補助魔法はお好きですか?〜研究成果を奪われ追放された天才が、ケモ耳少女とバフ無双

黄舞

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第三話

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 これまで長い間魔法の分類は二つしかないとされている。
 多種多様な属性を持つが根源的な理論を一とする【攻撃魔法】、使うことが出来るのは神に選ばれた者のみといわれる【回復魔法】。

 ハンスはそのどちらの才能を持たないどころか、全く扱うことが出来なかった。
 【攻撃魔法】は理論さえ学べば、才能による上限はあっても誰でも使うこと出来る。
 これまでの定説を、自分自身が悪い意味で覆したのだ。

 周りからの嘲笑は日に日に強くなっていった。
 どんなに努力しても、知識を身に付けても手に入らない【普通】。
 それでもハンスは挫けることなく、自分の【魔法が好き】という気持ちだけでがむしゃら足掻いた。

 ハンスが研究室で昔の物思いに耽っていたある日のこと。
 入口の扉が勢いよく開けられ、赤髪が特徴の闊達かったつそうな少年が、足を踏み入れるが先か大きな声を上げた。
 その声に驚き、ハンスは思わず、椅子ごと後ろに倒れそうになる。

「俺はアベル! ここに魔法の天才、ハンスがいると聞いてやって来た! どうか俺と冒険の旅に出て欲しい!」

 魔術師ばかりが集まるこの棟に似つかわしくない少年だと思っていたが、なるほど。それもそのはず。とカインは思った。
 彼、アベルは近接職として優秀すぎるほどの成果を上げた人物だった。

 冒険者育成施設が作られてから八年間。
 その短い歴史の中でも、随一と称される実力を示した有名人である。

 その類まれな実力から、施設の立案者であるこの国の王、ルイス王から勇者の称号を賜った。
 そんな人物がこんな研究馬鹿と冒険に出たいとは何事だ、とハンスが思うのは当然の感情だ。

 確かにハンスは魔法の理解、知識、発想力、そのどれをとっても並の魔術師の遥か上。
 ハンス自身もそう自負していたし、公にはなっていないがそれを示す実績もある。

 しかし人々がハンスを天才と呼ぶ際には、それはある種の侮蔑の意味が込められていた。
 いくら優れた知識を持っていても、一向に攻撃魔法の一つも唱えることの出来ない無能、「無能の天才」それがハンスの不名誉な呼び名だった。

「ハンスは俺だけど。一体どういうことだい? 話が全然読めないんだけれど」
「おお! 君がハンスか! 俺は勇者アベル。魔王を倒すために、こうして仲間を探している。俺は魔法の事を全く知らないが、この施設で魔法の天才といえばハンスのことだと皆口々に言っていてな! まさに俺の仲間にふさわしい。さぁ! 一緒に行こう!!」

 まるで自分の誘いを断るわけがない、といった態度でアベルは自信に満ちた笑顔をハンスに向けた。
 そんなアベルに対し、ハンスは幾分か冷めた表情を返す。
 アベルは武器を使った戦闘では右に並ぶ者がいないとされるが、魔法の知識はからっきし。
 他の魔術師共の皮肉を字面通り受け取った上の勘違いか、とハンスは思った。

「いや。俺は天才などではないよ。皆冗談を言っているんだ」
「そんなことは無いだろう。現にハンスはこれまでに無い、新しい魔法を開発したと聞いている。そんなことが出来る人間が天才じゃないわけがない!」
「うん?」

 ハンスは思わず疑問の声を漏らす。
 どうして彼はその事実を知っているのか。
 魔法の構築を研究していること自体は別段秘密にしている訳でもないが、どんな魔法なのかは口外していない。
 まして、魔術師大会を晴れ舞台と考えているハンスは、完成したことが外に漏れないよう細心の注意を払っていた。

 恐らく、これもどこかの魔術師が適当に言った言葉を拡大解釈しただけだろうと、ハンスは思いながらも、実戦で魔法が使えるという誘いに、うずく気持ちを隠せずにいた。
 ハンスが実戦で魔法を使うには、一般的な魔術師以上に、優秀な前衛が不可欠だった。
 そういう意味ではこの勇者アベルは、またとない適任者である。

「ハンス! 俺は君を仲間にすると決めたんだ。俺の意思は強い。いい返事が貰えるまで、ここを動かんぞ」
「ええ……それは弱ったな」

 勇者と称される男に居座られてしまっては色々と外聞も悪い。
 ハンスはしょうがないという体で、アベルの申し出を受ける事にした。
 受けるといっても適当に同行し、頃合いを見て施設に戻るつもりでいた。

 魔術師大会まではもう少し期間がある。
 その間に実戦でのデータも集めることが出来れば、という思惑だ。

 その選択が、これまでと今後の生き方を大きく変えることになる分岐点だとは知らずに、ハンスは遠い昔に夢見て、そしていつしかその夢を見ることも忘れた、冒険者としての一歩を踏み出すこととなった。
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