携帯彼氏の災難!?【マカシリーズ・6】

hosimure

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最後の災難

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―そして休日。

私はケータイと花束を持って、バスに乗っていた。

昨夜、セツカから連絡が入った。

どうやら私の願いは叶いそうだ。

ぼんやり流れる景色を見る。

私の住んでいる場所から電車とバスを乗り継いだ所が、目的地だった。

やがて目的地にバスは到着した。

降りてすぐ、海の香りがした。

…海が目の前だ。

少し歩くと、目的の場所―墓地に到着した。

するとケータイが鳴った。

『マカ…ここって』

「ああ、お前の肉体が眠っている所だ」

ハズミ自身のことは、ソウマに調べさせていた。

だから迷わず、ハズミの墓へ向かえる。

だがそこには先客がいた。

私はケータイを切り、バッグにしまった。

先客はどことなくシヅキに似た…こちらの方が真面目そうな青少年。

彼は私に気付くと、頭を下げてきた。

「あなたは羽澄の…」

「生前、友人だった者です」

それだけ言って、墓に花束を置いた。

そして手を合わせる。

「…失礼ですけど、羽澄の彼女ではなかったんですか?」

「違いますよ」

私は女子高校生風を装った。

「本当に友人だっただけです。ところであなたは?」

「あっああ、失礼しました」

彼は律儀にも頭を下げた。

「羽澄の兄…と言っても腹違いですけど、澄夜と言います。今は中学校の教師をしています」

「―そうですか。私はマカと言います」

私も頭を下げた。

「あのっ、羽澄のことに関して、何か知りませんか?」

澄夜は青い顔で、必死だった。

「一年前…羽澄はいきなり自殺をしました。睡眠薬を大量に摂取して…。理由は未だに分かっていないんです。どうしてあんなことを…」

そう言って顔を手で覆ってしまった。

「…羽澄さんは自殺だったんですね?」

「…ええ。しかし理由が全く分からないのです」

「一年経った今でも…。いえ、彼の生い立ちを考えれば、少しは思い当たるのですけど…」

…ハズミの生い立ち。

彼は愛人の子供だった。

社会的地位のある男性が、水商売の女性との間に作った子供がハズミ。

しかし女性は病気により、ハズミが5歳の時に死亡。

ハズミは父の家に引き取られたが、本妻との仲は悪く、また本妻の子供達とも仲が良くなったと言う。

―澄夜以外とは。

しかし彼は暗い家庭の事情を感じさせないほど明るく振る舞い、大学生活も充実して過ごしていた。

…はずだった。

だがハズミは自殺した。

ある日の朝、ベッドで冷たくなっているのを、澄夜が発見したらしい。

「ホントに、何でっ…!」

澄夜は言葉に詰まり、泣き出してしまった。

未だにハズミの死が、彼を縛り付けてしまう。

「…携帯電話に、遺言めいた文章があったんです」

しかし澄夜は思い出したように言った。

「『ずっと好きだった。愛してる』と…。義弟はきっと誰かに恋をしてたんです。でもムリだと悲観して…」

…それは、私が見た夢だ。

いや、現実にあったことだったんだろう。

「あなたは知りませんか? 羽澄が誰を愛していたか!」

彼の必死の眼が、怖かった。

けれど…言うつもりは無かった。
「ごめんなさい。羽澄さんとは遊んだりするだけの仲だったので、彼の悩みとかは聞いたことがありません」

そう言って首を横に振った。

「そう…でしたか。すみません、取り乱してしまって」

「いえ…。ところで澄夜さん、あなたは誰か交際なさっている方はいらっしゃるんですか?」

「わたしですか? …いえ、羽澄が死んでからは」

澄夜は少し遠い目をして、墓を見つめた。

「羽澄が死ぬ前には、婚約していました。けれど彼の存在がどのぐらい大きかったか自覚してしまって…。解消してしまいましたよ」

「…そうですか」

そこで会話を終わらせようと思った。

私は澄夜に挨拶をし、その場を離れた。

だがすぐには帰らなかった。

浜辺を歩く。

ケータイを取り出し、ハズミを見た。

「…満足か? お前が願ったことだろう?」

ケータイの中のハズミは、泣き崩れていた。

『ちがっ…! こんなこと、望んだワケじゃっ』

「しかし狙いはあったんだろう? 己が死を以て、義兄の心を捕らえたかったんだろう?」

『うっ…!』

…何となく、気付いていた。

私は海を見た。太陽がオレンジ色に輝いている。

けれど太陽は沈み、夜が訪れる。

…同じように、いつまでも明るいままではいられなかったんだ。

ハズミは。

「お前が愛していたのは、義兄の澄夜だったんだろう?」

『ふぅっ…』

「だが義兄はお前の気持ちに気付かず、女と婚約してしまった。お前に残された道は二つ。一つは良き義弟として死ぬまで振る舞い続けるか、もう一つは…」

自らの死を以て、澄夜の心を自分のモノにするか。

そしてハズミは後者を選んでしまった。

「…このサイトに自らを縛り付けたのは何故だ? お前、女はキライじゃないのか?」

『女は…苦手だったよ』

ハズミは低い声で言った。

『母さんが苦手だった。派手に着飾った女が苦手だった。…そして義母が苦手だったよ』

「キライ、ではなかったのか?」

『…キライにはなれなかった。苦手だったけど、優しかったから。義母も…本当はオレに優しくしたいと思っていたみたい。だけど、親父を愛していたから…』

自分から一時でも愛した男を奪った女の子供を、素直に愛することは難しいだろう。

『それに義母は…兄さんを産んだ人。キライにはなれなかったよ』

私は今まで何かを強く愛したことはない。

けれど…ハズミの痛いほどの心が今、伝わってくる。

『兄さんはオレが親父の家に引き取られた時、唯一優しくしてくれた人だった。他の兄弟は嫌がっていて、兄さんは長男だったから、責任感もあったと思う』

「…ああ」

『そのままずっと十五年も一緒にいて…。気付いていたら、好きになってた。でも兄さんはオレを義弟としか見ていない。そのことが残念でもあり、嬉しくもあったんだ』
「うん」

『だけど婚約したって聞いて…。今まで抑えていた感情が爆発した。気付いていたら睡眠薬をいっぱい飲んでた。朦朧とした意識の中で、ケータイに最後にオレの気持ちを残したんだ』

誰に宛てるでもない愛の遺言。

さぞかし周囲を悩ませただろう。

『でもケータイの存在だけが、死んだ後も感じていた。そして気付いたら…』

「【携帯彼氏】になっていたのか。…さぞかしゾッとしただろ?」

『そんなことはないよ。女の子と遊ぶの、昔っから好きだったし』

「何じゃそら」

『ふふっ』

笑顔を取り戻しつつあるハズミだが、そのラブゲージは40。 

「…だがハズミ。お前は彼女達には優しくなかったようだな」

ハズミの笑顔が強張った。

「どんなに自分を誤魔化そうと、お前の女性への嫌悪感は拭えなかったみたいだな。現にお前の持ち主となった彼女達は全員、ラブゲージゼロで死んだ。それはつまり、お前が彼女達に不満を抱いていた証拠だ」

ハズミの顔色が見る見る真っ青になっていく。

「現に私もお前を構うようになってから、ラブゲージには注意してたんだ。だがお前はどんなに機嫌を取っても、50以上は決して上がらなかった」

『まッマカがキライなワケじゃないよ!』

「分かってる。お前が嫌いなのは、女性という存在そのものだ」

『っ!』

「なのにお前は自分を誤魔化し、彼女達どころか私をも欺いた。…その罪、逃げられないことは分かるか?」
『…分かってるよ。オレはウソをつき過ぎた』

ハズミは観念したように、ため息をついた。

『オレを、消す?』

真っ直ぐに見てくるハズミの眼は、今までに見たことがないぐらい澄んでいた。

「…いや、それなんだがな」

『うん』

「お前に選択を与えようと思う」

『選択?』

「ああ。ルカに預けたマミヤにも、同じ選択をさせる。まあどっちを選ぶかは、お前達次第だが」

『…選択の内容は?』

「一つはこのまま消滅。私の力を使わずとも、お前らを成仏させる方法を、セツカが見つけた。痛みも苦しみもなく、解き放たれる」

『うん…』

「そしてもう一つは…」
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