上 下
38 / 46
第2章

第37話【ロキのパーティ】

しおりを挟む
 レベルキャップ解放クエストもクリアしたことで、俺たちはお試しでダンジョン攻略に来てみた。
 今回のダンジョンもオープン、つまり複数のパーティが一斉に参加する。

 そう言えば、三人から聞いた話によるとアップデートでダンジョンボスを倒しても、他のパーティは退出しなくても済むようになったらしい。
 ただボス部屋からは出されて、リポップ、つまり再度出現するまではボス部屋には入れない仕組みだとか。

「まぁ、そっちの方がいちいち戻んなくて楽だよなぁ」
「ボスモンスターの奪い合いが多発したかららしいですわよ? そりゃあ誰だってせっかく到達したのに、待ってる間に前のパーティが倒して、はいお終い。では許せませんものね」

 確かに。そもそも前の設定がおかしかったんだよな。
 運営も意外と行き当たりばったりで作ってるんじゃねぇの?

「それにしてもやっぱりパーティって楽だなぁ。攻略の幅が広がるっていうか」
「へへーん。私のあまりの有能さに驚いたっしょ? 【薬師】って万能なんだから」

 冗談めいて言っているが、ミーシャのスキルは本当に役に立つ。
 特に【ばら撒く】で効果は減るものの全体に薬の効果を与えるのが優秀だ。

 他にも【薬の知識】は自分が使う際に薬に効果が二倍になるという凶悪スキルだ。
 自分自身が攻撃する手段はどうやらないらしいが、強化や弱体化の効果を文字通りばら撒けるというのは俺のダメージの底上げにも、他の二人のサポートにも役立っている。

「がっはっは! 金属を打つよりモンスターを打つ方がいい音がなるわい!」
「きゃー。あのうさぎのモンスター可愛いですわ! ああ! なぜ私は【テイマー】選ばなかったのでしょう!!」

 トンヌラが攻撃する時は、【研石】というスキルを使い攻撃力を一時的に増加させる。
 これもパーティメンバーに効果のある何故か範囲スキルで、範囲は狭いが近くにいるメンバーのダメージに20%の増加をもたらす。

 さらに【灼熱の金槌】とか【焼入れ】とか火属性の攻撃が多いのが特徴だ。
 若干【焼入れ】の意味が金属の鍛造工程じゃなくて、やんちゃな奴らが使う意味になってるが気にしたら負けだ。

 ヒミコはどちらかと言うと守りのスキルが多い。
 まぁ【防具職人】だから当たり前といえば当たり前か。

 ただ【馬鹿には見えない服】が俺のステータスと上手くマッチして強力なコンボになる。
 これを着せられたモンスターよりも知識が高いやつが攻撃をすると、なんと50%もダメージが増える。

 裸でねり歩いたどっかの王様のネタだろうが、それほどまでにダメージがでかかったんだな。
 まぁ、子供の方が賢いってのがとんちが効いてて面白い。

 そして極め付きが俺の新しいスキル【連帯保証】だ。
 使うと一分間の間、こんな効果を身に付ける。

 オーバーキル、つまりHPを超えたダメージを与えて倒すと、普通はそのダメージは無駄に終わる。
 しかし【連帯保証】の発動中は、HPを超えたダメージが近くにいるモンスターに流れ弾として付与される。

 さらになんと一回移動する度に10%のダメージ上昇付き。
 これがエグい。

 どうしてかって言うと、俺には元々【貫通】というパッシブスキルがある。
 そうすると、ほぼ一撃で辺りのモンスターを一掃できたりするわけだ。

 まぁ、そんなこんなで特に苦戦することなく、俺はボス部屋の前に辿り着いた。
 しかしちょうど俺の前に一つのパーティが扉が開くのを待っていた。

 俺はそのメンバーに思わず驚いて声を上げてしまった。
 見知った顔が居たからだ。

「ショーニン! みんなも! 奇遇だね!」
「ショーニンか。ふっ。一足遅かったな! 今ちょうどリポップが完了するくらいだ。お前らより先に私がダンジョン攻略を達成するのだ!」

 一人目はロキ、前にパーティーに誘ったが元々のパーティがあると断ったからそれはいい。
 問題はもう一人のやたらとキラキラした目をこちらに向ける少女、葵。

「どういうことだ? 葵がロキのパーティにいるなんて」
「ん? ああ! ちょうど一人リアルが忙しくて脱退する奴がいてね。メンバーを探してたんだけど。面白そうだから誘っちゃった。葵ちゃん。彼女めちゃくちゃ強いよ?」

 ロキに褒められて葵は満更でもないような顔をする。
 胸を反らすのはこいつのくせだろうか?

「俺のパーティはずっと男ばっかだからさ。まさに紅一点ってやつ? あ、パーティ特典でもあったよ」
「おい。ロキ。何してるんだ。行くぞ……」

「ああ。ごめんごめん、スルト。じゃあね。ショーニン。ここのリポップはリアルで30分だから。よろしく!」
「ふっ! お前はそこで私たち見事クリアするのを指をくわえて見てろ! あ、中で見ていてくれても構わないぞ?」

 スルトと呼ばれたプレイヤーは全身を真っ赤な装備で固めた大男だった。
 剣と呼ぶには大きすぎる巨大な大剣を背負った【剣闘士】だった。

 ロキたちがボスモンスターのいるボス部屋の扉を開ける。
 それを見届けたトンヌラが口を開く。

「どうするんだ? 中に入って様子を見るのか?」

 中でボスモンスターの行動パターンなどを見ることが出来るため、中に入るという行為自体はマナー違反とされていない。
 しかしショーニンは敵に塩を送られるような気がしてそれを拒否した。

「いや。待つ。ロキにダメだったらメッセージ送るようにこっちからメッセージ送っといたから。連絡くるまで待とう」

 扉の前にあぐらで座るショーニンに続くように、三人も近くに腰掛ける。
 結局ロキからは『達成した』という報告があり、ショーニンは30分待たされることとなった。

 ロキ自体が初攻略ではないものの、ライバル視されてるプレイヤーに先を越されたことがショーニンを熱くさせた。
 ロキたちが倒すのにかかった時間よりも早く倒してやると意気込んで、ショーニンはボス部屋の扉を開けた。

☆☆☆

いつもインフィニティ・オンラインをお楽しみいただきありがとうございます。

【連帯保証】について、分かりにくいと思うので補足説明です。

例えば、10000ダメージを与える攻撃をして、モンスターのHPが5100だったとします。
この場合モンスターAは5100ダメージを食らって死にます。
残りの4900ダメージ分が近くのモンスターBに流れます。
更に、10%のダメージ増加が付くので、5390のダメージがモンスターBに当たり、モンスターBも死にます。
さらに290ダメージ分はモンスターCに流れます。
その時にはさらに10%アップするので、319ダメージが当たります。

ということでよろしくお願いします!!
しおりを挟む

処理中です...