いがお互いに夢中になっていると、オーウェンは俺を抱えたまま立ち上がった。
「ちょっと待って、まだ仕事中でしょ。ディランさんに怒られるよ」
「実は今日の分は既に終わらせてある。俺を見つめるユキが可愛くてやっているふりをしていた」
「……でもこれから夕食だし」
「そろそろいいか?」
ただちょっと仕返しがしたかっただけでベッドに連れていかれることは予想していなかった俺は言い訳を並べてみるものの、結局は断ることなんてしないから口を塞ぐようなキスを受けながら大人しくベッドに運ばれる。
だってやっぱり、したいかしたくないかで聞かれたらそりゃしたいに決まってるから。
75
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる