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両想い
35 愛犬
しおりを挟む妖狐の未来予知は本当に凄い
そこから導く予測は最もだ
僕たちが石板を利用して神話級ネコツキを蘇らせ
そのうえ猫福神を復活させ
なお僕と一体化すれば大変では済まないことになる
でも、彼女は大切なことを見落としている
それは何だ?
エーデルワイスの、左右に揺れるふさふさ尻尾を見つめながら、田中一家は城から離れて林道を歩いていた
もうすっかり日も暮れてきて空は青紫に染まっている
星が眠りから目覚めたように、微かに瞬いた
僕と君たちが決して敵ではないということ
そして、どんな災難が立ちはだかろうとも、君たちが決して負けることはないということだ
その通り
俺達は負けん
信頼しているよ
だからこそ、僕たちは全身全霊で悪に成り切れる
それしか手段はないのか?
うん、これが最善だね
どうしてもだ
でもそれは悲しいことじゃないよ
戦うこと、力を振るうこと、誰かを傷つけること
どれも君たちにとって苦しく辛いことだろう
悩ましく受け入れ難い嫌なことだろう
君は賢い
それでいいんだよ
その優しい気持ちが災難や困難に打ち勝つ強さになる
僕たちの心を救ってくれる
でも勘違いしてはいけない
君たちの暴力が世界を救うんじゃない
それは絶対に間違いだ
正しいのは例え話でもなく、本当に
愛情という思い遣りこそが巡り巡って世界を、そして君自身を助けるんだ
エーデルワイスが慈しむように話し終えたところで林道を抜けた
川を分断する、欄干や石畳の道路が整備された一本道が見える
そこで薫風が爽快に流れてきて雄大な風景が広がっていく
力強い山、優しい花、固い大地、柔らかな水、、、
お話が長くて難しかったね
それに無理をお願いすること
僕らは何度だって謝る
ごめんね
でも、今一度、どうか協力してほしいな
エーデルワイスは立ち止まって振り返る
彼のつぶらな瞳は一番星よりも輝いて見えた
「君が必要だ」
その背後、向こう岸に三匹のネズミが藪から棒に集結した
見覚えのある姿を見つけた綾羽が、あっと声を上げた
親父もそれで気が付いたらしい
拳を固く握る
これから蘇るネコツキは王都を襲撃してイタズラの限りを尽くす
そうなれば妖狐の予知が悪い方に決まって実現してしまう
そうならない為に、さあ!
君たちのワンダフルな想いをぶつけてくれ
アーユーレディ?
イエス
親父は迷いなく答えた
エーデルワイスはニコッと笑う
これでもう引き返せない
バトルが終わるまでログアウトは不可能だ
散歩の仁義
一つ、リードは心を繋ぐ糸
心臓の鼓動みたいな振動一つで思いは伝わる
二つ、ウォーターは生命の源
それは自身を助け、傷付いた自然を癒やしてくれる
三つ、エチケットは絆の証
礼儀を重んじて、清潔を心掛ければ、種は違えど互いを認め共存を望む
エーデルワイスが高らかに暗唱すると、ネズミ達が持つ石板それぞれが白く眩い光を放ち、宙に浮いて丸く一つに合体した
それは弧を描いて、宇宙人の円盤かあるいはフリスビーさながら、こちらへ向かって飛んでくる
目覚めよ!恵比寿さま!!
あわや、とは至らず、エーデルワイスが跳躍して口に咥え、しっかりと受け取ってみせた
その瞬間、輝きが増してエーデルワイスを包み、間もなく川へ飛び込んで沈んだ
輝きは消え失せて一切の音も飲み込まれた
おい、、、これ大丈夫か?
あまりの静けさに心配になった親父が息子を振り返ったその時
にわかに水面から黄金色の輝きが溢れて、ザバザバとやけに騒がしくなった
同時に親父もザワザワと騒がしくなった
子供達は今回も冷静でいられた
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ボスが浮上することを
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サイズは観光バス級
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福寿と書かれた帆が目立つ
一目瞭然、実におめでたい
わっ!祭だ!!
親父の心がふわっと翼を広げて雀躍する
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