いとしのチェリー

旭ガ丘ひつじ

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両想い

36 楽しんだもん勝ち

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急げー!!

と向こう岸から腕を大きく振って叫ぶ親父
自慢の俊足で一気に駆け抜けるもよし
息子のように盾で防ぎながら少しずつ進むもよし
娘のように盾を持つ人の陰に隠れて進むもよし

とにかく水面から顔を出した鯛砲という名の魚のネコツキが、こちらを狙って次々に撃ってくる大きな泡から逃れなければならない
なかなか思うように進めず、向こう岸の川辺へ到達するまでに少し時間が掛かった

大丈夫か?

真っ先に逃げといてよく言うよな

仕方ないだろう
お前らの足がそんなに遅いとは思わなかったんだ
振り向いて驚いたぞ

まあ、ゲームだしどうでもいいけど

そこへネズミ三匹がやって来て、それぞれに竹の釣竿を手渡した
それを使って鯛砲を釣り上げ、力いっぱいあの船に投げ返してやれと言う
これこそ、このボス戦に用意された遊びである
ネズミ達は鯛砲の気を引くために一本道へ向かった
すると早速、鯛砲達はチーチー騒がしいネズミ三匹に標的を変えて攻撃を再開した

よし!誰が一番多く釣るか勝負な!

よほど自信があるようで親父が息を巻いて勝負を申し込む
息子は首を傾げて
娘は乗り気で竿を振った

んふふー
お兄ちゃん下手だねー

ああん?
そこまで言うなら本気を見せてやるぜ

まずは「!」マークが表示されるのを待って、うまく針を引っ掛ける
次に上下に動くバーをよく見て、赤い印に重なったところでタイミングを合わせて竿を引く
結果、娘が特に上手かった
次に息子で、親父が最下位と残念な結果に終わった

今の勝負はなしだ
なしだからな

負け犬の遠吠え
親父は悔しそうに下唇を食む
息子は思わず頭を掻いた

はあ?何でだよ

これは釣りの勝負としては相応しくない
投げるのが難しかった

と幼女みたいに拗ねるのも仕方ないのかな
鯛砲を釣った後、うまく竿を振って宝船へ投げ返さなければならない
もちろんシステムによるサポートが備わっているが、それ以前に親父は投げ方に戸惑っていた
娘は賢く、釣り上げた直後に素早く竿を振り下ろして投げ返した
一方で息子は一度竿を後ろまで引いて、バッターを気取った横振りで投げ返した
対して親父は初め鯛を手に持とうと頑張って両手で抱えてみたり、ベンチプレスよろしく頭の上に持ち上げてみたり、子供達を盗み見てやっと理解したらしく下からスイングしたりと四苦八苦だった

機嫌直せよ
いま大事なのは釣りじゃないだろう
あいつを倒すことだ

にわかに宝船の船首に横向きに線が走ったかと思うとグワっと裂けた
それは大きな口で、川の水といっしょに鯛砲を残らず飲み込んでしまった
すると、立派な獅子のたてがみが生えて、半月の目が不気味に開いた
これが鯨賓艦ダンドリオンの真の姿
ライオンの要素を併せ持つクジラのネコツキだ
その大きな体をダイナミックに捩って、今にも上半身を陸に上げようとする
娘は焦って口早に親父を説得しにかかる

釣りは、お父ちゃんが目を覚ましてからにしよう
ね?

んー

前に、釣り堀に行きたいって話をしたじゃん
家族みんなで行こうよ

、、、そうだな

口がうまい娘の提案に乗って、やっと機嫌を直したようだ
犬みたいに全身を振るわせて心機一転やる気満点
親父は両手にケミカルライトを握り
息子は蒸気機関銃を抱え
妹はメジェドニアンを召喚して迎え討つ

親父、祭じゃないぞ

みたいなもんだろう
「楽しもうや」

Cランク、ケミカルライトSAVER
攻撃と支援、両面の特性を持つ光る棒
今は夜なので明かりがとっても幻想的
燦然と輝く宝船とは正反対の印象だ

これな
スイッチを押したら色が変わるんだ
ほら見てみ、ほらほら

どうでもいいわ!

何色がいい?

どうでもいいって!

そう言うなや
赤と緑と青と黄と白と、あと桃色もあるぞ

何でもいいよ

じゃあ、こっちをお前に決めてもらって
こっちは綾羽に決めてもらおうか

呑気に話してる場合じゃねえっての!

きゃ!こっち来た!

だあー!言わんこっちゃない!

親父と兄のてんてこ舞いを腹を抱えて面白おかしく楽しむ綾羽
その様子は動画に撮って、お母さんに送ってあげました

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